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キャッシュフローのあるものならすべて投資の対象 -コンテンツファンドでシンポジウム
10月20日
 いわゆる「村上ファンド」をはじめとして、金融業界の専門用語だった「ファンド」について耳にする機会が激増した。最近は土地や株式だけではなく、映画などのコンテンツに関するファンドの例も増えている。しかし、一般のクリエイターにとっては、まだまだファンドは概念すら漠然とした、縁遠い物であるのも事実だ。コンテンツとファンドの関係、そして未来像とはいかなるものか。「東京コンテンツマーケット2005」では、まずこのテーマを皮切りにシンポジウムが開催された。

 テーマは題して「知っ得!コンテンツファンド活用法」。シンポジストはジャパン・デジタル・コンテンツ信託代表取締役社長の土井宏文氏と、電通エンタテインメント事務局の亀田卓氏。土井氏は金融界から独立してコンテンツファンドを専門に扱う企業を立ち上げたという、この道のスペシャリスト。最近では東京コンテンツファンドの運営などで知られている。亀田氏は13年間電通のテレビ局担当として、さまざまなコンテンツ製作に携わり、そこからコンテンツファンドの世界へ飛び込んだ、異色の経歴の持ち主だ。

 金融畑出身の土井氏とコンテンツ畑出身の亀田氏。ともに正反対の経歴ながら、今では「コンテンツ業界と金融業界の仲人役」を勤めている。シンポジウムはこの2人のトークが相互に絡み合った、興味深い内容となった。モデレータは日経BP「日経エンタテインメント!」発行人の品田英雄氏。

土井宏文氏、亀田卓氏、品田英雄氏によるシンポジウム「知っ得!コンテンツファンド活用法」
土井宏文氏、亀田卓氏、品田英雄氏によるシンポジウム「知っ得!コンテンツファンド活用法」

 土井氏はまず同社がこれまで資金調達に関わってきた作品と、その調達形式を紹介しながら、コンテンツファンドの現状を説明した。同社ではこれまで、アイドルファンドやアニメファンドといったユニークな商品を発売してきており、その過程で匿名組合方式から特定目的会社方式、信託方式へと形式が変化したきたこと。これにより個人投資家がファンドを通してプロジェクトに参加しやすくなってきたことや、クリエイターが権利を保持しながら、資金調達が容易になってきたことを説明した。同社は先月、深田恭子主演の映画「天使」(2006年春公開)を運用対象とするファンド「シネマ信託〜天使〜」を発表したばかり。個人投資家向けに11月から発売を開始する。

 亀田氏は1999年に電通社内で金融機関担当になったのを契機にファンドの世界に飛び込み、勉強を重ねていく中で、知的所有権の証券化の可能性について着目。金融ベンチャーの東京ファイナンス・アンド・エンタテインメントの代表に就任し、ユニークなコンテンツファンドの立ち上げを行ってきた。同社が過去に発売したファンドには、グラミー賞アーティスト、ベイビーフェイス来日公演のコンサート証券化や、2002年サッカーW杯時に国立競技場で行われたパブリックビューイング、中国雑伎団の日本公演の証券化などがある。これらは映画などとは異なり、興業という名の「コンテンツ」だ。亀田氏はキャッシュフローのある物ならすべて投資の対象になりうる、という。

 土井氏はこうしたコンテンツファンドが増加している背景として、調達サイド側の権利意識の高まりと、不況による個人投資家の資産運用先の減少を上げた。また亀田氏は国民の生活レベルが向上した結果、金銭面よりも精神的な満足感への需要が高まっていると分析した。

 両者が異口同音に述べたのは、コンテンツファンドでは株式や不動産などとは違い、その商品ならではのプレミアムや特典が喜ばれる点。コンサートの証券化では個人投資家をプライベート・コンサートに招待したり、プロモーションのアイディアを投資家から募るなどして、プレミアム感を演出した。土井氏もこうしたプレミアムは重要で、企画には製作会社と一緒になって知恵を絞るという。

 また土井氏はファンドなどを介して他者の資金を製作に注入した方が、自社ですべて負担するよりも、リスク管理の点から望ましいとした。4〜5年前までは優良な案件は自社資金で製作し、リスクの高い案件については外部から資金を調達するなどの企業もあったが、この2年でこうした風潮はかなり変わってきたという。亀田氏も案件の度合いによって資金調達の方法を変えるやり方では、失敗したときに会社の信用を失うだけと述べた。土井氏は日本では製作委員会による資金調達が一般的だったが、これだと案件が失敗した際に出資者が無限責任を負うため、業界外からの資金調達が難しい。これが国内でコンテンツビジネスの規模が広がらない遠因になっている、と指摘した。

 逆にコンテンツならではの特殊要素として、製作コストが完全に情報開示できない場合がある。テレビや映画への出演料などが好例だ。土井氏は投資家への責任説明が発生するため、情報開示できない要素を含むものはファンドにすべきではないと補足した。東京コンテンツファンドでも過去に新人アイドルに投資するアイドルファンドを発売したが、この場合も写真集やDVDの売上を対象とし、メディアへの出演については対象外にした。

 最後にコンテンツ産業とファンドの今後の関係性について、土井氏は資金の調達方法を多様化していくことで金融市場が広がるとし、日本にもコンテンツ製作の資金調達を専門に扱うマーケットの必要性を訴えた。また同社が運用する第3東京マルチメディアファンド(TMF3)の第2回募集が11月より始めることを紹介し、優秀な企画があればぜひ応募してほしいと訴えた。一方で亀田氏は、国もコンテンツ製作やクリエイターを応援している現状を述べ、ベンチャー企業こそ積極的に挑戦して欲しいと述べた。最後に品田氏が、クリエイターとファンドは決して遠い世界の物ではなく、こうした手段を用いて、世界で大ヒットするようなコンテンツを日本から発信して欲しいと述べ、シンポジウムを締めくくった。

(小野憲史)
(RBB TODAY)
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東京コンテンツマーケット
「東京コンテンツマーケット2005」公式HP
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