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【CEDEC2006】ゲーム産業次世代への展望と、そこに求められる開発者の資質とは
9月5日
株式会社エンターブレイン 浜村弘一氏
 CEDEC2006、8月31日の基調講演は、株式会社エンターブレインの浜村弘一氏による、「ゲーム産業次世代への展望と、そこに求められる開発者の資質とは」という講演が開かれた。9:30開始という早い時間の講演だったにもかかわらず、会場は満員の状態であった。
講演の内容は、ゲーム業界の現状と今後の予想を元に、これから求められる人材についても触れていた。

■2006年度のゲーム業界

 浜村氏は2006年度のゲーム業界でもっとも注目すべき点は、「Nintendo DSの躍進である」と振り返った。実際に4月から8月までのゲームソフト販売数トップ10を見ると、PS2の「ワールドサッカー ウイニングイレブン10」以外はすべてDS用のタイトルである。ハードウェアが売れているという現実を考慮したとしても、この数字は異常。しかし、これはゲーム業界全体が潤っているという状態ではない。それはトップ10のソフトの内、6本は任天堂のソフトで、1本はポケモンのタイトルだからだ。要するに、約8割は任天堂関連のソフトである。これはゲームを作っているサードパーティーにとっては深刻な問題だった。「任天堂以外のソフトは売れない!?」というジンクスが業界内に流れていたと言う。だが、この状況を打ち破ったのがスクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーIII(FF3)」である。発売第一週で50万本を売り上げ、店頭の90%から品物が消えた。任天堂以外のゲームもきちんと売れることを実証した。

 しかも注目すべきは、このFF3を購入したユーザー層のデータ。FF3を購入したのは、いままでゲームを遊び続けていたコアなゲームファンだけでなく、これまでは「おいでよどうぶつの森」や「脳を鍛える大人のDSトレーニング」などのカジュアルゲームしか遊んでこなかったユーザーが買い求めていたようだ。カジュアルゲームを目的にDSを購入したユーザーたちが、しっかりとFF3をプレイしている。これはゲーム業界にとっては大きな収穫。DSによって膨れ上がったユーザーが、“普通のゲーム”を遊び始めたからだ。

 浜村氏は以下のように語った。
 「任天堂の岩田氏は以前、サードパーティーのゲームが売れないと、そのハードは“一般プラットフォーム”とは呼べないと言っていた。いままでのDSは決して一般プラットフォームではなかったが、FF3が売れたことによって、ようやく一般プラットフォーム化ができたと考えられる」

 そして、DSがすでに1000万台以上を売り上げている要因について、浜村氏は“パーソナル”がキーワードと分析。DSは本体の電源を初めて入れたとき、まず最初に自分の名前を入力する。これは、そのハードが個人の持ち物であることを示している。いままでのゲーム機は「一家に一台」が常識だったが、DSは「一人に一台」のハード。実際に家族みんなで通信プレイを楽しんでいる家庭も多いと言う。

■次世代ゲーム機の提示するものは?

 続いて「次世代ゲーム機」と呼ばれている据え置き型のゲーム機について分析を続けた。

● Wii

 まず初めに、浜村氏がもっとも注目しているハードである任天堂の「Wii」。年末に発売が予定されているが、ブームになることは間違いなしと予想している。価格は25000円程度と言われるが、20000円以下になるともウワサが流れているらしい。DSとの連携も容易に考えられるため、DSで増えた膨大な数のゲーム人口がWiiを買い求めることになると爆発的に売れるだろう。

 また、Wiiのユニークなところは、プロモーションビデオと説明。従来のゲームプロモーションビデオと言うと、ハデな3DCG映像が主だったが、Wiiはまったく異なる。映像に流れるのはWiiを楽しそうに遊ぶプレイヤーたち。プレイしていて“いかに楽しいか”を効果的に見せる斬新なビデオである。浜村氏はアメリカで開催されたE3会場でWiiを遊んだとき、「このハードはDSと同じように、ファンがファンを呼ぶ連鎖を起こすだろう」と感じたようだ。

 しかし、そんなWiiにもいくつかの問題点がある。もっとも大きいのは、コントローラーなどのデバイスの問題。Wiiの操作感覚はいままでのゲーム操作とまったく異なる点と、プレイし続けると肉体的に疲労が溜まるところを挙げた。

 だが、これはまさに任天堂が新しいゲーム機を作ろうとしていることの現われであると言う。Wiiの敵は他のゲーム機ではない。いままでゲームを遊んでこなかった人にもプレイしてもらえるハードを目指して開発した。

 そんなWiiというハードは、ゲームクリエイターにとって大きなチャンスだと浜村氏は分析した。それは、いままでの“ゲーム制作の文法”をすべて捨てて、新しいゲームを作れるからだと言う。しかもハードは間違いなくヒットする商品である。いままでゲームを作ってこなかった人でもミリオンセラーを狙える魅力的なハードである。

● PS3

 PS3について浜村氏が真っ先に語ったのは、ハイスペックな性能と高めに設定された価格について。グラフィック性能は間違いなく一流なのだが、約6万円の価格は高価すぎると指摘。過去の例から考えると、いずれは29800円程度に落ち着くのではないかと予想した。

 現行ハードであるPS2が爆発的に売れたのは、DVDプレイヤーとしての機能が備わっていたからというのは有名な話。PS3にも同じように、ブルーレイディスクが搭載されるが、だから売れるかと言うと……そうは考えられないと語った。となると、PS3がヒットする要因は、ネットインフラと家電との融合がキーポイントだと予想。

 PS3は“進化するハード”と言われているため、今後は家電のさまざまな機能が備わってくるだろうと言う。「ゲーム機としての真価が発揮されるのは2007年末ごろになるだろう」と浜村氏は予想していた。

● Xbox 360

 現在発売中のマイクロソフトのゲーム機、Xbox 360については、欧米と日本でのブームの違いについて問題視した。特に北米では、いまなお店頭で買えないゲームショップもあると言う。浜村氏が注目しているのは、Xbox 360とWindows Vistaの関係。絶対に失敗しないプラットフォームであるVistaと連携を取るとなると、広い意味ではXbox 360も失敗しないハードとなる。WindowsのユーザーをXbox 360に取り込むことができるとしたら、Xbox 360は成功するだろうと語った。

● PCオンラインゲーム

 講義の内容はゲーム機ではないが、パソコン用のオンラインゲーム(特にMMO系を指す)についても触れた。

 現在日本でもオンラインゲーム人口は着実に増え続けている。ゲーム開発側としてPCプラットフォームが魅力的なのは、ビジネスモデルが自由であるという点。月額課金だけでなく、アイテム課金によって収益を上げている企業も多い。今後注目しているのは、Yahoo!BBと現ボーダフォンのユーザー。Yahoo!BBが運営するゲームがどのような方向に進むのかを見守りたいと語った。

■最後にクリエイターの意識調査

 講義の最後に、現在第一線で活躍しているゲームクリエイターから取ったアンケート結果について紹介した。

 最近の傾向としては、ゲームファンだけでなく、ライトユーザーに向けたゲーム作りを心がけている人が多いようだ。その裏づけとしてか、「今後ゲームを作ってみたいハードは?」という質問に対しての返答では、圧倒的にWiiとDSが多く、次いでPS3となっていた。

 また、現在ゲーム制作の現場では、プログラマーとネット技術者だけでなく、プロデューサーも求められている。ゲーム制作の方程式がなくなりつつある現在、求められているのは“どのようなゲームを作るか?”というプロデュース能力であると言う。

 講義の最後は「ゲーム業界は全体的に右肩上がりです。ゲーム業界の方々は、これからもすばらしいゲームを作って僕らを楽しませてください」と締めくくった。
(佐藤隆博@RBB)
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