まず演壇に立ったIGDAの新清士氏は、「GDC2006の概要とIGDAアップデート」と題して、GDCとIGDAについて報告を行った。今回のGDCについては、「あえていうと混沌」と総括。セッション数の増大(05年の380から、06年の420超へ)により、関連するトピックのセッションが同じ時間に重複した部分があったことや、基調講演の時間に他の重要セッションが配置されてしまったこと(ナムコLEDZONE谷波氏の講演がウィル・ライトの基調講演の裏に配置されていた)など、規模が拡大したことによる課題を指摘。一方で、欧米開発者のEast Meets West Reception(GDCによる日本開発者と欧米開発者を招いたパーティ)への関心の高さや、任天堂 岩田氏の基調講演の盛り上がりに見られた日本のゲームのブランド価値の高さも再認識できたという。
また、新氏は今年のGDCの焦点として「ダイレクトディストリビューション(ネットを利用したゲームの直接販売)」と「プリプロダクションの重要性」を指摘。ダイレクトディストリビューションについては、ValveのSteamやマイクロソフトのXbox Live Arcade、任天堂のレボリューション(仮)、PC用カジュアルゲームの台頭など、ワールドワイドで動きが出始めているという。また、プリプロダクションの重要性については、4人の学生が週に1本ゲームを作る「実験的ゲームプレイプロジェクト」のセッションや、Sporeやネヴァーウィンター・ナイツの講演から使い勝手のよいツール整備の必要性が強調されたこと、Half-Life 2ではテストプレイ重視型の開発スタイルを採用することでプリプロダクション的な作業を繰り返しながら作り込みが進められた、といった講演を紹介した。
ゲーム開発者コミュニティの国際NPOであるIGDAについては、GDC期間中にメンバーが1万人を突破、北米開発者が大半を占めるものの、地域別では日本は4位のメンバー数になっていることが報告された。さらに、学会に関する動きとして、ゲームの国際学会であるDigital Game Research Association(DiGRA)の国際学会、DiGRA2007を日本に招致することが発表され、招致の受け皿組織として、東大ゲーム研究会が改組するデジタルゲーム学会が設立されることが明らかにされた。
駒沢大学の山口浩氏は、氏のAOGC2006での講演テーマでもある「ゲーム内経済学」に関するセッションを中心にレポートした。ラウンドテーブルの「Advanced MMO Economics」は、内容的には経済学の基礎(需要・供給曲線といった内容)だったものの、出席者はビジネスモデルと関連づけて理解しようという姿勢だったと述べ、経済のデザインとビジネスモデルについての意識が目立ったようだ。また、アイテム課金に関するセッションでは、こうしたビジネスモデルが北米ではまだ珍しいこと、アメリカ人にとっては売買アイテムとしてイメージされるのが「強くなるアイテム」のみであること、RMTについても完全否定派は少数で、「ビジネスになるなら取り入れよう」という意見が多いこと、アイテム課金でARPUが向上した話に強い興味が示されたことなどが紹介された。また、Xbox Live Market Placeに関連して、ユーザー同士の取引には当面使わないという方針について、権利侵害に配慮したのではないかとの見方を示しながら、「この問題はゲームだけのものではない。メールの内容に関するISPの責任とどこが違うのか?」と述べ、オンライン対応になったゲームは、提供されているのは「コンテンツ」か「メディア」か考えていく必要があると述べた。
セガの林洋人氏は「開発の金言」と題した講演をおこない、Project Gotham Racing 3(マイクロソフト)やNeed for Speed: Most Wanted(エレクトロニック・アーツ)、God of War(SCEA)などのセッションを紹介した。グラフィックスを中心にプラットフォームを社内開発環境整備している林氏は、GDCではグラフィックスと開発環境関連セッションを中心に受講。
PGR3の開発を振り返るセッション「Building Projcect Gotham Racing 3」については、「ハイデフ」の開発負荷の大きさの見通しを誤ったことについての率直な反省など、次世代機ならではの部分もありながら、「多すぎる『最後のお願い』(開発終盤に修正がいつまでも続く)」など、次世代機だからではない問題もあったという講演内容を紹介。林氏はPGR3チームが次世代機らしいタイトルを1本すでに完成させたことを「正直、うらやましい。やった人でないと持てない経験値」と感想を述べた。
また、同じくXbox360の同発カーレースタイトルの開発を振り返る「Next Generation Challenges for Need for Speed Most Wanted on the XBox 360」については、講演では、やはりハイデフになったことで作業量が非常に多く、特に全ての物体に法線マップを作るのが大変だったことや、現世代機と次世代機の同時開発でもデータは別に作るべきだという経験談、アクションシーンなどの編集をゲームエンジン内でできるようにしたことでデザイナーに3Dツール以上の体験を提供できた、といった事例が語られたという。
「God of War: How the Left and Right Brain Learned to Love One Another」については、ツールの開発がカギとなっていたことや、チームの構成の仕方について紹介。シニアプログラマ7人のほかに、テクニカルアーティスト(ツール開発を補助したり、トラブルシューティングをおこなうアーティスト[日本で言うデザイナー])を4人配置することで、高性能なゲームエンジンを実現。林氏自身もGod of Warをプレイし、「60FPSを実現。ロード待ちもないし、チームワークを重視してシンプルなワークフローで丁寧な作り込みをしている。非常に驚いたし、焦りを感じた」とコメント、少数の優秀な人がコアを握ることの重要性を指摘、テクニカルアーティストは次世代でますます重要になるだろうと述べた。