第一回、第二回と光・IP電話について紹介してきたが、では光・IP電話は今後、どのように展開していくのだろうか。Bフレッツとともに「 ひかり電話」サービスを提供している、NTT東日本
ブロードバンドサービス部 IPコミュニケーションサービス開発部門の開発担当者にひかり電話の現状と今後を聞いた。

『2005年度にNTT東日本でBフレッツ100万契約を目指す』───今年3月にNTT東日本が発表した事業計画のひとつが、FTTHに注力し、ひかり電話を前面に押し出すという方針だった。ひかり電話の開発を担当する鈴木氏は言う。
「ひかり電話は、現在ではBフレッツの提供エリアのほぼ全域に提供していますが、これはひかり電話をBフレッツの拡販のためのツールにしたいという目的でエリア展開やポジショニングを行ってきているためです。
実際に去年の9月以前と以降で、Bフレッツの販売数とひかり電話の販売数を追ってみると、Bフレッツの月別の販売数は軒並み上がっている。これはひかり電話がBフレッツの需要喚起に寄与していることを示す数字だと思っています。
特に、戸建て向けのサービスが今年2月に開始されて以来、訴求力が高まっている。市場にひかり電話は受け入れられつつあり、それがBフレッツの順調な成果につながっている。ひかり電話はやはり市場に出してよかった、というのが開発側の結論ですね。(鈴木氏)」
下記の図は、NTT東日本調べによる「ひかり電話/Bフレッツ半期毎販売数推移」だ。確かに、ひかり電話が開始されて以降は、Bフレッツの契約者数の増加に勢いがついている。さらに鈴木氏は、ひかり電話が“キラーアプリケーション”となっていることを裏付ける、市場調査(NTT東日本ブロードバンドサービス部独自調査)の結果も提示した。
「Bフレッツとひかり電話に同時加入されたお客様に『Bフレッツに入った理由』を聞いたところ、約2割のお客様から、Bフレッツの『高速通信』をおさえて『ひかり電話に入りたかったから』だという回答をいただきました。さらに、Bフレッツの加入理由を5つ聞くと、その中にひかり電話を挙げる方が約8割。つまり、この8割のお客様にはBフレッツの選択にひかり電話がなんらかの影響をしたことになるわけで、このことからもひかり電話が“キラーアプリケーション”になりつつあることが見ていただけると思います。(鈴木氏)」
実際にユーザーの導入後の満足度も、同様の市場調査によると「満足」と答えたユーザーが約8割にのぼると言う。具体的な理由としては、「基本料がワンコインの500円と安いこと」「通話料が全国一律で3分8.4円と安いこと」「いままで使ってきた番号をそのまま使えること」「電話機をそのまま使えること」が挙げられるという。
「注目したいのは、導入するタイミングで期待したことを聞いた際にも、この4つを挙げていただいている点です。半年や1年間と実際に使っていただいたあともこの4つが同じウエイトで入ってくるということは、ひかり電話がお客様の期待をうらぎらないということだと自負しています。(鈴木氏)」
と、その品質に自信を持つ。では、肝心の音声に関する要望は出ていないのだろうか。また逆に、ひかり電話を利用することによってFTTHのウリである「高速通信」が圧迫されるようなことはないのかも気になるが、この2点に関しても問題はないという。
「ひかり電話は0AB〜J番号を使用しているため、そもそも品質を守らなければいけない規定があります。ひかり電話のパケットに対して品質を守るしくみをネットワーク等に設けていることから、ご懸念のような音声での要望はでておりません。
また、音声を通すことによってフレッツを通っていくデータが圧迫されるようなしくみにはしていませんので、データ通信にも問題はありません。(木寺氏)」

では次に、10月31日にNTT東日本から発表された 「複数チャネル(ダブルチャネル)」と「追加番号(マイナンバー)」の新サービスについて聞いて行きたい。
まず「複数チャネル」は、ひかり電話の1契約で2回線分の同時発着信が可能となる付加サービス。FAXでデータを受けながら通話も可能といった使い方が可能だ。もうひとつの「追加番号」は、ひかり電話の1契約で、契約者回線番号を含めて最大5つの電話番号が利用可能となるものだ。NTT東日本としては、これらのサービスを具体的にどのような利用シーンをイメージして提供したのだろうか。また、その狙いとは?
「今回発表した追加番号では0AB〜J番号を最大5つ使えます。たとえばお父さんとお母さん、息子さん娘さんとそれぞれ個人の番号が持てる。娘さんの個人番号にかかってきた電話は、娘さんの電話機しか鳴らない、という形ですね。そうなると、携帯電話に近い個人的な使い形ができる。ただ、そうはいっても家の電話なので、お父さんにかかってきたものは代表電話として家族全員で受けれるとか、そんな利用シーンを考えています。(木寺氏)」
こうした複数チャネルや追加番号など、ひかり電話独自のサービスを打ち出すことで、単に「安い固定電話」との立場から脱却するだけでなく、この新サービスが、あらためて固定電話で話すことの安定性、通話品質を見直すきっかけになるかもしれない。家族で暮らしていても、直接自分の部屋にかかってくる“家デン”は、エンドユーザーにとっても、電話の使い方を変えるだろう。ひょっとして、ひかり電話の今年一番の巨大な起爆剤と言えるのではないだろうか。
「今回、追加番号と複数チャネルの発表で“個人”に着目したサービスを提供したと思っています。一家に一番号、一世帯に一番号という文化から、ISDNや、携帯とは違う、ひかり電話の中で個人に対して一番号のよさをアピールして、固定電話の利用を活性化させるためのしかけを作っていきたい。このサービスの提供で、やっとそのスタート位置に立ったと思っています。
このサービスを提供しておしまいではなく、これをどれだけ満足してお客様にお使いいただけるか──そのための新機能・サービスを今後も考えていきたいというのが大きい狙いとしてあります。03、045などの0AB〜J番号を個人で持てる便利さがひかり電話のお客様の中で浸透していけば、ISDNの既設のお客様の移行だけでなく、お客様と利用シーンを一緒に作りながら、市場を活性化できるのではないかと。
また今後は、今回のセット割引のように、いままでの加入電話とはちょっと違った、多種多様の割引サービスやパッケージもお客様のご要望にお応えできるよう検討していきたい。お客様のニーズをしっかりくみ取って、しっかりしたサービスをタイミングよく出していきたい、と思っています。(鈴木氏)」


今回の「複数チャネル」「追加番号」の新サービスと同時に、無線IP電話機 「ひかりパーソナルフォン
WI-100HC」の報道発表も行われた。ワイヤレス部分にWi-Fiの技術を利用し、内線や複数チャネルの機能を使いこなせる、いわゆるひかり電話のコードレス子機として使えるものだ。単に「コードレス子機」に見えるこの端末が注目されるのには理由がある。
法人向けには、すでにNTTドコモがFOMAと無線LANに対応する「N900iL」を提供しているが、この携帯電話と固定電話を融合した端末──「FMC(fixed
mobile convergence)」につながる1台が、実はこの「WI-100HC」だからだ。
「最初の形態としては、いわゆる今までのコードレスの子機として使える無線IP電話機を考えていますが、徐々に今後機能追加していきたいなという思いはあります。利便性向上という点から、固定電話サービスと移動体サービスを融合してほしいという声が徐々に高まっています。今回は最初の第一歩として、家の中でコードレス子機的な使い方ができる端末としてWi-Fiフォンを提供開始しますが、それが将来的に徐々にそういう方向につながっていくんじゃないかなと、思っています。
(木寺氏)」
FMCには、NTTグループを縦断するような連携作業ならではの難しさもあるだろうし、端末側にも、Wi-Fiフォンや光・IP電話の新技術だからこそ必要な、さまざまな検証も必要になる。徐々に次世代の固定電話に近づくひかり電話の開発には、NTTの『信頼性』を守るためのさまざまな努力も行われているという。
「ひかり電話の場合、フレッツ系のサービスのように部分的になにかを行うというのとは違いますので、それこそあらゆる組織との間で、さまざまなコラボレーションが必要になりました。
端末においても、実際にお客様がしっかり使えるものを提供するには、さまざまな試験が必要ですし、項目ひとつとってもひかり電話ならではのものも多く、非常に多岐にわたりました。二週間以上の試験・検証環境の中で、単純な『電話をかける』ところから、さまざまな測定を各部署の方々と協力しながら行い、苦労はありましたけれども、新しいものを作り上げる、やりがいもあるものでした。(小玉氏)」
さらに、ひかり電話なら既存の電話機を使える、という利点を実現させるにも、当然さまざまな試験が伴っている。NTT製の電話機は、研究開発部門や電話機を開発・販売している情報機器部門と連携し、様々な組み合わせでの検証を行うという、気の遠くなるような作業も行ったそうだ。今後も他社製の端末で検証を行うためのテストベッドも検討の範疇にあるという。
携帯電話の便利さと、固定電話の通話料金の安さを併せ持つこの端末は、FMCの中でも特に「OnePhone」と呼ばれる主役となる技術だ。さらにOnePhoneは、無線LANに対応することで高速なWeb閲覧やTV番組の視聴など、今の携帯電話が苦手としている部分を補うこともできる。一方で最近、日本ではあまり一般化していなかった、PDAと携帯電話の一体型端末である“スマートフォン”が続々登場して注目を集めている。NTTドコモが今年発売した無線LAN対応のFOMA『M1000』や、WILCOMの発表した無線LAN対応のPHS『W-ZERO3』などがそれで、M1000やW-ZERO3にも無線LANが搭載されている点ではFMCのOnePhone端末と似ている。こちらは、携帯電話やPHSからのOnePhoneへのアプローチだが、これにIP電話が搭載されればOnePhoneと同じ、とも言える。
「ひとつの方向性としては、いままでの世界では音声は音声として、データやWebアプリケーションとは別になっていましたが、IP電話であればIPを技術の基盤として利用していることからこれらのサービスとも融合していきやすいと考えていますので、今後はIPならではのサービスを開発していきたと思っています。
将来像については、私どももどうしたら一番ユーザーの方に喜んでいただけるか悩みつつ進んでいるところがありますが、イメージ的には『ユビキタス』と言われるような世界で、ユーザーの方がどこにいようとも──要するに携帯電話を使っていようが、固定電話を使っていようが、意識することなくひとつのインターフェイスを使って、さまざまな端末と通話できたり、音声からデータまで含めてさまざまなアプリケーションを利用できる姿が想定できると思っています。(木寺氏)」
光・IP電話のこの流れは、停滞していた固定電話の利用を活性化させる役割もある。複数チャネルや複数番号とあわせて、新しい電話の使い方ができるだろう。
「NTTとしても、サービスを出してそれで終わりということではなく、お客様と一緒に利用シーンを作っていくような提案もぜひしていくべきだと個人的に思っていますし、逆にお客様から教わることも多々あるはずです。固定電話の番号をお客様と私どもで一緒に使っていくような新たな文化を醸成していくことが、ひかり電話のマーケット拡大につながるファクターになると考えています。(鈴木氏)」
ひかり電話は、今はBフレッツの販促ツールだが、将来的には次世代の電話をひかり電話で構築していくプランがある。光・IP電話は今、その先取りができるサービスだといえるだろう。
「電話には100年以上の歴史がありますが、長いスパンで見ると技術革新の連続です。最初は手動式交換でやっていたものが、自動式交換になり、実現技術としてクロスバー交換機だったり、アナログ交換機だったり、デジタル交換機が出てきてISDN……と10年ぐらいの単位で技術革新がずっと続いているわけです。NTTのいいところは、新しい技術を前向きにとらえて、まずは最新の技術を使ってみて、お客様に評価されるサービスに仕上げていこう、という部分にあると個人的に思っています。ひかり電話も、最初は電話の収入に影響があるかもしれませんが、あとから振り返れば、やっぱりあのときにやってよかったなと言われるようにしていきたいと思っています。そのためにも、IPならではの技術を使って、IPならではのサービスを出していきたいですね。(木寺氏)」
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