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第10回:認知心理学で読み解く「今週妻が浮気します」
2005年4月12日
「今週妻が浮気します」を読み、私がまっさきに思い浮かべたのは「認知療法」だった。だから1月26日に書いた記事の中で、「ネット上のコミュニケーションは、一種のセラピーとして機能することがわかっておもしろかった」と書いた。
さて、では人間がものごとを「認知する」とはどういうことなのか? また人間が「認知の仕方」を変えれば、その後の生き方はどう変わるのか?
今回は「今妻」をテキストに、認知のメカニズムについて考える。またインターネットは認知を変えることに、どう役立つのか? ネットのプラスの面についても考察してみよう。
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質問者の「認知の仕方」はどう変わったか?
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「今週妻が浮気します」を読んでおもしろいなと思ったのは、途中の過程と最終段階で質問者に自発的な「気づき」が芽生えたことだ。
「今妻」では最初、質問者は「妻に浮気をされている一方的な被害者」として登場する。
「相手にも自分のこの苦しみを味わわせてやりたい」。「妻が全面的に間違っていることを認めさせたい」。恋愛のもつれでありがちな、報復衝動も強かった。
彼の書き込みから見る限り、妻の浮気の原因は、質問者が仕事のために家庭を犠牲にしていることだ。たとえば29番の回答では、回答者から「奥様が他の人に惹かれてしまった原因はなにでしょうか?」と聞かれて彼はこう書いている。
『浮気を責めたときも、「もっと一緒にいられたらそんなことは最初からしない!」といって泣かれたこともありました。
その時は、「そんなことが浮気していい理由になるか!」って怒鳴りましたが、彼女の言い訳かもしれませんが、寂しい思いをさせているのが原因の一つであることは確かかもしれません』
「彼女の言い訳かもしれませんが」とあくまで前置きしながら、昼も夜もない自分の仕事の状況が「原因の一つだ」と書いている。
すでに29番の時点でかなり「セラピー」の効果が出てきているわけだが、私にはこの書き込みを見て「原因の一つ」どころか、妻の浮気の原因の大部分は彼のライフスタイルにあるとしか思えなかった。まあこればっかりは奥さんにインタビューしないと、なんともいえないが。
ところが彼はこのあと徐々に変わっていく。回答が30本を越えたあたりから、次のような言葉がひんぱんに登場するようになるのである。
夫『「もう一度、奥様と同じ位置に立つ目線を持ってみたら」という考え方が決定的に欠けていたんだと思います。
暴力を振るわないというだけで、高圧的に責めていたかもしれません。
一度素直に今の気持ちを伝えてみます』(30番)
夫『知らないうちに、プライドや甘えが、いびつな鎧になっていた気がします』(31番)
夫『説明を重ねるうち、自分が気がつかない自分が見えてきたような気がします』(32番)
夫『一つ言えるのは、最初の回答を頂いた頃と、中盤、そして今とはまるで気分が違います』(34番)
夫『2度にわたる育児休暇の影響で、会社で嫌な思いをする事も多くなった妻にとって、残業も出来ず、当然飲みに行く事もなく、
退社時間と同時に一目散に保育園へ迎えに行き、一人で子供の世話と家事をして寝る生活は、かなり寂しいと思います。
何度も助けてやらなくてはならないタイミングを、見る事さえ出来ず、気付こうともしなかった責任は私にあると思っています。(中略)
こうして気持ちを整理すると、他人事のように、よく見えてくるもんですね』(36番)
他人事、つまり事態を客観的に見られるようになったということだ。ネット上のコミュニケーションには、こういう有益な「覚醒機能」がある。
そしてこうした自己発見のプロセスやメカニズムは、サイコセラピーのなかでもとりわけ認知療法(cognitive therapy)に似ている。
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