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暑く平和な夏の朝に聴く
2005年8月9日
俄か平和主義者を気取るわけではないが、この文は8月6日の朝、元ちとせさんの歌う『死んだ女の子』をPCで繰り返し再生して聴きながら書いている。既報の通り、広島の原爆で亡くなった女の子が語るという設定で書かれた、トルコの社会派詩人の詩をもとに作られた楽曲をカバーしたもので、8月5日から15日まで、携帯電話用とPC用に限定で配信され、利益はユニセフに寄付されるという。
重いテーマで悲しい詩の反戦歌だが、告発調の政治色はない。外山雄三さんの曲と坂本龍一さんのアレンジ、元ちとせさんの歌声とが相俟って、楽曲としては非常に美しく仕上がっており、聴く者の心に強く訴えて来る。
こうした楽曲が、インターネットとPCとを通じて配信されるということは、大変意義のあることだと思う。実を言えば私は従来の音楽のネット配信にいささか不満があったので、あまり利用しなかった。だが、こうした試みに一口乗るためならば喜んで節を曲げ、デスクトップPCとノートPCで2回同じ曲を買った。
特定の楽曲をネット配信専用で提供する事例は、最近では珍しくないが、ネット限定とは言ってもCDに収録した曲のリミックス版、という場合が少なくない。そもそも多くの人に受け入れられる作品であれば、ことさらネットだけに限る必然性はないはずだ。この楽曲については、いかに重い内容の詩だとは言え、メジャーなアーティストによるカバーなのだから、CDで出ても良さそうに思える。しかし一般論として言うなら、仮にCDとして流通させられるほどの販売数が見込めない楽曲でも、ネット配信であれば世に問えるのだとすれば、アーティストの表現の可能性がネットによって拡大することであり、歓迎したい。
ただ、利益はユニセフに寄付するというのは、志の高さは買うが、そのことで戦争の悲惨を訴える作品を世に出しにくくなってしまっては逆効果だ。この曲にしても、わずか11日限りでの配信終了はあまりにも惜しい。
■著者略歴
小笠原 陽介 (おがさわら ようすけ)
理系のココロを文系のコトバで語るフリーライター兼コラムニスト、時々ジャーナリスト。ITによる人間と社会の変容に問題関心を持ち、独特の視点から発言を続ける。
主な著書:『PC-98パワーアップ道場』1998,ソフトバンク
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