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みずほコーポレート銀行産業調査部「みずほ産業調査」
通信事業者・CATV事業者によるトリプルプレイの展望と課題
〜通信・放送インフラ融合のインパクト〜(4/4)
「みずほ産業調査 Vol.19 2005年12月」より
※本レポートは2005年12月に執筆されました
IV.結びに代えて
以上、『トリプルプレイ』を巡る論点の整理を通じ、その担い手である通信事業者、CATV事業者の展望と課題を簡潔にみてきた。端的には、過去、業態(本件で言えば有線放送事業と通信事業)を隔ててきた有形無形の障壁が一定の時間をかけながら着実に低下していく訳で、これは取りも直さず他の一般的な業界では当たり前の競争が実現していくことに他ならない。一般に、事業環境に大きな変化が生じる場合、変化を止める努力をする(Stop)、変化に反応する(React)、自ら変化を先導する(Go ahead of the curve)の3つの選択肢が存在するが、過去の歴史に鑑みても勝ち残りの戦略は、自ら変化を先導する以外にありえない。当たり前ではあるが、足許の環境に甘んじることなく、長期的な視野で自らの存在意義を見つめ直しつつ、差別化を図っていくことが、デジタル・ブロードバンド時代のアクセス事業者としてのポジション確保に向けた条件であると言えよう。特に、CATV事業者については、過去の特恵的なポジションの維持に汲々とするのではなく、現時点におけるその有利なポジションを如何に将来の競争環境における生き残りに繋げていくのか、発想の転換が求められている。
一言で言えば、『トリプルプレイ』はインフラ事業者による有料ベースの顧客囲い込みモデルの延長であり、通信事業者とCATV事業者の競争はあくまでもこの閉じた世界の話である。コンシューマー向け情報通信事業を鳥瞰すれば、伝送手段は携帯電話も含め多様化していく中、長期的に価値はバリューチェーンの中でより希少性の高い上位のレイヤーへ逃げていく方向にある訳で、番組制作事業者、番組提供事業者、スカイパーフェクトコミュニケーションズの様なプラットフォーム事業者との関係も、将来に亘り固定的なものではありえない。また、更に一歩引いて見れば、通信事業者やCATV事業者による有料ベースの顧客囲い込みモデルは、急速に視聴者基盤を拡大しているPCベースの無料放送サービス(例えば、UsenのGyaoやソフトバンク/Yahoo! JapanによるTV Bank*1)に代表される他の様々な事業モデルとの競合にも直面している。勿論、こうした広告収入を前提とした無料モデルが必ずしも全てを席巻する訳ではないが、ユーザーにとってサービスが有料であることの意味をより重いものとさせる可能性については認識しておく必要があろう。
こうした観点からも、トリプルプレイを巡る競争が、通信事業者、CATV事業者の間で、サービス、コンテンツ、マーケティングの面で建設的なかたちで進展し、ブロードバンドアクセス市場、有料放送市場の健全な成長に資することを期待してこのレポートを締め括りたい。
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*1:収入モデルとしては、現時点では無料広告モデルと有料課金モデルの双方を併用(Yahoo!動画)。
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(情報通信チーム 浦辺 紀行)
【資料1】 有線役務利用放送サービスとスカパー、CATVの主要なチャンネルラインアップ比較
<参考文献>
インプレス 「インターネットマガジン」各号
経済産業省 「コンテンツ産業の現状と課題」
国際通信経済研究所 「ワールド・テレコム・アップデート」各号
情報通信総合研究所 「InfoCom Review」各号
総務省 「ケーブルテレビの現状」各版
総務省 「デジタルコンテンツの著作権等の保護とネットワーク流通の円滑化に向けて−デジタルコンテンツのネットワーク流通市場形成に向けた研究会取りまとめ」
総務省 「メディア・ソフト制作及び流通の実態」
サテマガ・ビーアイ 「ケーブル年鑑」各年度版
電通総研 「情報メディア白書」各年版
日経BP社 「日経コミュニケーション」各号
日経BP社 「日経ニューメディア」各号
日本政策投資銀行 「ケーブルテレビ事業の現状」各年度版
野村総合研究所 「これから情報通信市場で何が起こるのか−IT市場ナビゲーター2005年度版」
みずほ産業調査 2005 No.15 「コンテンツ産業の育成と有料放送市場−映像コンテンツ流通市場の発展に資する流通市場を構築するために」
CNET Japan各種記事、ブログ(http://japan.cnet.com/)
Gartner, Inc. 「An Introduction to IPTV (Television via Internet Protocol)」
Gartner, Inc. 「Italy: e.Biscom’s Fastweb Case Study」
National Cable Television Associationホームページ(http://www.ntca.com/)
Standard & Poor’s 「Industry Surveys: Broadcasting, Cable & Satellite」
【インターネット時代のメディアビジネス】
梶村 徹 [かじむら とおる] ポラリス・プリンシパル・ファイナンス アソシエイト(執筆当時はみずほコーポレート銀行産業調査部情報通信チームインダストリーアナリスト)
東京大学工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科修了。
日本興業銀行、みずほコーポレート銀行産業調査部(情報通信分野を担当、テレコム・メディア・ネットの融合分野を中心に調査、M&A案件発掘等の業務に従事)を経て、2006年より現職。著作に[インターネット時代のメディアビジネス](みずほ産業調査No.19 2005年12月)等、多数。
【通信事業者・CATV事業者によるトリプルプレイの展望と課題】
浦辺 紀行 [うらべ のりゆき] みずほコーポレート銀行産業調査部情報通信チーム調査役
慶応大学経済学部卒業。ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院修士(MBA with Distinction)。
日本興業銀行、日本銀行(出向)を経て2003年より現職、通信・メディア分野のリサーチ及びアドバイザリー業務を担当。主な著作に「通信事業者・CATV事業者によるトリプルプレイの展望と課題」(みずほ産業調査No.19 2005年12月)、「成長するモバイル市場とメディア価値」(宣伝会議 2006年4月1日号)。
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