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アニメはデジタル化の波でどう変わりつつあるのか?ゲーム開発は? SIG-GT第8回
7月23日
IGDA日本は7月15日、SIG-GT(ゲームテクノロジー研究会)の第8回「ノンフォトリアリスティックにおける生産性の向上へのアプローチ」を開催した。ノンフォトリアリスティックとは、フォトリアリスティック(写真的な映像のリアルさ)でない、ということで、手書きアニメーションなどを指す。
ゲームでも、その映像表現はかならずしも3Dポリゴン+モーションキャプチャの「フォトリアリスティック」系ばかりではなく、アニメ的なテイストを持たせる(もしくはアニメそのもの)ことは多い。
今回は、アニメ産業からセルアニメーションの製作に関わりの深い講師が登壇、デジタル技術の活用について講演を行った。
尚美学園大学 今間俊博教授
尚美学園大学の今間俊博教授は、「モーションキャプチャーを用いた誇張表現とメンタルモーションの生成」という題で、アニメ的な動き(メンタルモーション)をいかに生成するかを語った。
まず今間氏は、日本のデジタルアニメーションの流れを紹介。氏のかかわった「子鹿物語」(1981年)、劇場作品の「レンズマン」(1984年)などの初期デジタルアニメーションの時代のエピソードを交えながら、「セルアニメは現場が激烈。慢性的な労働力不足と制作費用の低下に悩まされていて、このままでは良質なアニメ制作ができなくなる」との危惧から新しいセルアニメーション制作手法の開発を研究していると語る。これが3DCG+モーションキャプチャによる制作だ。
今間氏は、APPLESEED(2004年)やカップヌードルのTVCM(2006年)などを例に、モーションキャプチャ+3DCGによって制作されたセルタッチアニメでは、トゥーンシェーディングを採用するだけでなく、動きの質感もセルに似せる必要があると指摘。モーションキャプチャを使うと人間の動きになってしまいアニメーションにならない、そこで必要になるのが、人が見て納得できる動き「メンタルモーション」というわけだ。メンタルモーションの生成は、モーションキャプチャののち、モーションデータの変換によっておこなう。この変換は、加速度に注目し、加速度を強調したり、加速がかかる前にタメをいれたり、変化の前後を曲線的にするイージング補正といった処理が含まれる。
さらに2Dアニメーションの動きを3DCGで再現するための研究として、2Dアニメにボーンを入れるといった研究もおこなっているという。しかし、いくつかの古典的アニメーションを対象におこなった調査事例では、通常の3Dモデルではセルアニメの動きを再現できない(ボーンの伸縮や変形が必要になる)という。3DCGベースで作られたアニメーションは、普通にモーションキャプチャで動かすと、昔ながらのセルアニメ的な動きにはならないということだ。
今年のSIGGRAPHでは、ワシントン大学の研究者によるモーションの誇張に関する論文がフルペーパーで採用されたということで、注目されている研究分野であることは間違いないようだ。
埼玉大学 近藤邦雄助教授
続いて、埼玉大学の近藤邦雄助教授は、「コンピュータアニメーションのためのカトゥーンブラー」と題した講演をおこなった。近藤氏のカトゥーンブラーというのは、動きがある映像に、いくつかの指示をすると、マンガで言うスピード線のような表現が自動でつくというシステムのこと。マンガやアニメーションで素早い動きのシーンによく出てくる「残像」や「デフォルメ(変形)表現」を、簡単なパラメータ指定だけでつけようというものだ。写実的なモーションブラーに対する「非写実的なモーションブラー」である。
近藤氏は、このカトゥーンブラーについて、「線」「残像」「ゆがみ」の3タイプに分類、ゴールを「3Dアニメーションにカトゥーンブラーをつけることで、印象的な作品を作る」とした。2Dの場合は、オブジェクトの移動情報から後方面を決定してカトゥーンブラーを適用。3Dでも、プリプロセス(動きの方向の分析、後方面の検索、ポリゴン処理)ののち、「線」であればスピード線を後方に書く、「残像」であればアウトラインを後方にコピーする、「ゆがみ」であれば後方をデフォルメする、という処理によって実現される。
この技術について会場からは、「リアルタイムにできるか?」という質問が出され、近藤氏は「パラメーターを決めうちしておけば可能だとおもう」と述べた。
OLM Digital ウィリアム・V・バクスター3世氏
OLM DigitalのWilliam Valentine Baxter III氏(以下、バクスター氏)は、「dAb/IMPaSTo & Digital Doodle:より良いツールの作成について」という講演をおこない、研究開発中のデジタルペイントシステムについて紹介を行った。
dAbとIMPaSToは、どちらもバクスター氏の開発する絵の具のシミュレーションモデルのこと。バクスター氏の研究のゴールは、「リアリスティックな絵の具の表現」にあり、実際の油彩と同じようにインタラクティブに絵を作りたかったという。実際には、絵の具のシミュレーションだけでなく、3D入力システムや視覚・触覚フィードバックも実装されている。絵の具のシミュレーションについて、2Dタイプ(dAb)、流体計算をおこなう3Dモデルタイプ(Stokes’Paint)、絵の具の層の厚さを保持しつつ演算を簡略化した2.5Dモデルタイプ(IMPaSTo)を比較。ブラシも毛の一部に絵の具が付いている状態や、カンバス上の絵の具と混ざった色がブラシ側に付くといった状態が再現可能なものだ。
もう一つのDigital Doodle(Doodleは落書き的なニュアンスを持つ「簡単な線画」)は、手書きアニメのモブシーンや背景に欠かせない、「同種のものだけど違う形をしている絵」を手軽に量産するためのシステムだ。いくつかのサンプルを与えると、簡単な操作でその中間的な絵を生成、これをスタンプのように貼り付けていけばいいというもの。
その後のパネルディスカッションでは、3人の講師に加え、バンダイナムコゲームスの今給黎隆氏の4人をパネリストとしてアニメにおけるデジタル化と
今間氏は、デジタル化について「早く安くできる、というのは表向き。クリエイタにとっては(時間を有効に使えるようになったことからくる)品質のアップが重要」と指摘。「計算でやったのとアニメーターが手書きしたのの質感を近づけることが大事」とも述べた。また、近藤氏は「クリエイターにとって使いやすく、やりたいことが実現できることが重要。研究室内のアルゴリズムではなく、世の中で役に立つようにしたい。要求と使い心地についてクリエイターと意見交換していきたい」と産学でのツール・情報交換の場の必要性を語った。
バクスター氏は、「OLMで話題になるのはコントローラビリティ。物理シミュレーションは実写でも使われているが、アーティストにとってはコントロールしにくい。監督が『こんな水の流れが欲しいんだ』といっても出来ないこともある」と広く使われている方法論にも限界がある点を指摘、それに関連して今給黎氏は、「現場に持ち込むときは、デザイナ、ディレクタのイメージをうまく出せるように組み込む必要がある。3Dソフトのプラグインとして組み込むであるとか、どこに組み込むかも重要」と、現場で誰が活用するかといった視点での要望を語った。
ツールは納期短縮や予算削減ではなくクオリティアップのための余力を作り出すもの、という認識はゲームでもアニメでも同様ということのようだ。ただ、アニメでは制作フローの中で大幅な手戻りがない(できない)ためパイプライン的分業が可能で、デジタル化や国際分業が確立可能となった面はあろう。日本のゲーム産業が次世代機向けタイトル開発での量的拡大をどう扱っているのか、それは継続可能なのか。需要の爆発的拡大をこなしているアニメ産業の事例は研究に値するのではないだろうか。
(伊藤雅俊@RBB)
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