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■ロシア vs カナダ 宿命の対決

 決勝リーグに進んだロシアは、1回戦でポルトガルを13対2で下し、2回戦でベルギーを13対1で退け、3回戦のイギリスとは13対11という接戦となり、4回戦で同じリーグを勝ち上がったカナダを13対9で破った。そのカナダの成績は、1回戦でチェコと16対14の大激戦を経験し、2回戦はドイツに17対7で勝利、3回戦のフランスとは14対10の好勝負。4回戦でロシアに敗れると敗者側トーナメント(敗者復活戦)に回り、そこで勝ち残ってきたドイツともう一度戦って16対12で決勝進出を決めた。ロシアの対戦相手の成績を見る限り、もし日本が決勝に進出したとしても善戦したに違いない。

 約600の観客席がすべて埋まり、『ハーフライフ:カウンターストライク』の世界一の座を争う勝負が始まった。ロシア vs カナダのカードは今大会通算で3回目。ズラリと並んだコクピットを、世界中の選手達が観客として見つめている。インターネット上のファン投票ではカナダが66.7%の支持。期待に応えられるのか。

写真14 写真15
右下がロシアチーム、左下がカナダチーム。戦う選手を気遣い、試合中はカメラのフラッシュ発光が禁止された 大会運営スタッフのコンピュータ群。不正をチェックしたり、試合のログを保存したり、Webサイトに速報を掲載するために使われている

 『ハーフライフ:カウンターストライク』は、テロリスト部隊と対テロリスト部隊の2チームに分かれて戦うシューティングゲームだ。相手チームを全滅させれば勝ち、または、テロリスト部隊が目的を達成すれば勝ち、対テロリスト部隊がテロリストの目的を妨害すれば勝ち、というルールだ。決勝戦に使われたマップは「de_dust2」で、2つのチームはマップの両端からゲームを開始する。テロリストの目的は「C4」という時限爆弾を設置すること。設置場所は対テロリスト陣営のそばにある2つのポイントの1つ。テロリストはどちらかのポイントを選択し、対テロリストに悟られないように部隊を侵入させる。反対に、対テロリストは2つの地点をテロリストから守る。戦力を分けて配置するか、どちらか一方に集中させるか、チームリーダーの采配も試される。

 写真5
ストリーミング中継された試合の模様。バナーには有名企業のロゴが表示されている。大会スポンサーとして、IT、スポーツ用品、飲料メーカーが参加している
※クリックで拡大表示

 勝負は24ラウンド。前後半12ラウンドでテロリスト役と対テロリスト役を交代する。前半はロシアがテロリスト役となった。その第一試合から観客が沸く。カナダの選手がロシアチームの最後の1人をナイフの一撃で仕留めたからだ。これはとても貴重な場面といえる。このゲームにはライフル系の銃、ハンドガン系の銃、手榴弾、爆弾、ナイフなどの武器がたくさん登場する。ゲームはたいてい、スモークや手榴弾での威嚇やおとり爆発で始まり、長射程の銃で遠距離から撃ち合い、最後に接近戦で決着がつく。武器はラウンドの初めに各プレイヤーが購入する決まりで、ラウンドが進むほど資金が増えていく。最初のラウンドは資金が少ないので、ほとんどのプレイヤーがハンドガンとナイフで戦うのだ。この第一試合、両者はハンドガンにもかかわらず、遠距離の射撃を次々に成功させた。両チームとも最後の一人ずつになったとき、お互いに弾切れとなってしまった。このとき、ロシアの選手はリロードして次の射撃に備えようとした。しかし、カナダの選手はとっさにナイフに持ち替えて、リロード中の相手をひと刺し。そのようすは、映画に登場する冷酷なテロリストそのものだった。

 このあとゲームはカナダが優勢。ロシアが僅差で追うものの、カナダがリードしたまま前半を終了した。DeadlyDriveのメンバーが言うように、敵の姿が見えた瞬間に死んでいる。それがスクリーンに投影された選手の画面でもわかる。両者とも射撃の腕は一級品で甲乙つけがたい。勝敗の分け目は作戦とチームワークだ。日本予選と同様、選手達はヘッドホンとマイクを使っている。チーム内の意思伝達はチャットではなく音声による。チームリーダーが指示する声は相手チームには聞かれたくないものだ。しかし、会場の喧騒とテレビアナウンサーの声にかき消されてしまうのか、あるいは興奮しているのか、双方のチームリーダーの声が観客席にまで届く。お互いの母国語が違うので悟られることはない。しかし、ライバル争いがエスカレートすれば、相手の言語を理解する選手を入れて、情報戦を仕掛けるチームが出るかもしれない。

 後半はカナダがテロリスト、ロシアが対テロリストとなる。カナダ優勢でスタートしたが、ロシアの守備は堅い。スクリーンは2つあり、片方に戦場の地図が投影されている。カナダは2つある爆破ポイントへ近づくために、片方に一団となって進む作戦、部隊を2つに分ける作戦をランダムに使い分けるが、ロシア部隊の守備に阻まれた。ロシアは爆破ポイントに1人ずつ歩哨を置き、侵攻ルートを見張っている。他のメンバーは双方のポイントを結ぶ地点で待機。歩哨が合図すればすぐに駆けつけるという体勢だ。

 後半の名場面は、カナダチームの大胆な陽動作戦だった。1人を除き残り全員で左の爆破地点を目指す。ロシアはただちに全部隊を左に集中させて、派手な銃撃戦が始まった。しかし、1人右側に侵入したカナダメンバーが実は本命の爆破要員。遠くの銃声を聞きながら、スイスイと右側の爆破地点に突入する。このときまで右側は無人。しかし、この作戦もロシアに阻止された。勘の良いロシアメンバーが右側に戻った。カナダチームの集団を見て、とっさに人数を数え、1人足りないことに気付いたのだろうか。もしそうだとすれば、ロシアチームの洞察力は並み並みならぬものがある。

 ロシアの守りは堅く、この名場面のあとに逆転。優勝の栄冠はロシアチームに輝いた。ロシアチームの完璧な守りを見て、私は先週のチェチェン人テロ事件を思い出した。ロシアには本物のテロ対策要員がいる。テロリストが身近な国は強いのだろうか。

写真17 写真18
決勝に敗れたカナダチーム。昨年優勝したカナダチームとは違う選手たちだ。選手年齢が若く、入れ替わりが激しい 勝利に沸くロシアチームに報道陣が押し寄せる。世界のメディアが集結したが、日本からの取材はとても少ない

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