|
WiMAXサービスの地域密着型モデルとは
ネットイン京都 廣瀬丈矩氏 インタビュー
ネットイン京都は、京都を中心にネットワーク事業を展開する地域密着型のサービスプロバイダである。その豊富な経験をもとに、WiMAXの特性を利用した地域内インターネットの展開、地域住民自らが運営することの意義、ならびにその可能性について、11月18日に開催される セミナー「商用サービス期を迎えたポスト3Gモバイルの本命 WiMAXが実現するビジネスモデル展望 」の講演に先立って、講師である同社のユビキタス事業本部統括本部長・廣瀬丈矩氏にお話をうかがった。
|
| ネットイン京都 ユビキタス事業本部 統括本部長 廣瀬丈矩氏 |
ネットイン京都は現在、京都御所近くの「出町商店街」を中心としたWi-Fi事業に取り組んでいます。これは「出町ネット」と呼ばれる地域内インターネットで、地域住民や大学教授らとともに設立した任意団体を運営母体とし、「Wi-Fiを使って地域の住民に対して何を提供できるか」の実験を行っています。我々がこの実験を進めていくなかで、「地域の住民に対してはどういったWi-Fiサービスを提供できるのか」「その中でWiMAXはどのような役割を果たすのか」が見えてきました。
地域においてもっとも望まれている通信は「いつでも気軽に連絡がとれる手段」です。高齢化が進む地域では、ご老人が元気で暮らしているかどうかを確認できることが重要になってきます。たとえば、Wi-Fiの携帯電話を利用して、アクセスポイントの履歴から時間と位置を特定するといったサービスもその1つです。個人情報保護の側面からすれば問題となりそうなサービスですが、実際に地域の方にうかがってみたところ、「地元の人しか見ない分には問題ない。逆に見ていてもらえれば安心」とおっしゃいますので、地域が限定されていることでこの問題はクリアされています。
地域内ネットワークに特徴的なニーズは「プッシュ型の情報」です。つまり、1960年代から1970年代にかけて普及した「農業有線放送」に代わる情報通信です。高齢者が多い地域では、パソコンや携帯電話を使いこなしたり、双方向型で情報をやりとするようなことを前提にしたサービスでは利用してもらえません。そこでプッシュ型の簡単な端末を用意し、たとえば商店街の販促ツールとして活用したり、鉄道などの公共施設から情報発信するといった、全国規模ですでに展開されているプッシュ型のビジネスモデルを地域レベルで展開していくことが求められているのです。
地域において望まれるもう1つの通信は「災害や防犯など、緊急時に使えるメディア」です。たとえばWi-Fi端末からの信号を検出して子供の現在位置を確認できれば、犯罪を未然に防ぐことにつながるかもしれません。通信距離が短いWi-Fiは、逆に現在位置の特定に非常に有効です。ライブカメラの設置に関しても、映像の配信は地域内に限られるので見られる側も安心ですし、自主防災会の担当がそれを見るようにすれば地域ぐるみの防犯活動に役立てることができます。急病になった人をよく知る人が現場に駆けつけることができれば、医師らと協力してより適切な処置を施すことができ、ご老人の孤独死をなくすことができるかもしれません。さらに交通事故多発エリアにおいて、従来であれば公安警察が行っていた対策を地域住民が協力し合って子供たちを守るなど、住民のアイデアで多様なアプリケーションサービスをつくりだしていくポテンシャルがWi-Fiによる地域内ネットワークにはあります。
以上のようなサービスをISPが提供しようとしても、地域住民たち自分たちのプライベートをISPに見られることは嫌がります。したがって地域内ネットワークでは、サービスの運営は地域の任意団体やNPOなどに任せること、それが我々のビジネスモデルです。我々は原価割れをしない程度にネットワーク設備を地域に貸し出し、そのエリアを他社にローミングすることで収益をあげていくことができます。
■WiMAXバックボーンでWi-Fiをたばねる
Wi-Fiの技術的な問題として出町ネットの実験からわかったことは、「Wi-Fiは建物に浸透しない」ということです。また、屋内にアクセスポイントを試験的に設置してみたところ、周囲のアクセスポイントまで見えてしまい、電波干渉によってスループットが低下するという問題も発生しました。そこで、Wi-FiのバックボーンとしてWiMAXを採用しました。こうすれば各戸がそれぞれにWi-Fiのアクセスポイントを設置したとしてもローミングが可能となり、電波干渉が起こったとしても最適なアクセスポイントを自動的に選定できます。
実際のところ、WiMAXを利用したWi-Fiネットワークは地域モデルに非常に適しています。およそ1,000世帯、半径にして500m程度の地域であれば、ある程度見通し線が確保できます。その中央にWiMAXを設置し、各戸にWi-Fiのアクセスポイントを設置していけば、その地域住民だけを収容する地域内ネットワークが容易に構築できるのです。
我々のWiMAXを利用したWi-Fiのネットワークでは、地域住民からのニーズを考え、Wi-FiのみならずWiMAXに直接アクセスするサービスも提供します。ただしWiMAXの電波浸透率は十分ではないので、防災無線などのような屋外利用を想定したサービスを検討中です。
出町は京都市内ということで、立地条件から言えばADSLやFTTHも利用できるエリアに位置しますが、全国的に見た場合、過疎地や僻地であるためにブロードバンド化が進まず、ラストワンマイルをなんとかしようと誘致に積極的な行政や任意団体が多く見られます。加えて地方はノートパソコンの普及率が高く、現地視察から導入までに多大な時間と労力をかけることはありません。実際に出町ネットのようなWi-Fiサービスの導入を検討している地域もありますし、当社ではVPNを利用した「みあこネット」事業を通じて培ってきた地域とのつながりとノウハウも活かし、出町ネットのように地域住民自らの運営で成り立っていくネットワークを今後も展開していきたいと考えています。
● セミナー概要 ●
商用サービス期を迎えたポスト3Gモバイルの本命
WiMAXが実現するビジネスモデル展望
●RBB TODAY編集部 ブロードバンド企業訪問 一覧へ●
●ご意見・ご感想をお寄せ下さい●
|