米光:でも、それは前例がないし、収益構造が見えないからダメだって言われ続けてて、そんな中でクリエイティブ・フューチャー・コンテンツ(CFC)という会社の方がカジュアルなオンラインゲームというアイデアに乗ってくれて、開発が始まりました。開発期間も1年くらいの予定で、スタッフも僕とプログラマーの2人+αぐらい。グラフィックの部分は、最初に3ヶ月くらいで集中して描いてもらって。サウンドはベイシスケイプにお願いしました。崎元仁さんといって、「伝説のオウガバトル」シリーズや、「ファイナルファンタジータクティクス」などの音楽でおなじみの方です。
− ホントに少数精鋭ですね。
米光:そうです。もともとはCFCが運営するはずだったんだけど、やっぱりネットゲームの運営体制構築って難しいらしくて。紆余曲折があって、最終的にガイアックスに「キングオブワンズ」を営業譲渡して、今秋に正式サービスが始まったんです。2年くらいかかっちゃいましたね。もともとポスト「ポトリス」って言っていて、ちゃんと1年半くらい前に正式サービスできていればタイミング的にはよかったんだろうけど。
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「キングオブワンズ」はウィザードリィとかの戦闘システムの発展形なんです
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− カードゲームというコンセプトは最初からあったんですか?
米光:これ、実はカードゲームじゃなくて、RPGの戦闘システムの発展系みたいなところから始まってるんですよ。
− そうなんですか。
米光:実はスティングでの最後の作品が、「こぐるぐるぐる〜ぐるぐるとなかよし〜」というゲームだったんです。ローソン端末の「ロッピー」による書き換え配信専用のゲームボーイ向けソフトで、「こぐる」という不思議な生物と会話をして仲良くなって、パーティを組んで、ライバルと「こぐる」を使ってバトルしていくという内容です。このバトルシステムが「キングオブワンズ」に繋がってるんですよ。(→バトル画面)
− 確かにバトル画面にはその趣がありますね。
米光:会話場面で集めた「こぐる」というキャラクターを、戦闘場面で縦に3体並べて戦うスタイルです。敵と味方が一列に3体ずつ並んで、お互いに先頭の「こぐる」同士がバトルする。戦闘はターン制で、やられそうになると列の後ろに回って回復して、かわりに次のキャラクターが前に出てくる。「こぐる」がチェンジするたびに、画面中央の数字が0、1、2・・・って増えていくんです。この時、チェンジして前に出たキャラの攻撃力が数字分だけ上昇するんですよ。だからなるべくチェンジせずに、ぎりぎりまで粘って数字が大きいときにチェンジする方が得なんです。でも粘りすぎると相手に倒されちゃう。最終的にリーダーの「こぐる」が倒されると負けです。
− おもしろいですね。
米光:この数字はランダムでリセットがかかっちゃうんです。数字が増えるほどリセット率も高くなって、数字が8とかになると60%くらいの確率でリセットされる。この見極めや、3体の「こぐる」によるデッキの編成、特殊攻撃、いつチェンジするか、みたいなところがゲームのキモになっています。だから、このバトルシステムがまさに「キングオブワンズ」の原型なんですよ。
− 「こぐるぐるぐる」では縦に1列でしたが、このマップが横に広がると、確かに「キングオブワンズ」になりますね。
米光:そうです。だからカードゲームの要素もあるけど、「キングオブワンズ」はどちらかというと、ウィザードリィとかの戦闘システムの発展形なんです。カードゲームという意味では「カードヒーロー」(任天堂)や、「イーサーロード」(イマジニア)といったゲームも好きで、そういった影響もあります。
− 「マジック:ザ・ギャザリング」(以下、マジック)に連なる、トレーディング・カードゲーム形式ですよね。戦闘システムにダイスを用いず、ゲームシステムが一つ軽くなっている。
米光:ゲームの歴史的な意味でも、「マジック」の出現って大きかったですよね。あれはすごい。でも、ちょっとルールが複雑なんですよねぇ。目標としては「マジック」くらい奥が深くて、ルールがもっと簡単なものを作りたいなと。それは目標の一つとして、ずっとあります。
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強いカードのせいで負けたって思っちゃうけど戦術を巧さのほうが肝心なんです
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− 先ほど2年という話もありましたが、ゲームデザインの部分はわりと早く決まったんですか?
米光:ええ。プロトタイプ的な物はわりと早い段階でできていました。
− 魔術学園という世界設定はどこから出てきたんですか?
米光:たしか初期の打ち合わせの中で出てきたんです。2年前くらいって、ちょうど「ハリー・ポッター」シリーズが大流行していて、魔法学園とかにすると人気が出るんじゃないかって。でもファンタジーで魔法学園ってだけだとありがちだから、もうひと味ほしいなって思っていて、出てきたのが近未来の専門学校って設定です。
− 近未来の専門学校という設定なんですか? それは気づきませんでした。
米光:公式サイトの「ストーリー」ページに書いております。魔術専門学校という設定なのに、それを忘れるくらい学校的なイメージがない。実に奥ゆかしいゲームなんです(笑)。まあ、もっとゲーム中で表現しろっていう説もありますが。
− あはは。
米光:でも、そういう校風なんです(笑)。魔法を題材にしていても、ファンタジーの世界にしたくなかったんですよ。最初に言ったような「現実との地続き感」を大事にしたいなということで。時代設定は西暦2018年。魔術に関する専門知識を教えてくれる魔術専門学校が乱立するんです。中世の歴史や錬金術なんかの知識を体系的に教えてくれて、卒業生の一部がゲームクリエイターとかになったりする。そうした専門学校の中で、ホントに召還魔術に成功した生徒がいて、その子を中心に本当に魔術を教える専門学校が誕生した、という設定なんです。それで生徒が大量に入学してきて、互いに魔術の腕を磨いていくという。最終的に校内で1番になって、2代目の校長先生になるのが目標です。
− 地続き感、ですか。
米光:なんかそのうち、ホントにアニメ科とか声優科とかのノリで、現実に魔術科とかできてほしいんですよ(笑)。代々木魔法専門学校とか。僕は未来予言のつもりで作ってます。ええーと、たとえば、インターネットって、実際には使ったことがない人から見ると、よくわからない魔法っぽいものに見えるんじゃないかなぁ、と。同じように、2018年になると、興味ある若者は、新しく生まれた魔術原理を学んで使えてる世界になってるんですよ。でも、ぼくとか年取ってるヤツは、もう頭がかたいから、それにはついていけなくて、へぇー最近の若者は幻獣召喚しちゃうんだなぁーって思ったり、「魔術脳のせいで子供が暴力的になってる」とかっていうインチキ本を読んでたりするんですよ。