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中村彰憲:E3 2004現地レポート
〜最新ゲームに見る北米ゲームディベロッパーの先端技術マネジメント〜
2004年5月12日〜14日(米国時間)



 ここ数年ファーストパーソンシューティング(以下、FPS)の次世代エンジンを活用したタイトルがE3(Electronic Entertainment Expo)において注目の的となっており、今年開催されたE3 2004も例外ではない。昨年最大の注目作であった『Half-Life2』(以下、『HL2』)や、FPSの中の代表格である『DOOM3』(以下、D3)がより現実的な発売予定日とともに発表されたのだ。

 一方、エピックゲームは、3D『UNREAL』エンジンの次世代バージョンである『UNREAL ENGINE 3.0(以下、UE3)』にかかわるデモをエヌ・ヴィディアブースにて公開した。同社のエンジンは全世界で一大市場を築き上げている『リネージュ2』や、中国で開発し、その技術力が買われている『鉄血三国』など、MMOPRG開発などでも採用され、その汎用的な用途が認められつつある。CPUやGPU能力の飛躍的向上がリアルタイムレンダリングにおける細かな描写を可能にしており、各社次世代3Dエンジンの機能においてもベースとなる、ゲームに遊びの付加価値を与える技術としてより多くのリソースを投入しているように思える。

 今年は、上記ゲームおよび3Dエンジンのすべてのプレゼンテーションに参加し、担当者からコメントを得ることができた。そこではゲームを『遊び』としてとらえ、最新技術を遊びの要素としてたくみにとらえている様子が伺えた。本稿ではその中からエンジンそのものではなくゲームとしての発表が行われた『D3』と『HL2』の展示から観察できた、北米ディベロッパーの先端技術マネジメント戦略について推測していきたい。


 DOOM3:光と暗闇、臨場感あるサウンドで技術を恐怖の演出に転換
 

 『DOOM』は1994年にid Softwareより開発された一人称視点のシューティングゲームだ。月面基地で行ったテレポーテーション実験が失敗し、魔界から異型の生物との戦いの中で生き残るべく戦うという話だったが、『D3』は続編というよりは第1作での逸話の「語りなおし (Re-telling) 」であるという。そこには開発者であるジョン・カーマックの脳内に存在していた『DOOM』を忠実に表現するという壮大なビジョンがある。それを達成するための開発コンセプトは「部屋を真っ暗にし、ボリュームを目いっぱい上げた状態でプレイしたいと思わせるような恐怖の演出」だった。


◆恐怖を演出するDOOMエンジン

 「DOOMエンジン」は他社のゲームエンジンと違い、そのすべてが自社開発されている。当然物理エンジンもその例外ではない。『D3』はゲームプレイヤーのリビングルームをこれまでにない恐怖と慟哭に満ちた空間にすることを念頭に開発された。したがって、本作品を開発するなかで生まれてきた技術も、恐怖を表現するために最適化されている。

 その例として最初にあげられるのが、ユニバーサル・ナチュラル・ライティング機能により醸し出される「光と闇」の恐怖。今回のデモプレイでもっとも印象を受けたのは、『D3』では光と闇のメリハリがはっきりいるという点だ。これはゲーム内では、電灯、モニタ、蛍光灯、LCDパネルなどすべての光源しか“実際の光”を発していないからだ。それぞれの光の及ぶ範囲も確定しているので、その範囲が及ばないところはすべて文字どおりの闇になってしまうわけだ。従来はテクスチャなどを工夫することにより、擬似的な光を作りあげるのだが、「DOOMエンジン」ではそういった効果を完全に排除している。完全な闇の存在、明かりをつけるという行為そのものが環境に直接的な影響を与えるというゲーム世界、そして、光にたくみに反応する敵A.Iなど、それぞれがプレイ中の臨場感を向上させる要素となっている。


◆恐怖をよりリアルに--法線マッピングによる質感

 「光と闇」の演出が見事でもキャラクターそのものが緻密に作られていなければ光の演出も意味がない。『D3』では敵キャラはもちろん、通常のオブジェクトにも法線マッピングが施されている。これは、ポリゴンの表示数にどうしても制限が出てしまうインタラクティブなリアルタイムレンダリングにおいて、ポリゴン数を低くしながらも、あたかもポリゴン数が非常に高いグラフィックを表示しているようなビジュアルを作り出す技術だ。APIにはOpenGLを採用し、ハイレベルシェーダー言語に対応するため法線マッピングを形成するプロセスで、まったく同じキャラクターで高ポリゴンバージョンから法線マップを作り上げることが可能となった。

 したがって『D3』においても、ゲームデモに現れた敵キャラでリアルタイムにレンダリングがされているものは1,000〜1,500ポリゴンしかないが、テクスチャーに凹凸情報を法線ベクトル化して、最終的な陰影処理をピクセル単位で行うのに参照している高ポリゴンのキャラは、一体で十数万ポリゴンはくだらない。この技術は一般的なキャラだけではなくノンインタラクティブなオブジェクトについても使われている。この技術に合わせ、前述のユニバーサル・ナチュラル・ライティング効果、そしてソフトシャドウを含むダイナミックなシャドウ効果の存在が、ぬめりのある有機的な空間を作り上げることに成功している。 


◆恐怖を具現化するリアルなサウンド

 当然ビジュアルだけではなく、音にも最新の注意が払われている。ドルビーサラウンドを採用し、5.1チャンネルの音源を揃えるのは当然だが、音源のデザインが強烈だ。魔物の慟哭や、人間のうなり声など様々な環境音が四方から響くようになっている。うめき声の存在は暗闇の多いゲーム画面の中で更なる恐怖を実感させ、圧倒的に不利な状況下での戦いを直前に控えるという緊張感をひたすら際立たせる。

 ビジュアル面での先が見えない恐怖と、音源が醸し出す未来の戦慄を予感させるこれらの効果が一体化し、プレイヤーを極限まで追い込もうとしているのだ。まさに、『D3』開発の本来のコンセプトといえる「部屋を真っ暗にし、ボリューム全開でプレイする」のに最適化された最先端技術の集大成がこのゲームに存在する。

『DOOM3』から、法線マッピングに達成されたクリーチャーの質感に注目 光と闇の恐怖にサラウンドサウンドが戦慄さを拡張する。PC版の発売は今年8月の予定
(C) 2003 id Software Inc. All rights reserved.
※ 画像はクリックで拡大(以下同様)
アクティビジョン内に設置された『DOOM3』シアター。この中でプレイアブルデモを遊ぶことができた

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