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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
ベンチャー企業はP2Pなどの技術革新を積極的に利用してコンテンツを流通させるべき
10月20日
インターネットなどのデジタル技術の普及により、技術的には個人が作成した創作物を世界規模で流通させることが可能になっている。しかし、そうした創作物の存在をユーザーに知らしめるのは至難の業だ。一方で掲示板やブログなどから生まれたコンテンツがブレイクするなど、いくつかの成功例も生まれている。こうした中でクリエイターは、どのようなマーケティング手法をとるべきなのか。シンポジウム「クリエイターのためのゲリラマーケティングの薦め」では、この点をテーマにした議論が繰り広げられた。

 シンポジストは慶應義塾大学助教授の田中辰雄氏、インフォバーン代表取締役会長の小林弘人氏、コミックス・ウェーブ代表取締役社長の竹内宏彰氏で、モデレータはシンク代表取締役CEO兼早稲田大学デジタルソサエティー研究所の森祐治氏。田中氏は昨今P2PとCD売上の相関関係について「画期的」な研究成果を発表し、一躍注目を集めた。小林氏は元「ワイアード」日本語版の創刊編集長として著名な人物。竹内氏はアニメ「アニマトリックス」「ほしのこえ」のプロデュースで一大センセーションを巻き起こした。シンポジウムはまず、田中氏がP2Pメディアとの向き合い方について研究事例を紹介し、小林氏が実践例としてブログやインターネットを使ったプロモーションの現状を解説、最後に竹内氏がインターネットを使ったユーザーの期待感の醸造について発表し、それぞれについて森氏がコメントを加える形で行われた。

東京コンテンツマーケット2005シンポジウム「クリエイターのためのゲリラマーケティングの薦め」
シンポジウム「クリエイターのためのゲリラマーケティングの薦め」

 田中氏はまずP2Pを用いたプロモーションの可能性について、自身の研究結果をふまえて説明した。現在CDの国内売上は1998年の5億枚をピークに3億枚にまで減少しており、音楽業界はこの理由をP2Pによるファイル交換などを中心とした、違法コピーによるものとしている。しかし、田中氏は技術進化に伴う著作権問題は、レコード、ラジオ、ビデオデッキなど過去にも例があり、結果的には技術進化を味方につけて市場が拡大してきたと説明。本当に違法コピーがCDの売上を阻害しているのか、Winny上で行った調査結果を紹介した。それによるとCDの売上枚数とダウンロード数は関係があるが、ダウンロードの増加でCDの売り上げが下がるとは言えず、ファイル交換がCD売り上げの減少原因とはいえないと述べた。またあわせて行った音楽ユーザー、学生らによるアンケート調査でも、ファイル交換でCDの購入枚数は微減したか、ほとんど変わらない結果が出たという。

 田中氏はこうした研究結果から、Winnyでの現状のファイル交換はCD売上を減らしておらず、経済厚生を高めていると結論せざるを得ないと指摘。さらに「ファイル交換サービスで試聴し、気に入ると購入する"宣伝効果"があるのではないか」と分析した。小林氏によると、アメリカではインディーズレーベルや中堅アーティストの作品が、ファイル交換に流れるとアクセスが増えるケースもあり、ファイル交換についてもアーティスト間で賛否両論があるという。その上で政策的には現状レベルのファイル交換を抑制する必要性はなく、ビジネス的にはファイル交換による違法コピーを恐れずにネット配信せよと指摘した。具体的にはSNSでの音楽視聴の自由化や、個人サイトでのBGM使用の自由化などのアイディアをあげた。

 次に小林氏はブログを巡る現状や、インターネットを用いたマーケティング手法について説明した。小林氏はかつて雑誌「ワイアード」日本語版の創刊編集長として活躍。現在も出版社を経営し、雑誌や書籍、デジタルメディアなどを展開、独自のブログエンジンやアグリゲーションシステムもサービスしている。同社は著名人ブログやブログの書籍化で先鞭をつけ、先日出版された書籍「真鍋かをりのここだけの話」も、発売3日で5万部を超えるヒットを記録した。総務省の発表によると2005年3月末での国内ブログ閲覧者数は1651万人に上り、現在も増加中だという。

 小林氏はブログ以外にも、SNS、ポッドキャスティング、携帯電話、CGM(BBS、会員制ウェブ、ブロクなど)、チャット、スカイプなど、デジタルメディアの拡大状況を述べ、これらがすべてパードナライズド・メディアというキーワードに集約されると説明した。これらのメディアでは既存のマスメディアと異なり、ユーザーが双方向に繋がり、コンテンツへのコミットメントやコミュニケーションの質が濃い点に特徴がある。

 小林氏はこうした現状をふまえて、恣意的なキーワードをつけて情報を発信するタギングや、RSS、ATOMフィード、PINGサーバを活用した情報収集などのやり方などについて解説した。またWinny以外のファイル共有ツールとしてBit Torenntを巡る現状をあげ、複数の楽曲の組み合わせで新しい楽曲を作る、「マッシュ・アップ」という現象も紹介。クリエイターがすべての権利を保持するのではなく、ユーザーが入手したファイルの改変権などを一部認める「Some Rights Reserved」(All Rights Reservedのもじり)という考え方について示した。ほかにEメールを用いたマーケティングとして、映画「The Ring Two」の7dayslet.comがとった手法について紹介。同サイトでは予告トレーラーを見た人は7日以内にメールで紹介しなければ呪われる、といったキャンペーンを展開し、映画を大ヒットに導いたという。小林氏はこれらすべてが、今この瞬間にも行われていることだと指摘した。

 最後に竹内氏は映像作品におけるゲリラ・マーケティングの例として、自身の「アニマトリックス」「ほしのこえ」の事例を紹介した。「アニマトリックス」は、「マトリックス」監督のオシャウスキー兄弟が来日した際に、竹内氏が東京を案内したことがきっかけでスタートしたという、クリエイター同士の出会いが生んだ作品。プロモーションにおいても正攻法をとるワーナーに対して、竹内氏は全米のオタクが集まるコミック・コンベンションでの発表を主張。インターネットを介して全世界に存在を知らしめることに成功した。また先行上映として無料配信も実施。竹内氏は当時プアだったインターネットの回線状況から、一度見たユーザーは必ずDVDが欲しくなると読み、ネット上でのユーザーの期待感熟成に成功した。ほかにも世界同時発売のネット告知や、メイキングなどの映像露出を行い、最終的に非アニメファンも含めた、世界的ヒットを記録した。

 また「ほしのこえ」は、無名のサラリーマンが作ったオリジナルの長編アニメということで、発売前は業界関係者から売れ行きを疑問視する声が続出した作品。一方で当時ブロードバンドユーザーが50万人を超えたにもかかわらず、オリジナルの動画コンテンツが皆無だった状況から、竹内氏はインターネットで予告編を流せば話題性を呼ぶと判断。実際に2ちゃんねるなどで「幻の予告編」として話題を集め、最終的に250誌もの雑誌から取材を受けるなど、宣伝費用をかけずに大ヒット販売を記録した。現在同社では昭和の特撮映画を彷彿とさせるCG映画「惑星大怪獣ネガドン」の公開を控えているが、この作品もまずは1週間限定の単館レイトショーで公開するという。

 こうした実例をふまえて竹内氏は「大手企業はリスクを恐れて、P2Pなどの最新技術は使えない。だからこそベンチャーは技術革新を積極的に利用するべきだ」と述べ、ゲリラであればあるほど、さまざまな意味で強烈なインパクトが必要だと指摘した。

 最後に森氏はこれらの議論を総括して、デジタル技術が発達した現代では、ボトムアップによるコンテンツ製作を行うことで、国内パブリッシャを飛び越して、いきなり世界に飛び出すことも可能になっており、国によるコンテンツファンドや、P2Pによるプロモーションなど、さまざまなツールもそろっていると指摘した。そのうえで最も重要なのは、クリエイターが自分の作品を誰にどのように見てもらうか、これを意識した作品作りを行うことだと述べ、自分の作品を自分でプロデュースする必要性を訴えた。

(小野憲史)
(RBB TODAY)
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