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みずほコーポレート銀行産業調査部「みずほ産業調査」
通信事業者・CATV事業者によるトリプルプレイの展望と課題
〜通信・放送インフラ融合のインパクト〜(1/4)
「みずほ産業調査 Vol.19 2005年12月」より
※本レポートは2005年12月に執筆されました
<要旨>
現時点までの『通信と放送の融合』を、簡潔にまとめるとすれば、『通信と放送のインフラ融合』と『メディアとしてのインターネットの台頭』ということになろう。前者の『通信と放送のインフラ融合』については、CS放送と有線テレビジョン放送(CATV)について、2002年4月の電気通信役務利用放送法の施行によって、既に3年前に実現している。
こうした通信と放送のインフラ融合を受け、大手通信事業者は相次いで有料放送サービスに参入し(含む提携ベース)、トリプルプレイ(ブロードバンドアクセス、プライマリ電話、有料放送)を実現している。有料放送サービスについては、著作権処理上の問題もあり、これまでのところ裾野の広がりを持つには至っていないが、情報通信審議会による『地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政が果すべき役割』に関する第二次答申という追い風もあり、本格的な普及拡大に向けた大きな転換点にあるように見受けられる。
大手通信事業者は、短期的には、トリプルプレイのバンドルを通じた料金メリットによる差別化を訴求する方向にあるが、長期的、より本質的には、コンテンツ・サービス面での差別化を実現していく必要があろう。コンテンツの面では、地上波キー局が対応出来ないものの相応の有料需要が想定されるコンテンツや、他の伝送手段では採算がとれないニッチコンテンツについて、一定の事業機会が見込まれるが、製作を中心にコンテンツホルダーに資金が廻る仕組みを構築していくことが重要と思われる。また、サービス面での差別化についてはIPベース、FMC(Fixed
Mobile Convergence)といったキャリアならではのサービスが切り口となろう。取り分け、携帯端末向け映像コンテンツ配信は、真の意味でのFMCを考える上で、今後の動向が注目される領域である。
元祖トリプルプレイとも言うべきCATV事業者は、上記の大手通信事業者との競争激化に加え、地上波放送のデジタル化に伴う電波障害の減少、唯一の再送信メディアとしての地位喪失といった事業環境の変化に直面しつつある。こうした事業環境の変化に対し、一部の有力CATV事業者は、営業を中心とした地域密着、事業規模の拡大やサービス高度化等を通じて、着実に対応を進めている。2002年以降一旦は沈静化した事業統合・再編の動きも、大企業を株主とする都市型CATVを中心に活発化の兆しが見られるものの、現時点では全国的な広がりを持つには至っていない。
CATV事業者が有する強みは、既に顧客宅まで実際に繋がり使用されているアクセス回線を保有している点、地域密着型の営業・サポート体制を有している点に尽きるが、こうした強み−特に後者−が、実際に強みとなっているかは個別事業者毎に改めて検証されるべき問題である。今後のサービス高度化やアクセスインフラ間競争を考慮すれば、長期的には、大手通信事業者とインフラ事業者として伍していけるMSO(都市部中心)と地域における営業力/地公体との強力な連携としたサービスアグリゲーター(地方中心)の二つの類型に収斂していくものと思われ、事業統合や通信事業者との連携についても、現時点での顧客基盤を最大限に活用する勝ち残りの積極策として、前向きに検討されるべきであると考える。
I.はじめに
『放送と通信のインフラ融合』と、『メディアとしてのインターネットの台頭』の進展
『放送と通信の融合』というフレーズが過剰なまでにメディアを騒がすようになって久しい。こうした議論の台頭の背景を、一言でいえば、新たなテクノロジーの登場・発展により、コンテンツのデジタル化、通信インフラのブロードバンド化が並行して進展し、着実にその利用者基盤を広げつつある中で、既存業態の枠組みに囚われない新たなコンテンツ伝送手段(=メディア)としてのインターネットが台頭しつつある、ということになるであろう。従来の我が国の規制の枠組みは、総じて、既存メディアについて業態別に、コンテンツ製作・編成、伝送手段(インフラ)を垂直統合的に束ねるかたちで運営されてきた訳であるが、ブロードバンドアクセスの急速な普及は、インフラ面の障壁を技術的に消失させる一方で、インターネットのメディアとしての台頭を促し、今後もテキスト・静止画ベースから動画を含めたリッチコンテンツにその領域を拡大していくことでそのメディア価値向上のドライバーとなっていくことが予想される。
『放送と通信のインフラ融合』は電気通信役務利用放送法の施行で実現済
これらの議論の言わばスタートラインである、インフラ規制の観点から見た放送と通信の融合は、CS放送及び有線テレビジョン放送(CATV)の分野については、2002年4月の電気通信役務利用放送法の施行により既に実現している。電気通信役務利用放送法は、従来、放送法及び有線テレビジョン放送法によって厳しく規制されていたCS放送及び有線テレビジョン放送事業者に課されてきた設備要件を大きく緩和し、通信事業者が提供する電気通信役務を利用して放送を行うことを制度化したものであり、サービス提供者は、一定の適格要件さえ充足すれば登録を行うことで参入が可能となった。
斯かる状況下、我が国においても、大手通信事業者が相次いで有料放送サービスに参入し、ブロードバンド接続、電話、有料放送サービスをバンドルした『トリプルプレイ』を実現しつつあるが、現時点では有料放送サービスにおいては大きな裾野の広がりを持つには至っていない。しかしながら、FTTHの普及本格化に加え、情報通信審議会による『地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政が果すべき役割』に関する第二次中間答申(2005年7月29日)という追い風もあり、足許は本格的な普及に向けた大きな転換点にあるように見受けられる。
また、海外市場においても、欧州ではオールIPベースで有料放送、ブロードバンド接続、電話サービスを提供する事業者が登場する等、『トリプルプレイ』が加入者獲得、ARPU向上の手段として大手通信事業者の大きな注目を集めている。最近では、米国の二大通信事業者であるSBC コミュニケーションズ(現AT&T)とベライゾンが有料放送事業への参入を発表したことは記憶に新しい。
一方、元祖『トリプルプレイ』と言うべきCATV事業者に目を転じると、我が国最大のMSO(Multiple System Operator)であるジュピター・テレコム(以下J:COM)は我が国初の『トリプルプレイ』を5年前に実現しており、先進的なCATV事業者の中には、サービス高度化を着実に進める等、こうした大手通信事業者を迎え撃つ動きが着実に進展している。また、2002年以降、一旦は沈静化しつつあった事業者再編の動きについても、都市部の大企業を株主とする一部事業者については、大手通信事業者を巻き込むかたちで、活発化する兆しが見られるものの、未だ全国的な広がりを持つには至っていない。
本稿においては、『通信と放送の融合』議論の中でともすれば議論が混乱しがちな、我が国の『トリプルプレイ』の展望と課題について論点整理を行った上で、その担い手である通信事業者、CATV事業者にとってのインプリケーション導出を試みることとしたい。
(続く)
【インターネット時代のメディアビジネス】
梶村 徹 [かじむら とおる] ポラリス・プリンシパル・ファイナンス アソシエイト(執筆当時はみずほコーポレート銀行産業調査部情報通信チームインダストリーアナリスト)
東京大学工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科修了。
日本興業銀行、みずほコーポレート銀行産業調査部(情報通信分野を担当、テレコム・メディア・ネットの融合分野を中心に調査、M&A案件発掘等の業務に従事)を経て、2006年より現職。著作に[インターネット時代のメディアビジネス](みずほ産業調査No.19 2005年12月)等、多数。
【通信事業者・CATV事業者によるトリプルプレイの展望と課題】
浦辺 紀行 [うらべ のりゆき] みずほコーポレート銀行産業調査部情報通信チーム調査役
慶応大学経済学部卒業。ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院修士(MBA with Distinction)。
日本興業銀行、日本銀行(出向)を経て2003年より現職、通信・メディア分野のリサーチ及びアドバイザリー業務を担当。主な著作に「通信事業者・CATV事業者によるトリプルプレイの展望と課題」(みずほ産業調査No.19 2005年12月)、「成長するモバイル市場とメディア価値」(宣伝会議 2006年4月1日号)。
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