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最も確実な対策なんて言うな
2006年3月17日
相次ぐWinny(およびWinnyに感染するウイルス)による情報漏洩事件に業を煮やしたのか、ついに官房長官がWinnyを使わないよう国民に呼びかけたのは既報(*1)の通りだ。国の中枢たる閣僚が、特定のソフトウェアを名指ししてそんなことを言わざるを得ないというのが、異常な事態であることは間違いない。
ただ、会見で官房長官が述べたとされる「情報漏洩を防ぐ最も確実な対策は、パソコンでWinnyを使わないこと」という言葉は、厳密に言えば間違っている。すでにネット上でも意識の高い人たちがいくらでも指摘している通り、Winnyを使わないことで防げるのは「Winnyによる」情報漏洩だけだ。しかし、個人のPCを社内ネットワークにつないだり、業務に関わるデータを勝手に個人PCに移したりしている限り、Winnyを使わなくとも、他のウイルスなどによる情報漏洩は発生し得る。そういう前提条件を無視して「最も確実な対策」などという言葉を安易に使ってしまうのは、かえって真の原因を曖昧にする。官房長官その人は仕方がないとして、その原稿を書いたスタッフが、いかにセキュリティに対する基本的理解を欠いているかを示している。
情報セキュリティというのは、安全に運用するという意識と施策が上から下まで一貫していなけれぱ意味がない。そして個人にとっては、日常的な生活感覚のレベルから身に付けておくべきものなのだ。たとえば自動車を運転して路上に出れば、誰もが事故の加害者にも、被害者にもなり得るのと同じように、ネットワークに出て行く以上、誰もがウイルスに感染するという「被害者」にも、また情報を漏洩させる「加害者」にもなり得るのだ。
つまり今のネットワーク社会は、ろくな安全教育を受けていない無免許のドライバーたちが好き勝手に走り回っているようなものだ。事故が起きない方が不思議なのだ。私は9年以上前から、そうした問題について発言をして来た(*2、3)が、行政はずっと無策だった。
*1 [ニュース] 安倍官房長官、Winnyを使わないように国民に呼びかけ
http://www.rbbtoday.com/news/20060315/29607.html
*2 「道路行政と教習所の必要性」ソフトバンク刊“The Windows”1997年3月号「御託僕鐸」(4)
http://www.tsp.ne.jp/~oga/w970400y.html
*3 「安全教育の教程が必要」ソフトバンク パブリッシング刊“JAVA Developer”2004年1月号「可成庵邪話」第十八話
■著者略歴
小笠原 陽介 (おがさわら ようすけ)
理系のココロを文系のコトバで語るフリーライター兼コラムニスト、時々ジャーナリスト。ITによる人間と社会の変容に問題関心を持ち、独特の視点から発言を続ける。
主な著書:『PC-98パワーアップ道場』1998,ソフトバンク
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