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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
[GDC 06] 世界を代表するゲーム開発者が語る「ゲームデザインのこれから」― ウィル・ライト基調講演
3月26日
講演を行うウィル・ライト氏
ウィル・ライト氏は、宮本茂氏や小島秀夫氏とならんで世界中のゲームファンに知られるカリスマゲームデザイナーだ。日本でもなじみの深いものとしてはシムシリーズがあり、スーパーファミコンでも発売された『シムシティ』、拡張版も含めた売り上げが全世界で1000万本以上を誇る『シムピープル』などが有名だ。GDCにおいては、常に独自の視点でゲームデザインについて語ることで知られている。今年、ライト氏は「What’s Next」と題した基調講演をおこなったわけだが、例年どおり大変盛り上がったセッションとなった。
ライト氏によれば、ゲーム開発では、コンセプトメイキングから、リサーチ、プリプロダクション、開発、検証、マーケティングといった一連のプロセスがあるが、GDCのようなゲーム開発に関するカンファレンスでは、コンセプトメイキングやリサーチといった部分については意外に語られてこなかった点を指摘、ゲームデザイナーという立場から「Spore」の開発事例を中心に、どのように斬新なコンテンツを開発していくかについて語った。
●膨大なリサーチの中から生まれる新たなゲームのシード
ライト氏はコンセプトメイキングとリサーチの重要性を語る上で、ゲーム開発者は皆が「Otaku」になるべきだと説き、聴衆を盛り上げた。ライト氏が注目したのは「Otaku」の自ら興味を持つ対象に対する貪欲な知識の吸収力だ。この点を注目しながらゲーム開発者はひとりひとりが自らのインナースペースに存在するOtaku的要素を見つめなおすべき必要があるとした。つまり、この貪欲な知的好奇心はリサーチをするうえで重要であるということだろう。
ゲームに必要なコンセプトを確立するうえで膨大なリサーチをおこなうわけだが、ライト氏によれば、リサーチで得た知識の9割は結局お蔵入りになるという。つまりコンセプトメイキングを進め、企画書にゲームアイデアの要素として反映できるようなアイデアは、自分が調査して発見した様々な要素の中の一割程度である、ということだ。
このような流れの中でコンセプトを形成しながらゲームにおけるシミュレーション的要素とゲームプレイそのものに関する要素という形でアイデアを落とし込み、それぞれのプロトタイプを開発していくということが重要であるとした。
●企画段階からも重要視される第三者の目
これら一連の流れで、全てのアイデアが生き残るわけではない。ライト氏は、コンセプトメイキングを進める極めて初期の段階から、第三者の目による評価を受けることの重要性を説く。コンセプトメイキング、リサーチ、プロトタイプ開発の次に必然的に来るのが第三者によるフィードバックだ。自らのアイデアの評価をしてもらいながら、その内容を企画に反映させつつリサーチを再度行ない、新たなアイデアを練り込んでいくという緻密な作業の連続が、ゲームのアイデアを確立するうえで必要とされるのだ。
この点について巨大な樹木を例にあげ、葉を最終商品にたとえつつ、リサーチにより得られた膨大な知識や、その中で生まれた数多くのアイデアが堅固な幹を形成し、第三者からのフィードバックにより得たあらたな知識を更に循環し生成される知がゲームアイデアに反映されていく姿を、栄養が幹から枝葉にまで流れていく様子で説明した。つまり、コンセプトメイキング、リサーチとプロトタイプの開発、そして第三者とのコミュニケーションにより得られるフィードバックはゲームを具現化していくうえで不可欠であるということだ。逆に言えば、ゲームが商品化された段階で消費者が享受するゲーム体験は、開発者側からすれば、もともと自らが構想していたアイデアのほんの一部でしかないことになる。ゲーム開発というものがいかに高度な頭脳労働を要求するかを示している。
●イノベーションと単なる"突飛なアイデア"を分けるリスクプロジェクション
新しいゲームアイデアを常に生み出すことで定評があるウィル氏らしくイノベーションの重要性も強調したが、iPodとセグウェイを並べながら、すべてのイノベーションが商業的な成功につながわるわけではないことを強調した。だが同時にイノベーションを巧みに作り出してその内容にどの程度市場が反応するかを確認することも重要だとし、リスクの想定の重要性を語った。
ライト氏は、リスクを測る上での重要な要素として、技術、デザイン、開発、マーケティング、政治をあげ、それぞれをしっかりと吟味しなければならないと説く。そのために、構想中のゲームを要素として細かく再分化し、それぞれの要素が既述の範疇の中で如何なるリスクが介在するか熟考していく必要があるという。講義では、『Spore』の商品化を考慮するうえで、重要な要素を細分化し、それぞれを技術的要素、デザイン要素、開発能力といった観点から分析していた。具体的にどの要素に関してリスク分析をしたかを示しながら、構想中のアイデアが技術的に可能なのかどうか?(アイデアを実現できそうな技術が商品や研究成果という形で存在しているか?)、以前自社プロジェクトとして必要としている機能が商品化されているか?、既存の商品の中でゲーム化をすすめようとしている要素の参照となりうるものがあるか?、等に関する検証が重要だという。これらを検証しつつ、最終的には開発プロジェクトの規模に見合った開発パイプラインを実現できるか、といったことを考慮する必要がある。
また人材なしには開発できないということから人材配分についても言及した。スタッフ編成も全体を3分割し、ベテラン、中堅、若手がそれぞれ3分の1ずつとするのが理想的だという。新卒の採用も一般的なエントリーシート方式によるフィルタリングだけでなく、大学などの連携により特定の人を推薦してもらうというのも有益な方法であると紹介している。いずれにしても最も重要なのがゲームアイデアの重要性を他のメンバーにしっかりと伝えていくということもあり、プロジェクトを進めていくうえで、『まず自分のアイデアをじっくりと時間をかけて考え直してみる』、『出来るだけ手広く網をかける(つまりリサーチを広範囲におこなう)』、『リサーチで得た知識の中で90%をどのように削ぎ落としていくかを見出していく(発見する)』、『どっぷりとはまることをエンジョイする』、『自分の情熱を他のチームメンバー間でも醸成する』、『アイデアをしっかりと確立し、完全に理解すれば他メンバーにも分かりやすく説明できる』、『ユーザーを変える』をあげていた。これらはクリイエイターとして、シムシリーズのように斬新なタイトルを開発し、多くのユーザーから支持を得ることでカリスマクリエイターとなった彼ならではアドバイスといえよう。
講演で取り上げられた「Spore」が、惑星系に様々な介入をしながら、生態系をシミュレートし、知的生命の誕生を誘い、最終的には文明を発展させ宇宙に旅立つという壮大なコンセプトであるゲームであることもあり、宇宙の誕生や恒星系の形成、はたまた宇宙における知的生命体誕生に関する可能性など様々な最新理論を織り交ぜながらコンセプトメイキングとリサーチのプロセスを語っていった氏の講演は、終止、笑いと喝采の絶えない講演であった。このようななごやか雰囲気の中にもライト氏が強調したゲーム開発におけるコンセプトメイキングとリサーチの重要性は非常に説得力があった。講義内容は『Spore』のゲームデザインに関係した様々な学術的理論に関する内容と、コンセプトメイキングに関する内容がそれぞれ半々で語られていたが、講演から見え隠れした『Spore』の詳細については筆者の推測を含めて別稿にて言及したい。
(中村彰憲@RBB)
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