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Slash Games編「ゲームと学問 〜開発・研究・教育〜」

「アソビ≠ムダなこと」― 遊びの可能性とは?

2005年6月24日

慶應義塾大学 環境情報学部
征矢健太郎

世界初のコンピューターゲームはコンピューターの平和利用という性格があった


 軋みはじめた「デジタルの世紀」
 

 昨今、身のまわりの様々な物が「デジタル化」の流れに取り込まれている。だが、現代のデジタル社会は、そのあまりにも速い変化のスピードに自ら軋みを生じさせはじめている。情報格差、メディアリテラシの問題と言った、能力や世代や文化の違いによる格差が生じ、その差はどんどん広がっている。

 とはいえ、今から後戻り、というわけにも行かないのが世の常である。我々が出来ることといえば、せめてその方向を良い方向に舵取りすることである。

 ここ数年の現代社会は、その将来の不安を見据えて、どのように舵取りしてゆくべきであるか、という論調が主流であるように思う。デジタル化でどのようなことが起こり、それに出来る対処とは何か。多くの人間を悩ませる現代の重要な課題である。

 見直されはじめる「コンピュータゲーム」
 

各種デジタルの年表。ブームはおおよその時期
(クリックで拡大表示)

 ところが不思議なことに、20年も前からいち早くお茶の間に姿を現し、世代や文化、国境を越えて受け入れられてきた「デジタル」の例が取り上げられることは少ない。そのデジタルの例、とは「遊びのデジタル化」、つまりコンピュータゲームである。約20年前に本格的に日本の家庭に普及しはじめたコンピュータゲームは、家庭の中のデジタル化の最先鋒であった。

 その当初、子ども向け玩具としてコンピュータゲームは登場したわけであるが、考えてみれば、デジタルの最先鋒が子ども向けであったというのは現代のイメージからすると不思議である。

 現代の「デジタル」のイメージと言えば、「複雑・分かりにくい・使いにくい」といったイメージが少なからず付きまとう。一方「子ども向け」のイメージと言えば、良くも悪くも「簡単・単純・分かりやすい」と言ったものである。この二つのイメージは全く正反対である。

 「デジタルの最先鋒が子ども向け」ということが奇妙なのは、このそれぞれのことばが持つイメージが全く合わないからである。「複雑・分かりにくい・使いにくい」物の最先端が「簡単・単純・分かりやすい」である、と言うのだから当然だろう。

 だがその歴史が証明するように、コンピュータゲームは広く受け入れられた。今日のコンピュータゲームには(他の遊びの例に漏れず)「子ども向け」というイメージが付いているが、それはつまり子ども層に受け入れられてきた、ということでもある。子ども層に受け入れられるためには、「簡単・単純・分かりやすい」でなくてはならない。ということは、コンピュータゲームは「簡単・単純・分かりやすい」を実現したデジタルであるということになる。

 ゲームは「お茶の間に進出できたデジタル」
 

 「簡単・単純・分かりやすい」というのはデジタル社会の将来にもっとも求められているものである。デジタル社会が人に優しくあるためには欠かせない要素である。いや、正確にはデジタル社会以前から求められてきたが、なかなか実現してこなかったことでもある。デジタルな遊びはそれを既に20年前に実現していた。そうでなければ、家庭の中、ましてお茶の間の中に受け入れられるはずも無い。しかも、「使えなければこれからやってゆけない」という強迫観念にも似たものに駆られるでもなく、まして「役に立たない、不真面目だ」と言われながら、何よりも先んじてお茶の間への進出を果たしたのだ。

 「ソフトウェア」と「ハードウェア」の区別が付くことは今日では非常に重要である。情報リテラシーの第一歩はこの区別をつけることから始まるといっても過言ではない。それまでの単純な「モノ」あるいは「キカイ」といった不分別な理解から、情報という概念を分化させ、その重要性を認識する上で、「ソフトとハード」という区別は絶対に必要である。

 この、「ソフトとハード」の区別が家庭の中、お茶の間で理解されるようになったのも、コンピュータゲームの普及以降であったように思う。

 「ソフトとハード」の例としてテレビ受像機とテレビ番組の対比がよく示されることがあるが、テレビに長年触れてきた人がこれを理解しているかといえば疑問である。そもそも「テレビ」と一言で言ったとき、その言葉はソフトウェア、ハードウェアといった区別は含まず、テレビ番組もテレビ受像機も(あるいはサービスとしてのテレビ放送も)ごちゃ混ぜに含まれている。テレビに限らず、コンピュータゲーム機以前のお茶の間には、ソフトとハードの区別が必要な機器が存在しなかった。

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