|
最薄部という言葉の危うさ
2005年3月15日
特にノートPCやデジタルカメラなどで顕著なのだが、製品の特徴を語る際に「最薄部」という言葉が使われることがある。こういうことを書くといろんなところに喧嘩を売ってしまうのかなあ、などと不安になりつつ、どうしても言わずにいられない。この言葉、かなりインチキくさい言葉ではないだろうか。
そもそも、ほかでこういう言葉を、あまり聞かない。そういう意味ではちょっと造語くさい気はするが、言いたいことは分かる。こういった言葉を作ってしまえるのも日本語の自由度だろう。だから、それはまあ良い。
言いたくなる気持ちも分かる。たぶんメーカーとして「できるだけ薄い製品を作ろう」と考え、努力して実現したからこそ、お客さんにも分かってもらいたい、という善意でいっぱいなのだろう。しかし、たとえかけらほどの悪意もないとしても、やっぱり適切でない言葉というものはあると思うのだ。
厚みというのは、通常「最も厚い部分」で表記することになっている。携帯するにも収納するにも、予期した数字より厚くて困ることはあっても、薄くて困ることはないからだ。
それに対して「最薄部」という言葉は、一体何を示しているだろうか。その情報を顧客もしくは顧客になり得る人々に示すことで、双方にどれほどのメリットがあるのだろう。
仮に最薄部××mmと書いてあったとして、それがくさび形のような断面の端でしかないとしたら、ユーザーにとってはほとんど意味がないのだ。メーカーがそんなに最薄部にこだわりたいなら、いっそのこと、薄い方の端を伸ばして刃のように薄くし「最薄部1mm以下を実現!」とでも書けば良いではないか。
こういう言葉を全廃しろ、などと言うつもりはないが、あまりにも安易に使われ過ぎるのは、ある種の危うさを伴う。メーカーとユーザーの信頼関係を良好に維持する上では、もう少し抑制的に使うべきではないか。メーカー側の皆さんの善処を期待したい。
■著者略歴
小笠原 陽介 (おがさわら ようすけ)
理系のココロを文系のコトバで語るフリーライター兼コラムニスト、時々ジャーナリスト。ITによる人間と社会の変容に問題関心を持ち、独特の視点から発言を続ける。
主な著書:『PC-98パワーアップ道場』1998,ソフトバンク
●小笠原陽介 一覧へ●
●ご意見・ご感想をお寄せ下さい●
|