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第3回:ブロードバンドタワー「探偵事務所5」 〜シリーズ物でネットシネマに固定客を呼ぶ〜
2006年5月9日
ブロードバンドタワー(BBタワー)は、映画監督の林海象が企画・原案・総合プロデュースと一部監督を務めるネットシネマ「探偵事務所5」(全26話)シリーズを配信中だ。
林海象監督は、86年のデビュー作「夢みるように眠りたい」以来、90年代に手がけた「私立探偵 濱マイク」(主演・永瀬正敏)など一貫して「探偵映画」を追求し続けてきた。今回の企画はその濱マイク・シリーズ終了から、監督が10年間あたため続けてきた企画である。
また初のシリーズ物を手がけるブロードバンドタワーにとっても、いかにネットシネマをヒットさせるか? をかけた戦略の転換点でもある。今までにない独特の脚本作りやディテールへのこだわり、メディアミックス戦略など、「探偵事務所5」には新しいネットシネマ作りのヒントが散りばめられている。
ではこの企画はどんなきっかけで始まり、何を目指しているのか? 制作の過程や企画意図も含め、舞台裏をのぞいてみよう。
▲ブロードバンドタワー大和田廣樹社長(右)と脚本家の徳永富彦氏(左)
「探偵事務所5」は、川崎にある探偵事務所が舞台だ。事務所には100人の探偵がいるが、彼らに名前はない。そのかわり500番から599番まで、「5」で始まる3ケタの番号がつけられている。
毎回、キャラクターの違う探偵が主人公になり、あるときはシリアスな人生の物語が、またあるときはコメディ調と、切り口をガラリと変えたストーリーが展開する。一本調子に陥らない、引き出しの多さが魅力のひとつだ。
宍戸錠や佐野史郎など、林海象監督と古くからつきあいのある俳優陣を核に、柏原収史ら若手俳優がからむ。制作スタッフも林海象監督作品でおなじみのメンバーが集まり、いわば「林組」の集大成になる作品である。
もうひとつの特徴は、集客面の相乗効果や認知度アップを狙ったメディアミックス戦略だ。
まずネットシネマは2005年9月から1年間、隔週更新で無料公開が始まった。現在、全26話のうち約半数まで配信されている。一方、成宮寛貴が主演する同名の劇場映画(エイベックス・エンタテインメント製作)も2005年11月に封切られた。
また2006年3月にはDVD発売、続く4月15日には集英社の「ビジネスジャンプ」で、同名のコミックス連載がスタートしたばかりだ。これらの複合的な企画全体を、制作サイドでは「D-5 プロジェクト」と呼んでいる。
プロデュースしたブロードバンドタワーの大和田廣樹社長によれば、企画の発端は「どうすればネットシネマに固定客を呼び込めるか?」だった。大和田社長はいう。
「ブロードバンドタワーがネットシネマを始めたのは、2003年10月です。今まで100本近い作品を作ってきました。当初は、フラっと動画を見に来る層に支えられていたんです。何かやってるかな? となんとなく見に来た人が、ああ、このタレントさんを知ってるから見てみようか? というパターンでした。ところが、2005年頃からブロードバンドによる映像配信があちこちで始まったんですよ」
そういう状況のなかで、たくさんの方に見てもらうためにはそれまでの「なんとなく視聴型」では弱い。もっと見る側に強くアピールする方法はないか? 「なんとなく」ではなく、「必ず見に来る」固定ファンを作るにはどうすればいいのか? その答えがシリーズ物だった。
「単発物には良し悪しがあり、視聴者の層にかなりのバラつきが出る。試写会をやればよくわかります。たとえばグラビアアイドルを出すと、若い男の子が来る。仮面ライダー系に出演していた俳優さんが出ると、お母さん方が子供さんを連れてたくさん押しかける。かと思えば室井佑月さんが脚本を書いたネットシネマ『プチ美人』シリーズでは、ブログの書き込みも明らかに女性が多いんです」
ネットシネマのテーマや出ている俳優、脚本家によって客層が違う。次回作でこれらの要素が変われば、彼らは「次」は見に来ない。単発物の宿命だ。だがシリーズ物ならごひいきの視聴者がつく。一定の固定ファンが続けて視聴する構造を作れる。
「対スポンサー的にも、固定客がいれば強いです。継続的にこれだけの数・層がいます、といえばスポンサーさんに対して訴求力がある。また戦略も立てやすい。たとえは若い女性が多ければ、化粧品メーカーさんに声をかける。子供が多いなら、おもちゃメーカーさんを狙う、と。ネットシネマにスポンサーさんを付けて行くには固定ファンが大切なんです。
で、そこに注力し、ストック型で視聴者を増やそうと考えました。ある固定層をベースにし、プロモーションをかけてさらに見る人を増やす。そのほうが媒体としての価値を付けやすいですから」
シリーズ物をやるなら何がいいか? 大和田社長は、以前からずっと構想を練っていた。偶然とはおもしろいものだ。実はちょうど濱マイク・シリーズを完結させた林海象監督も、「551」という番号の探偵が主人公の企画をあたため始めていた。
なんだかオリヒメとヒコボシみたいな話である。2人にとっての「7月7日」は、2004年の春だった。
「古畑シリーズや名探偵コナン、○○ワイド劇場のサスペンスなど、テレビでも探偵物はメジャーです。シリーズ化しても飽きない。それで探偵物をやれたらいいなと考えました。そう思っていたところに、2004年の春、林海象監督と知り合ったんです。
話すとすぐに盛り上がりました。それ以来、月曜の朝はずっと林海象監督宅でミーティングするようになった(笑)。ただ、そのときは今みたいに壮大な企画ではなかったんですよ」
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