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ITは遠距離恋愛を助けるか
2006年7月10日
遠距離恋愛の話など書いてみようかと思っていたのだが、先日、ブレーンストーミングの名目で友人と酒を飲んでいた折に、そういうネタは似合わないからやめておけ、と珍しく真顔で忠告された。そういうことはせめて笑いながら言うくらいの思いやりはないのか、と切り返したところ、大体、今は連絡手段が多過ぎて、遠距離恋愛はドラマにもならないだろうに、と言われた。
確かに考えてみれば、かつての遠距離恋愛というものの困難さや悲劇性を引き立てていた主要な脇役は、リアルタイムな連絡手段の乏しさ、ないし高価さであった。昔は国内に電話会社が1つしか存在せず、したがって料金も1種類であり、それは距離に応じて通話料がどんどん高くなるものだった。だから遠距離になるほど連絡は取りにくくなり、恋愛の継続を困難にする要因にもなった。さらに国際通話ともなれば、それはそれはとんでもない金額が秒単位でかかってしまうものだったのだ。だから日常的にそれらは使えず、手紙という、安価だが手間と時間がかかる、もどかしい連絡手段に思いを託すしかなかった。
それが、今はどうだろう。国内なら無料通話ができるIP電話やインターネット電話がいくらでもあり、定額でしゃべり放題の携帯電話やPHSまである。国際通話もIP電話の普及によって非常に安くなっており、サービスの種類と相手国によっては、3分で10円以下という、市内通話並みの低料金で話せてしまう。手紙なんか書くまでもない。電話でなく、文章や写真を送りたいという時も、電子メールであっという間に、非常に安価に届けられる。そう考えてみると、この10数年で、世界はまた一回りも二回りも狭くなったのだろう。
まあそうは言っても、恋愛中の人たちだと、やっぱり直接会えないとダメなんじゃないの、と言ったら、友人はニヤリと笑って、今の若い人たちは、直接会える場所にいる時でも携帯メールで話してるよね、と言ったのだった。
■著者略歴
小笠原 陽介 (おがさわら ようすけ)
理系のココロを文系のコトバで語るフリーライター兼コラムニスト、時々ジャーナリスト。ITによる人間と社会の変容に問題関心を持ち、独特の視点から発言を続ける。
主な著書:『PC-98パワーアップ道場』1998,ソフトバンク
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