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米光一成&荻原貴明「ゲームデザイン研究所」

第6回:ツンデレのバランスでゲームをデザインする

2006年10月5日




 最近は趣味でもゲームを作っていて、チームで「大富豪でドン」というネットワーク対戦トランプゲームを制作中。ゲームを作るのは楽しいです。

 さて!

 テラヤマアニさんが、ルイージ要素について書いてくれたのでリアクションします。(ルイージ要素というのは、ルール・インタラクション・ジレンマの3つの要素です。詳しくは、「ルイージ主義」まとめをご覧ください)
 “ジレンマもルールもろくにない箱庭に、インタラクティブだけがあるっていう状態でも、面白いゲームというのは存在しうる。というかむしろそういった「インタラクティブが異常に肥大化したゲーム」をやってみたい。”
ということで、以下のようなゲームを夢想してくれていて、えーと、楽しそう。
 “神経がぶっ壊れていて自分の体を無意識に動かすことが全くできない生き物がぽつんといて、最初はただ草原に横たわってる。手足を動かすことも、立ちあがることも、歩くことも、何もかもが慣れるまでものすごい(操作上の)困難を伴う。最終的にその生き物は自由自在に自分の体を動かすことができるようになるわけですけど、「ただ草原を走り回ることが、こんなにも楽しいことだったのか」みたいな。そんなん。”
 で、このテラヤマアニさんが夢想するゲーム(以下、勝手に「草原さん」というタイトルにします)で、ルイージ要素を考えてみます。


■ すべてのゲームにルイージ要素が存在する

 ぼくの夢想するゲーム定義では、ルイージ要素がないゲームは、存在しない、のであります。

 まず、「草原さん」は、
“何もかもが慣れるまでものすごい(操作上の)困難を伴う”
えーと、つまり、どう操作していいのかわからないんだと思います。

 なんか、ぽつーーんって、草原に、へんな形の、えーと、もにゃもにゃした、複雑なスライムみたいな生物がいる(って、もうテラヤマアニさんの夢想にインスパイアされて、妄想が暴走してますけど)。

 で、上キーを押すと、上体を起こす。実はそいつは、もにゃっとした人型の生物だったことがわかる。体育座りしてたから、もにゃっとしたおまんじゅうみたいに見えていただけだった。

 ここで、右キーを押すと、ごろんと右に寝っ転がってしまう。

 上キーを押すと、立ち上がる、右キーを押すと、もやーっと右へ一歩踏み出す。もう一度右を押すと、もう一本の脚ももやーっと伸び、右へ移動しはじめる。

 右を二度押しすると、さっさと早歩きする。

 段差がある。もう右を押すだけでは移動できない。もやーっと伸びる脚が段差を乗り越えられない。キーの上を押すと、ぴょんとジャンプする。

 といったふうに、ゆっくりとプレイヤーは操作を憶えていく、とします。

 まぁ、このままでは、ベーシックな操作なので、すぐに判ってしまうだろうから、“操作上の困難”といえるようなものではない。ので、もう少し工夫が必要でしょう。

 「Bボタンを押しながら右押し」ならば、ぐりんと小さなジャンプの奇妙なでんぐり返りで移動するので、棘を飛び越えられる、とか。

 で、これは、ルールの習得です。どのキーを押せば、どういうふうに移動できるのか。

 「草原さん」は、ルールがない状態から始まります。いや、ある。あるけれど、プレイヤーはまったくルールを知らない状態から始まります。でも、コントローラをあれこれ押しているうちに、インタラクションの結果から、じょじょにルールを習得していきます。

 ぼくは、この「ルールの習得」がテレビゲームの楽しさの大きな要素のひとつ、そして特徴的なポイントだと考えます(参照:そして、それらを支える「ルール」)。

 「草原さん」で、
“ただ草原を走り回ることが、こんなにも楽しいことだったのか”
と思うのは、走り回ることが困難だったプレイ時代を経ているから、だと考えます。

 ルールを知らないときは、うまく動かせなくて、不自由で、ぎこちなかった。だけど、数々のインタラクションを通じて、ぼくは、少しずつルールを獲得し、理解し、ルールを上手く扱えるようになった。

 だから、今、ぼくは自由に草原を走り回ることができるんだ、という楽しさであると分析します。

 つまり、草原を走り回る(目的)ために、いろいろな試行錯誤を繰り返す(駆け引き)ということが、このゲームのジレンマだと考えます。

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