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[AOGC2006]オンラインゲーム運営と「ゲーム内経済学」の視点 -国際金融情報センター山口氏(前編)
1月26日
 2月に開かれるオンラインゲームに関する国際カンファレンス「AOGC2006」。そのセッション「『ゲーム内経済学』とその意義」の講師、財団法人 国際金融情報センター山口浩氏にお話を聞いた。山口氏によれば、経済学をツールとして利用することで、オンラインゲームの内外に発生する様々な問題をよりスムーズに扱えるようになるという。

財団法人 国際金融情報センター山口浩氏
財団法人 国際金融情報センター山口浩氏

− まず始めに、山口さんが国際金融情報センターというシンクタンクに勤めていることと、今回講演されるテーマ「『ゲーム内経済学』とその意義」は、どのように関連しているのでしょうか?

山口:はっきり言うと、あまり関係ないんです(笑) 国際金融情報センターには、さまざまな金融機関から出向してきている研究員が多く、私もそうした一人ですが、通常業務とは別に個人的な研究テーマも許されています。配属された部署が地域統括部という横断的なセクションだったこともあって、国際金融的なテーマを探していました。その結果、MMORPGに代表されるような仮想世界における経済問題をテーマに選んだんです。これも一種の国際金融ではないかと考えたのです。研究を始めて3年くらいですね。

− 確かに、仮想世界に国境はありませんからね。

山口:「ゲーム内経済学」という言葉は私の造語ですが、アメリカなどで「>In-Game Economics」という言い方をしている人もいます。もう少し幅を広げて、バーチャルワールドに関する研究の一環と捉えることもできるんです。MMORPGを一種の仮想世界と捉えて学術的に研究する動きは、ここ数年で徐々に活発になってきました。社会学者や法律学者、そして経済学者も興味を持ち始めています。というのもMMORPGには、アイテム売買をはじめとした、経済活動が含まれているからです。

− わかります。

山口:また、いわゆるRMT(リアルマネートレード:現金によるゲーム内アイテム・通貨の売買のこと)を現実経済の上で意味のある行為と見なし、それらを研究する動きもあります。1999年には経済学者によるRMTに関する論文が世界で初めて発表されました。ただ、国際的に見てもこうしたテーマの研究者は限られており、多くの事柄が手つかずの状況です。個人的にも仮想世界の経済が、RMTなどを媒介として現実経済に影響を与えるという現象は、非常におもしろいなと感じたんです。

− なるほど。では、本講演における「ゲーム内経済学」とはどのようなもので、講演のサマリーはどのようになるのでしょうか?

山口:まずMMORPGの中で起きているさまざまな現象を、経済学的な視点で見るとどうなるか、という視点を提示したいと思っています。MMORPGは仮想世界とはいえ、そこで人が生活していて、アイテムを売買するなど、一種の経済活動をしているんですね。一方でその経済活動は、課金であったりRMTなどを通して、現実の経済活動とも密接に関係しています。

 つまりMMORPG内の経済活動が「国内経済」なら、MMORPGと現実の経済活動の関係は、国と国との関係、いわば「国際経済」のように見えるわけです。この両者について、それぞれ現状を整理してみたいと思います。

 まずゲーム内の「国内経済」についてですが、たとえばユーザーのネット上での発言などを観察していると、アイテムの価格が変動したり、世界全体で金余り現象が生まれたりするなど、経済的な側面でユーザーが不満を感じているゲームが多いように感じます。これは仮想世界のできごととはいえ、事業者にとってゲーム内の経済政策が大きな問題になっていることを示します。にもかかわらず今までのゲームデザインでは、経済に関する配慮が薄かったように思えます。そこで、もう少し経済的な面に配慮したゲームデザインを行うことで、ユーザーは幸福度が増すし、事業者はより安定した収益が見込めるのではないか。これが本講演の第一の主張になります。

− なるほど。では、ゲームの中と外をつなぐ「国際経済」についてはどうなりますか?

山口:たとえばRMTについては、海外を含む特定ユーザーによるハラスメント行為があったり、BOTやマクロなどのプログラムを使われたり、といった部分が問題視されています。これは経済学的にいうと、海外からの不法就労や不法移民によって、国内経済のバランスが崩れてしまった状態と見ることができると考えています。というのも多くのMMORPGでは、モンスターを退治することでお金が発生(獲得)するシステムになっているので、そうしたユーザーが増えるとゲーム内の通貨流通量が多くなりすぎて、意図した経済状態にならないなどの問題が生まれるわけですね。一方で、そうした一部のユーザーが集めたアイテムが、RMTというアンダーグラウンドな市場で流通され、現実経済にも影響を与えています。

− そうですね。

山口:国内のRMT市場規模については諸説ありますが、一説には100億円前後とも言われています。米・韓では一千億円前後。正確な額はともかく、その国のオンラインゲーム市場と同規模のRMT市場が生まれていて、それがアンダーグラウンドな状態になっているわけです。しかも、その多くが諸外国との関係性の中で起きていて、そのまま放置しておけるものでもない。ただ、一概に禁止すれば良いのか、という問題でもないと思うのです。メーカーにとって、経済的な要素を排除してしまえばRMTを根絶することは難しい話ではないと思いますが、そうしているゲームはない。それはゲーム内での経済活動がユーザーにとって楽しみの一環として位置づけられているからです。であればどうしたらいいか、ということですよね。むしろRMTを前提としたゲームデザインが必要で、その上で地下市場をできるだけ日の当たる場所に公開し、できればゲーム会社の収入源にする、といった施策が重要なんだろうと思います。禁止したとしても、誰も守らない禁止事項には意味がないですからね。

− 事業者にとって、頭の痛い問題ですね。

山口:現実の政府の経済政策も、同じようにたくさんの矛盾の中で行われています。MMORPGの仮想世界における政府は運営するゲーム会社です。現実の政府と同じように、矛盾に満ちた状況の中で、現実的な選択を迫られている。そのために経済学は有効なツールになりうるのではないかと思います。

<後半に続く>
(小野憲史@RBB)
関連リンク|Link
AOGC
[AOGC2006]オンラインゲーム運営と「ゲーム内経済学」の視点 -国際金融情報センター山口氏(後編)
財団法人 国際金融情報センター
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