★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
[コンテンツシンポ] モーション、ストーリー、教育効果…… オンラインゲーム制作支援の研究成果とは
6月8日
2004年に制定された「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」にもとづき、デジタルコンテンツの分野で国の予算を用いた研究活動が行われている。文部科学省の主導で行われている戦略的創造研究推進事業「CREST」もその一つで、テレビゲームの分野においても「オンラインゲームの制作支援と評価」と題したさまざまな研究が進行中だ。6月6日から8日まで東京・科学技術館で開催されている、デジタルコンテンツシンポジウムでも、7日に企画セッション2と題して、この研究プロジェクトの概要と中間報告が行われた。
まず冒頭で、研究プロジェクトの代表を務める松原仁氏(はこだて未来大)より、問題意識と研究目的が述べられた。松原氏はテレビゲームは日本が世界に誇るメディア芸術で、中でもオンラインゲームは成長力の高い分野として期待されていること。補足として次世代コンソールはすべてオンライン機能を持つこと。その一方で制作費の高騰や、オンラインゲームに対する社会的な批判が高まっており、楽観視できない状況にあること。その上で本研究では、MMORPGを念頭に「オンラインゲームの有用な面とは何かを探すこと。またそのためのソフトウェアやデバイスを開発すること」「効率的な制作方法論を開発すること」の2点が目標であると説明された。
次に松原氏は、本プロジェクトのサブテーマとして「オンラインゲームキャラクターのためのモーションクリエイション」「オンラインゲームのためのストーリー表現法」「オンラインゲームのための実世界指向インタフェースの検討」「オンラインゲームの社会的効果の予備的実験」の4つの研究テーマを紹介した。これらは複数の大学や研究室、企業による横断プロジェクトとなっており、2005年10月から5年間の予定で研究が進められている。
その後、各サブテーマの概要と進行状況が代表者から報告された。
先陣を切ったのは「オンラインゲームキャラクターのためのモーションクリエイション」について報告した、筑波大学の中野敦氏。現在多くのゲームでは、キャラクターのモーションがあらかじめ開発者側が設定した内容に留まっており、状況に応じて自然な仕草をとるのが難しい。本研究ではキャラクターメイキング時において、姿勢としぐさのコマンドを選択すると、一連のモーションが自動生成されてデータベース化されたり、チャットの文章内容の解析や、キャラクターの感情パラメータの増減などによって、生成したモーションを自動的に表示するなどを目的としている。また物理シミュレーションの結果によるモーションの自動生成なども視野に入れられている。
ただし、現在はまだ2体のキャラクターがPC上で挨拶をかわす程度。実際に体験した学生からは、モーションを生成するのは楽しいが、実際にゲーム中で見ると違和感があるという感想が寄せられたという。これについて中野氏は、生成モーションと通常モーションとの対応がまだ不完全であると述べた。また今後の課題として、オンライン空間上での実装や、ゲームキャラクターの感情に応じたキャラクターの立ち振る舞い、チャット内容に応じたゼスチャーなどがあげられた。チャットに応じてモーションが自動表現される仕組みは世界的にもユニークで、日本的なゲーム表現として期待される。
姿勢→しぐさ→プレビューという、一連のモーション生成の流れ/2体のキャラクターによる挨拶のデモ
同じく筑波大学の森博志氏は、「オンラインゲームのためのストーリー表現法」に関する中間報告を行った。この研究ではプレイヤーに対していかに効率よくイベントを提示してストーリーの連続性を楽しませるか。また、あるプレイヤーがイベントに対して取った行動が、他のプレイヤーのイベントに影響を与え、さらにまた別のプレイヤーに影響を及ぼすといったように、プレイヤー間の相互行動による立体的なストーリー展開をいかに実現するか、といった事柄を目的としている。そのためオンラインゲームといってもMMORPGではなく、比較的少人数のプレイヤーによるストーリー主導的なゲームという、「現在存在しない」ゲームの実現に向けた、制作支援技術の開発がめざされている。
現状では「探偵プレイヤー(=主人公)が事件の発生を知る」→「知人キャラクターが犯罪の被害に巻き込まれる」という2つのイベントが、ゲーム中の操作によって体験できる段階。ストーリーを構成するイベント群も、スクリプトを使ってあらかじめ記述しておく必要があり、結構難解だ。オンラインにも対応していない。今後の目標としては、複数人の参加やオンライン上での実験、個々のイベント制作の支援や、イベントをいかに的確に並べてプレイヤーにストーリーを体験させるか、などの項目が示された。これなどもRPGをはじめとした「ストーリーゲーム」大国、日本ならではの発想だろう。
ゲーム中の進行における一連のサブストーリー提示の流れ/新しいゲーム像を見据えている点で興味深い要素技術となっている
名城大学の柳田康幸志氏は視点を変えて、「オンラインゲームのための実世界インターフェースの研究」と題したテーマの報告を行った。これは今までの2つが既存のオンラインゲームの制作支援的な内容だったのに対して、インターフェースやデバイスを開発して、オンラインゲーム自体の概念を変えようというもの。これには「携帯型デバイスや嗅覚誘導などによる、実空間自体のゲームのフィールド化」「実社会でのプレイヤーの遭遇検知や、公共空間で操作する上で違和感のない操作手法の開発」「コントローラーのデザイン着目によるユーザーの心理的障壁の低減」という、さらに3つのサブテーマが設定されている。目的としては、引きこもりなどオンラインゲームに対する社会的イメージの改善や、女性ユーザー増加によるプレイヤーの男女比是正などがあげられている。
ただし、本テーマにつてはどれも開発段階に留まっており、発表もビジョンの提示と過去の関連研究事例の紹介のみ。さらにデバイス面からの研究は、他のテーマと違って実際に試作品を作る必要があり、大規模な実験を行いにくい面がある。とはいえ、モバイルやユビキタス技術による「現実のオンラインゲーム化」は、これまでにも多くのゲーム開発者が異口同音に語ってきたアイディアであり、実現した時の社会的インパクトも大きい(というより筆者が遊んでみたい)。デバイス技術のような、モニターの「こちら側」の研究開発は日本のお家芸でもある。今後の研究成果を期待したいところだ。
3つのサブテーマの関連性/ぬいぐるみコントローラーによる情報伝達の事例
最後に、はこだて未来大の元住充利氏は、オンラインゲームの教育的効果を計測する「オンラインゲームの社会的効果の予備的実験」と題した研究の報告を行った。これは同校の学生12人(男性10人、女性2人)を対象に、コーエーのMMORPG「信長の野望Online」を1ヶ月間(50時間〜100時間程度)プレイしてもらい、実験の前後で「インターネット、オンラインゲーム、戦国時代の知識」「コミュニケーション能力」「タイピング能力」の3項目が、どの程度変化したかを調査するというもの。実験結果によると、いずれも一定の効果が見られ、特にインターネット歴が短い人ほど高い上昇率が得られた。
ただし、MMORPGやインターネットリテラシーの高い学生ほど効果が乏しかったのは、ある意味で当たり前の話。実験に参加しなかった学生とのデータ比較がなかったのも残念だった。元住氏も今回の調査は予備的実験にすぎず、本実験では実験の社会的効果を見据えて、信頼性の高い実験を行いたいとしている。MMORPGの教育的効果が実証されれば、オンラインゲーム全体のイメージアップにもつながる。もっとも「結果ありき」の実験では意味がない。「脳トレ」などのヒットで、シリアスゲームに対する関心が高まってきているからこそ、冷静に経過を見守っていきたい。
3項目の実験結果。それぞれ一定の上昇傾向が見られた
ちなみに本研究が終了する2010年は、順調に進めば「次次世代コンソール」発売前夜となる。とはいえ次次世代コンソールが現状の発展形となるのか、そもそもテレビゲーム自体がどう変化するのか、それは誰にもわからない(もしかしたら、日本のゲーム産業自体が壊滅しているかもしれない……冗談ではなく)。このあたりがゲーム業界内で中長期的な研究開発が難しかった一因でもある。ただし、形はどうあれゲーム技術を基盤とした「オンラインコンテンツ(またはサービス)」が今後も期待されることは事実だろう。業界単独では難しかった、中期的視野の研究が進む一方で、ゲーム業界はどうか。5年後の成果を生かすためにも、今できることを真摯に進める姿勢が求められている。
(小野憲史@RBB)
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