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オンラインゲームはWEB2.0をめざすのか? SIG-OG第9回・山口浩氏講演
7月23日
駒沢大学助教授 山口浩氏
 ブロードバンド推進協議会(BBA)は7月21日、オンラインゲーム専門部会(SIG-OG)の第9回研究会を開催した。今回のテーマは「みえてきたオンラインゲームの未来像」。いわゆる「WEB2.0」時代において、オンラインゲームがどのように変化していくのか、その未来像について学術的な見地から講演が行われた。講演者は駒沢大学助教授の山口浩氏と、韓国・中央大学助教授で、コンテンツ経営絵研究所・所長の魏晶玄氏。

 会場では、まず山口浩氏が「ウェブサービスとしてのオンラインゲーム」と題した講演を行い、オンラインゲームをウェブサービスの見地から捉えつつ、WEB2.0時代における可能性や未来像について論じた。その後、魏氏が韓国ゲーム業界の最新ニュースを交えつつ、WEB2.0的なサービスやゲームの動きを紹介。さらに日本のオンラインゲームの方向性について警鐘を鳴らした。

 WEB2.0という概念は、新しいウェブのあり方に関する総称で、正確な定義については今も議論が続いている。WEB2.0の提唱者の一人、Tim O’reilly氏の論文「What is Web 2.0」では、WEB2.0の特徴として「ユーザによる情報の自由な整理」「リッチなユーザ体験 」「貢献者としてのユーザ」「ロングテール」「ユーザ参加」「根本的な信頼」「分散性」という7つのキーワードが紹介されている。しかし、これらは現象の抽出であって定義ではない。

 WEB2.0の正確な定義はさておき、ゲーム業界がこの状況に注目せざるを得ないのは、現在のオンラインゲームビジネスがユーザの囲い込み合戦になっており、このままのサービス形態では市場の拡大が頭打ちになる、という不安感がある。その一方で、WEB2.0的な特徴はオンラインゲームにも共通して見られる要素があり、WEB2.0的な特性を取り入れることで、オンラインゲームの質的変化が進む、という期待感もある(不特定多数のユーザが自発的に参加し、相互信頼性を基盤に社会的活動を行うことで、さまざまなコンテンツが創造され、参加者間で共有されるというMMORPGの特性は、それだけで「WEB2.0」的だ)。その意味で今回のセッションは興味深いものとなった。

 山口氏は最初に、オンラインゲームはウェブサービスである、という視点を提示した上で、WEB2.0の特徴である「チープ革命」「総表現社会」「マス・コラボレーション」という現象が、オンラインゲームにどのような影響を与えるについて論述した。

 「チープ革命」とは「Forbes」のコラムニスト、Rich Karlgaard氏が提唱した概念で、デジタル技術が急速に進化し、価格が破壊的に低下した結果、理論的には可能でも、現実的には不可能だったことや、これまで考えられなかったことが実現可能になったことを指している。具体的には何万冊もの在庫を持つネット書店が誕生したことで、ロングテールのような現象がおきたり、情報とお金をひもづけできるようになった結果、アフィリエイトによる新たな広告モデルが誕生した、などがあげられる。コンテンツビジネスにおいても、コンテンツ制作やメディア構築のコストが劇的に低下した結果、アマチュアの作ったショートムービーがYouTubeなどを通して世界中に配信される、といった現象が起きている。企業や商業クリエイタにとっては受難の時代である。

 この対応策として山口氏は「企業を低コスト体質にする」「高い金額を支払うユーザーを狙う」「収入源を変える」という3つのアイディアを提示した。具体的には「開発部門を切り離し、自社はポータル運営に徹する」「アイテム課金や段階的課金を導入し、一部の高い料金を取る」「ゲーム内広告などの間接収入を狙う」などである。これらの具体的な事例として、ガンホーが進めているポータルビジネス「Gung-Ho Games」を紹介した。同サイトは「オンライン遊園地」を標榜するゲームポータルで、各種ゲームサービスのほか、アバタ、コミュニティ、映像・音楽などの情報発信機能をもつ。またゲーム内広告については、2004年に開催された「ポケモンだいすきクラブ夏休み大作戦!2004」の事例を紹介。アフィリエイトやポイントなどを活用した新たな広告モデルによるビジネスモデルの可能性について示唆した。

 次に「総表現社会」について、山口氏はブログやSNSなどで多くのユーザが自己表現を行っている状況を示し、こうした取り組みを企業が商品開発やサービスに取り込むことで、企業・顧客の双方にメリットがあると指摘。ゲームの自己表現の例として、アバタの外見やアイテムのデザイン、MODの制作、コミュニティ交流などを上げつつ、具体例として「Second Life」を紹介した。その上で日本製ゲームは完成度の高さが特徴的で、ユーザーが製品に求める期待も高いが、こうした固定概念や現状をどの程度変えられるか。またユーザ間のトラブルなど、表現を巡る権利調整をどのように企業側が管理できるかがポイントだと述べた。

 また「マス・コラボレーション」の側面では、多数の人々の自発的な参加がオンラインゲームの魅力の源泉になっており、アイテム課金ベースのゲームでは、実際には大多数のユーザが無料で遊んでいるが、ネットワーク外部性の観点から見れば、この状況は理にかなっていること。その上でオンラインゲームをプラットフォームとみなすことで、病気治療や社会訓練の機会、雇用機会の提供など、さまざまな活用ができる可能性を示唆した。

 最後に山口氏は、オンラインゲームを「ゲーム」に限定せず、周囲の類似した商品やサービスとの比較や類推から考察する視点も重要であること。さらに、こうした視点の有無にかかわらず、オンラインゲームの及ぼす社会的影響力は、すでに「ゲーム」の範疇を越えていることを指摘して、講演を締めくくった。


(小野憲史@RBB)
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