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短く憶えやすいメールアドレスの価値
2006年10月20日
ますます増えていく迷惑メールに舌打ちをしながら、私は未だにspamフィルターをまともに使っていない。そのことについて語っても、このコラムの1回や2回はあっと言う間に過ぎてしまうところだが、今回はそれは脇に置いて、メールアドレスについて話をしたい。
かつて、と言ってもそんなに大昔ではない頃、短いメールアドレスを持っていることは、それだけで価値があることだった。友達や仕事相手などに「ここにメールで送ってください」などと言いながら、電話でメールアドレスを読み上げて伝えることが少なくなかった頃だ。文字数が少なければそういう場面で圧倒的に便利だったし、相手にも憶えてもらいやすかった。短いメールアドレスですね、というのは、誉め言葉に属するものだったのだ。
そしてまた、短いだけでなく、メールアドレスのうちユーザー名の部分、つまり@より前の部分が、何らかの意味のある単語だったり、その人をすぐに思い出せるようなニックネームだったりすることも、憶えやすさの点で重要だった。英語の名前ではRobertをBob、AnthonyをTonyとするような愛称が使われるが、日本人らしい名前ながら、その読みに引っかけてこうした英語風の愛称を使っている人もいて、周囲には憶えやすいと好評だった。
しかし、迷惑メールが増えて来たことによって、こうした「短く、憶えやすい」メールアドレスの価値は逆転した。ドメイン名の前に「ありがちな単語」をくっつける形でメールアドレスを自動生成し、メールを送信するということが広く行われるようになったからだ。とにかく送りつけてみて、先方のメールサーバーからエラーが返って来なければ存在するメールアドレスと見なせるというわけだ。
親しい人たちとのコミュニケーションを取りやすくするためだったはずのことが、今では悪意の第三者にとっての付け込みやすさにもなってしまう。厄介な時代だが、敷居を高くして防御するしかないのが現実なのだろう
■著者略歴
小笠原 陽介 (おがさわら ようすけ)
理系のココロを文系のコトバで語るフリーライター兼コラムニスト、時々ジャーナリスト。ITによる人間と社会の変容に問題関心を持ち、独特の視点から発言を続ける。
主な著書:『PC-98パワーアップ道場』1998,ソフトバンク
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