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コラム −みずほコーポレート銀行産業調査部−



IPマルチキャスト方式は、現時点では放送サービスとしての訴求力で見劣り

 これらの有線役務放送サービスは、その伝送方法の差異によって、(1)IPマルチキャスト方式、(2)標準テレビジョン(放送波再送信)方式の二つに大分される。IPマルチキャスト方式は、放送波をIPパケットで伝送する方式であり、ソフトバンクBB、KDDI、オンラインティーヴィ等が当該方式を採用している。常時接続が既になされている場合、必要な設備投資がSTB等に限定されるメリットがあるものの、現時点では著作権処理上の問題や不正利用に対する懸念から、地上波・BS放送の再送信も認められていないことに加え、多チャンネル/VODサービスにおいても各ジャンルにおける人気チャンネルを取り込めておらず、加入者数も限定的なものに留まっている(【資料1】参照)。また、現時点でのインフラ構成、圧縮技術を前提とした場合、同時に配信できるチャンネル数には一定の限界があり、一世帯で同時に多数のTVを視聴することは出来ないという制約もある。サービスエリア展開についても、事業者毎の格差はあるものの、現段階では総じて限定的な運用がなされている場合が多い。

再送信方式は既存サービスと同等の内容を実現

 一方、標準テレビジョン(放送波再送信)方式は、放送と通信をネットワーク上で分離するためのコストがかかる一方で、著作権処理の面でも放送サービスとして取り扱われることから(有線放送権)、概ね既存サービスと同等のコンテンツ内容を実現している。例えば、関西電力系のケイ・キャット(旧京阪ケーブルテレビ)は光ファイバを2芯敷設し、物理的に放送と通信を分離する方式を採用する一方で、スカイパーフェクTVの100%子会社であるオプティキャストはWDM(波長多重方式)を採用している。両社とも従来は採算性を見極める観点からエリア拡大には慎重であったが、2005年入り後は積極的なエリア展開に転じている*4。

*4:例えば、スカイパーフェクトコミュニケーションズは2005年1月に発表した中期経営計画において、2006年度までに主要8大都市圏において、ピカパーのサービス可能世帯を1,350万(含む戸建て向け)に拡大する方針を公表している。また、ケイ・オプティコムは、2005年6月に傘下のケイ・キャットを通じて提供するeo-TVサービスの提供エリアを108市町村(FTTHカバーエリア<近畿2府4県の92%>の71%)に倍増させている。


 3.通信インフラを用いた映像コンテンツ流通を巡る著作権処理上の課題と展望*5
 

IPマルチキャスト方式の著作権処理上の課題

 議論が混乱しがちである、通信インフラを用いた映像コンテンツの流通を巡る著作権処理上の問題点は、(1)IPマルチキャスト方式による有線役務利用放送上の「放送サービス」の著作権法上の取扱いが不明確であること、(2)映像コンテンツのネット配信(著作権法上、自動公衆送信権が生じるもの、VODサービスはこれに該当)における著作権処理のハードルが高いこと、の二つに整理される。

IPマルチキャスト方式の有線役務利用放送も著作権法上「放送」として認められる方向性

 前者(1)は、IPマルチキャスト方式の放送サービスが電気通信役務利用放送法上の取扱いと無関係に『公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う送信形態ではなく、著作権法上の「放送等」には該当しない』との解釈が一般的に援用され、著作権法上の取扱いが明確になっていない問題である。この点について、情報通信審議会は2005年7月29日に総務省に対する『地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政が果すべき役割』に関する第二次中間答申の中で、一定の技術的な要件*6を充足するIPインフラを用いた地上波再送信の実現(2006年よりSD品質にて実験を開始、2008年中にHD品質で全国展開)させる方針を明示した上で、IPインフラを用いて放送サービスを行う場合の著作権法上の取扱いについても政府は早急に明確化を図るべきとしており*7、比較的早期にIPマルチキャスト方式の役務利用放送サービスが既存放送サービスと同等のコンテンツを実現出来る可能性が高まってきている。また、欧米におけるIPTVの普及拡大の兆しやこれに伴う事実上の技術標準化の進展*8も、こうした動きを後押しする要因となるであろう。

*5:有線役務利用放送における著作権処理については、情報通信総合研究所『有線役務利用放送を巡る著作権問題』(Infocom Review 2004年第34号)が詳しい。

*6:IPインフラが地上デジタル放送の伝送路の一つとして認められる条件として、(1)IPインフラを用いた地上デジタル放送の送信が当該放送対象地域に限定されることの技術的担保が得られていること、(2)放送対象地域の全チャンネル伝送も含め送信される地上デジタル放送の内容及び品質の両面からその同一性を保持するための技術的担保が得られていること、(3)地上デジタル放送と同様に著作権保護を実現するため、DRM技術その他の技術的担保が得られていることの3つの条件を提示。

*7:当該答申において、具体的な手続内容、実施期限については明記されていない。具体的な手続きとしては、(1)著作権法そのものの改正、(2)著作権法の解釈明確化(変更)が想定されるが、何れの手続を採るにせよ、一義的には、文化庁の諮問を受けた、文化審議会における審議、答申を経て決定されることになる。

*8:米国2社は、セットトップボックス(IP-STB)の仕様を既に確定し、数十万台単位で発注がなされている模様であり、米国市場においては、比較的近い将来に価格が下落していく可能性がある。現在、これらの海外通信事業者によって検討されているIP-STBの多くにはマイクロソフト社のミドルウエアが搭載される予定であり、事実上の標準仕様となっていく可能性もある。

【図表II-4】 ブロードバンドアクセスを利用した有線役務放送サービスの概要




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