Slash Games編「直撃!ゲーム最前線」
「大航海時代 Online」における市場環境を見据えた開発―
CEDEC2005 講師インタビュー 第2回
2005年8月16日
日本最大のゲーム開発者カンファレンス「CEDEC
2005」が、いよいよ8月29日から開催される。今年もSlash Gamesでは、講師の方々へインタビューを通じて、CEDECの注目トピックに迫っていく。
今回はレギュラーセッション「大航海時代 Onlineにおける3Dクライアント開発 -PCスペックへの挑戦- 」について、コーエーの松原健二氏にお話を聞いた。
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| コーエーのオンラインゲーム担当執行役員、松原健二氏 |
――はじめに自己紹介もかねて、役職などお伺いできればと思います。
松原:コーエーのオンラインゲーム担当執行役員、松原健二です。「信長の野望Online」「大航海時代
Online」のプロデューサーをしています。
――ありがとうございます。それでは講演の聞きどころについてお聞かせください。
松原:わかりました。最初に確認しておきたいのは、今回のセッションは「高性能のPCで最先端の映像表現をする」というものではないということです。むしろ、日本でMMORPGをビジネスとして展開していく上で、PCスペックをどのように見定めて、そこでどのような技術上の工夫を行ったか、という内容になります。
――なるほど。
松原:講演は3部構成になる予定です。まずビジネス&マーケティング的な内容。ここでは「大航海時代 Online」の開発がスタートした時、どうやってクライアントのターゲットスペックを選定したかについてお話しします。続いて技術的な内容。そうして決めたターゲット上で、どのようなプラグラム上の工夫を行ったかということですね。そして最後に、今まで「大航海時代
Online」を運営してきた中でわかってきた、お客様からのフィードバック事例などについて紹介できればと思います。また、今回はサーバーではなく、クライアントの開発事例を中心にお話する予定です。
――わかりました。それでは、それぞれの内容について、簡単にご説明を願えますか?
松原:はい。まずターゲット選定の部分ですね。我々が2年半前に開発をスタートした時、CPUやグラフィックチップのロードマップなど、さまざまな資料をもとに、本サービス時でボリュームゾーンとなるPCスペックを想定しました。ただ、そこには日本ならでは、またコーエーならではの事情を考慮する必要もありました。
――というと?
松原:日本のPC市場は欧米とは違い、メーカー製PCの半分がノートPCです。そのため、専用グラフィックチップのない、統合型チップセットを搭載したPCでも遊べなくてはいけない、という点が大命題としてありました。アメリカは、日本と違ってFPSの流れから来ている部分もあるので、リアルなビジュアライズを追求する方向にあります。法線マッピングなども当たり前の世界になっています。ただ、これをしようとすると数世代前のグラフィックチップではまともに動作しない、といった状況になります。これでは、日本ではビジネスとして成立させることが難しくなります。
また、「大航海時代 Online」は当初からアジア展開をめざしていたので、そうした地域のPC事情も無視できませんでした。当時はまだフル3DのMMORPGはリリースされていませんでしたから。日本も含めてアジア全体で見ると、アメリカで作られるMMORPGとは、かなり事情が違います。
――そうですね。
松原:具体的には2年半前当時の標準的な統合型チップセットで動くことを目標に設定しました。その1年後の新しい世代の統合型チップセットを標準にできれば比較的対象となるPC仕様を絞り込むことができたのですが、2年半前当時の_標準的な統合型チップセットがまだ残るものと予想しました。実際新しい世代の統合型チップセット搭載のノートPCは今でもメインストリームまで降りてきていません。この判断は正しかったと思います。また専用グラフィックチップについては、こちらも2年半前の普及モデル、現在と比較すると4〜5世代前をターゲットとしました。
公式サイトでは必要環境にDirectX
9.0c以上に対応し、VRAMが32MB搭載されたグラフィックボードが必要としています。CPUはPentiumIII
800MHz以上ですね。2年半前に販売されていたPCでもクロック周波数1GHz以下のCPUはほとんど見当たりませんでしたが、これには当社のPCゲームの伝統ともいうべき事情もありました。
――というと?
松原:当社の主流である、PC用「信長の野望」や「三國志」シリーズにおいては、最近のタイトルでもPentiumIII
700MHz程度で動くように開発を行ってきました。メモリも128MB、VRAMにいたっては8MBもあれば遊べます。お客様もそれに慣れているところがあるので、VRAMが32MBも必要だというと、それだけで驚かれることがあるんですね。でも「大航海時代
Online」はフル3DのMMORPGなので、VRAMが32MBというのはギリギリの容量です。お客様の方でも、コーエーのPCゲームは最新のスペックでなくても動作するという期待をお持ちだと思うので、出来るだけそれにお応えしたいということがありました。