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増田:次世代ディスクの規格が分かれてしまった以上、ユーザーの立場からすると、HD DVDとBlu-rayのマルチドライブが欲しく思えますが、技術的には実現可能でしょうか?
佐藤氏:DVD-系とDVD+系のメディアは、ディスク構造やレンズの開口率が同じでしたので、光学系を共用できるなどマルチ化がしやすかったのです。ところがHD DVDとBlu-rayではディスク構造や容量が違うので、読み書きのための光学系を別々に用意する必要が出てきます。Blu-ray対応にかかるコストが高くつくので、マルチドライブの製品化は当面難しいと思います。
●H.264エンコーダーは大きなブレイクスルー
増田:H.264などのエンコーダーの進捗状況をお聞かせください。
佐藤氏:先ほど、HD DVDへの移行はセンセーショナルではない、と申しましたが、エンコーダーの進歩は大きなブレイクスルーだと思います。H.264などのエンコーダーは、映画ディスクを制作するスタジオレベルでは、とても高い性能が出ていて、期待した以上に良い画質が得られています。
増田:H.264でエンコードした映像は、どのように高画質なのでしょうか?
佐藤氏:今までのMPEG2エンコードだと、圧縮ノイズを消す必要があるため、ノイズリダクションが強めで、アルコールで拭いたようなCG的な映像になりがちでした。これに対してH.264では、込み入ったエリアだけにビットレートを振り分けられますので、フィルムの粒状感や、霧や雨で煙った風景もそのまま伝えられる、というナチュラルでニュアンスに溢れた映像にエンコードできます。H.264はエンコード時のパラメーターが多くて、設定を追い込んでいけばさらに良い映像になるでしょう。
増田:先日、HD DVDのソフト「夜桜」と海外版「オペラ座の怪人」を視聴しましたが、確かに良いエンコードだと感じました。桜の微妙な色合いや夜の透明感、人肌のグラデーションに、DVDにはない繊細で自然なリアリティが感じられました。デジタル表現が進化すると、ぎごちなさを超えて、多階調のアナログ的な自然さが出てきますね。次世代の光ディスクは、DVDはもちろんですが、HD放送も超える超高画質を実現してこそ価値があると思います。視聴してそれが確認できたと実感しました。
佐藤氏:そう感じていただけたら幸いです。ポニーキャニオンの「夜桜」は、H.264とMPEG2のツインフォーマットでエンコードした作品で、特にH.264はトップレベルのHD映像に仕上がっていると思っています。
●次世代ディスクはネットなどと柔軟に連携
増田:現在のネットワークのバンド幅と速度からすると、ネット時代になるとディスクメディアは不要になる、というのは、いささか極論だと思いますが、光ディスクの今後の役割をどうお考えですか?
佐藤氏:確かに現状のネットインフラからすると、リアルタイムのHD映像配信は難しいでしょう。そうした意味でディスクメディアの存在価値は、まだ大きいと思います。ただ、データのポータビリティの広がり、という点では大きく変わってきていますね。例えば、店舗に映画などのパッケージを陳列するのではなく、キオスクのような小店舗にデータだけを置いて、HD DVDの記録ディスクにダビングして販売する、といった販売形態も考えられます。
増田:そうしたデータベンダーでは、物としての商品価値をどう出せるか?がポイントかもしれませんね。例えば、高品位なプリンタブルディスクに好みのラベルを印刷してダビングできる、というような楽しさが欲しく思えます。データ販売によって、コンビニなどでも膨大なソフトが選べるのは便利だし、価格も安くなるとユーザーに歓迎されると思います。
佐藤氏:それはおもしろいアイデアですね。ディスクメディアは、今後もデータの入れ物としての役割は担うと思いますが、柔軟に各種のメディアと連携してもよいのではないかと考えています。
増田:似た発想ですが、ぜひ実現してほしい機能があります。携帯音楽プレーヤーと同じ要領で、映画ディスクを暗号化してレコーダーのハードディスクにダビング可能にしてほしいと思います。さもないと映像パッケージメディアは、使い勝手で時代遅れになってしまうでしょう。ハードディスクにコンテンツを溜め込んで自在に視聴する、という使いこなしが一般化していますからね。といっても、これはコンテンツメーカーの裁量次第ともいえますが。
佐藤氏:ネットワークの時代になって、コンテンツメーカーの発想も大きく変わってきています。これからは、映画などのコンテンツをパッケージに閉じこめるだけでなく、プロテクトした上で、アウトドアで持ち歩けたり、おっしゃるようにハードディスクにダビング可能にしたり、という新しいアイデアも考えられると思います。
増田:新しい可能性が感じられるお話をありがとうございました。HD DVDの今後の展開に期待しています。
(増田和夫)
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■著者紹介
増田和夫(ますだ かずお)
先進分野に強いオーディオ&ビジュアル評論家。映像と音に関わるモノはすべて興味アリ。といっても「モノとにらめっこをするのではなく、モノの背景にあるコンセプトと開発者のメッセージを伝えたい」というのがモットーで、インタビューなどのジャーナリスティックな記事もこなす。デジタルAV、次世代メディアを始め、CGやオーサリングソフトにも強い。デジカメフォトグラファーでもある。録画機は1970年代から熱中し、エアチェック&AVの道に心酔。PC歴も豊富で、最初に入れ込んだパソコンはApple IIというPC歴20年以上のベテラン。
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