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第9回:「今週妻が浮気します」はグループセラピーか? 〜後編〜
2005年3月15日
「今妻現象」は人の心の中に湧き上がる個人的な体験であり、世の中を巻き込んだ社会現象でもある。リアルタイムで何が起こったのか? いま何が起こっているのか? を考えれば世の中が見えてくる。
後編の今回は、まず一般論として「今妻」を通して見えたネットの特性について考える。チャットや掲示板みたいな「ここだけの話コミュニケーション」は、すでに自然な形で「ネット・セラピー」を実現している、というお話だ。
次は「今妻」がネットの外側に広がるリアルな世界にどんなふうに波及し、影響をあたえたのか? その構図を読み解く。
そして本題だ。前編では「チャットや掲示板のようなネット上のコミュニケーションは、一種のセラピーとして機能する」と仮説を立てた。そこで今回は実際のカウンセリングのセオリーや思想を例に取り、今妻の背景に流れるメンタリティとの共通点をチェックする。
はたして仮説は立証されるのか? それともあえなくコケるのか? あなたの目で見て確かめてほしい。
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「ここだけの話」をさせるチャットや掲示板の密室性
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もともとチャットや掲示板は、「折り入った話」がしやすい場だ。理由はもちろんハンドルネームという匿名性がひとつ。また、あたかも自分たちが「閉じられた空間にいる」かのような一種の錯覚も影響している。
刑事が犯人を尋問するとき、取調室はたいてい狭い密室だ。政治家が料亭で「ここだけの話」をするのには理由がある。また私のような職業の人間が取材するときも、インタビューの現場はあんまり広くない場所がいい。そのほうが相手から込み入った話を引き出しやすい。
人間はあけっぴろげな広い場所よりも、閉ざされた空間にいるときのほうが「人に言えない話」をする気になる。スペースの適度な狭さと密室性が「秘密は守られる」という安心感を生むのだろう。
もちろんインターネットは論理的には世界につながっている。だがチャットや掲示板で人と情報をやり取りするとき、ユーザは自分が密室にいるかのような意識でふるまっている。だからリアルの世界では話せないような自分の悩みや生き方について語ることができる。
ネットならふだん隠している個性や性癖もオープンにできるし、実生活では照れて言えなかった高邁な哲学論や文学論、死生観みたいな大風呂敷も広げられる(もちろんいい意味でだ)。
そんなネット特有の「ここだけの話コミュニケーション」は、「今妻」みたいなトリガーさえあれば、心の問題にフォーカスして精神世界を旅するのにとても向いている。
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