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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
コンテンツビジネスにおけるキャラクタのブランド価値の重要性 ―東京コンテンツマーケット2004
10月20日
 「マンガ・アニメ・ゲームは日本が世界に輸出できる三大コンテンツ産業」などと言われて久しい。その中でも昨今、特に注目を集めているのがアニメーションの分野である。「千と千尋の神隠し」のアカデミー賞受賞や、「ポケットモンスター」の世界的なヒットなど、事例は数限りなく上げられるだろう。その成功戦略として注目されているのが、キャラクタを中心としたブランド価値の創造と展開である。特に「ポケットモンスター」の大ヒットは、このモデルの有効性を内外に知らしめた。

小学館の久保雅一氏と、ゴンゾの内田康史氏
ポケモンのアニメ化の立役者である久保雅一氏と、アニメ制作スタジオ「ゴンゾ」をマネジメントする内田康史氏

 「東京コンテンツマーケット2004」シンポジウム第5コマでは、「コンテンツのブランド価値がマーケットを変える〜キャラクターのブランディング〜」と題して、コンテンツビジネスについて、キャラクタをはじめとしたさまざまなブランド価値の視点から議論された。シンポジストは小学館キャラクター事業センター・センター長で、ポケモンのアニメ化の立役者である久保雅一氏と、株式会社ゴンゾ・ディジメーション・ホールディングCOOで、アニメ制作スタジオ「ゴンゾ」をマネジメントする内田康史氏。モデレータは一橋大学大学院・国際企業戦略研究科助教授の阿久津聡氏。

 阿久津氏はまずコンテンツ市場の現状を紹介した上で、キャラクタのビジネスモデルが典型的な初期投資型モデルであること、そこでの早期回収とリクープの最大化に重要なのがブランドの構築であることを、経営学の視点から説明した。

 阿久津氏によると、ブランドとは製品やサービスを他と区別するための名前やシンボルのことだが、ブランドには企業が有するブランド・アイデンティティと、顧客が抱くブランド・イメージがあり、その中間に位置する存在としてブランド・コミュニケーションがあると説明した。このブランド・コミュニケーションを最大化することが重要で、そのためにはユーザーがブランドに抱く連想(コンテクスト)を可視化し、構造化することで、企業と顧客が双方でブランドの意味やブランディングの方向性を共有することが重要という。思いっきりひらたくえいば「企業と顧客の接点がブランドで、その価値を高めるには世の中の潮流に乗ることが重要」ということだ。

 これに対して久保氏は自身の経験などから「今、コンテクストとは『文脈』のようなものだと思いながら話を伺っていた。『踊る大走査線』などのプロデュースを手がけた亀山千広氏にインタビューした時に『放送番組は放映中はコンテンツに成り得ていない。放送を通してロケ地が名所になり、ドリンクのベンダが置かれ、土産物屋が建つなど、番組自体が一人歩きを始めたときに、初めて『コンテンツ』になるのではないか』という話を聞いて、なるほどと思ったことがある。情報が一人歩きを始めたとき、そこから新しいお金が発生する」とコメントした。この「一人歩き」が「文脈」であり「コンテクスト」に相当するキーワードになっているのは、言うまでもないだろう。

 また内田氏は「2000年に設立以来、地上波の深夜枠向けに向けたアニメ制作を続けてきたことで、アニメファンから「ゴンゾといえば深夜向けのアニメ制作スタジオ」という一定の評価を得た。視聴率も稼げており、最近はテレビ局向けの営業がずいぶんしやすくなった。ゴンゾという会社の価値が上がってきた」とコメントした。一方でゴンゾのビジネスモデルはDVDの販売を含めたもので、DVDを購入するようなコアユーザとマスユーザは異なること。そのため一概に高視聴率が善とは言えないこと。コアユーザに向けたブランディングもまた重要であること。さらにゴンゾという会社の下に、作品ごと、キャラクタごとのブランドという階層構造があり、これらの総合的なブランディングも重要だと述べた。

 一方で久保氏は、小学館は雑誌や書籍を売ることが商売で、社名を売っているわけではないこと。そのため企画を縛られない、自由な作品作りができる良さもあること。さらにアニメ制作においては、原作コミックの存在が基本となるため、まず漫画連載でファン層の開拓と内容のブラッシュアップ、さらには作品自体のブランド化が進められる強みがあり、ここがオリジナル作品中心のゴンゾとは大きく異なる点だろうと述べた。このように、「今はボールを打ち出す方向性についても、ゴルフ場レベルではなく、野球場くらい幅が広い。自分たちにあったやり方をきちんと見極めることが重要だろう」(久保氏)という。

 たとえば海外展開にとっても、小学館プロダクションやゴンゾが海外市場にあわせた作品の改変を柔軟に受け入れているのに対して、スタジオジブリなど、できるだけ日本語や日本バージョンのまま海外展開していくスタイルもある。起業と顧客の接点にブランドが存在するとして、市場にわからせるのか、市場にあわせて作品を修正するのか、さらには市場に向けた作品作りを最初から行うのか、さまざまなスタイルが考えられるが、久保氏によるとすべて正解であり、どのスタイルをとるかはプロデューサの思想にもとづくものとのこと。その結果「ポケモン」はアメリカで市場的な成功を収め、「千と千尋」は作品的な成功を収めた。

 その後議論の内容は、日本人のマンガ読解能力の高さや、ドイツ市場とフランス市場におけるマンガ市場とアニメ市場の比較、日本製アニメが海外に進出する際のポイントなど、ブランド論を越えてさまざまな話題に派生。興奮さめやらぬ中、あっという間に規定の時間となった。いささか議論が混乱した嫌いはあるものの、現場の第一線で活躍するプロデューサ同士の話を聞くことができた、興味深いシンポジウムとなった。


(ライター 小野憲史)
(RBB TODAY)
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