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――それでは、まずはスポンサーセッションの概要から教えてください。

ジョン:はい。スポンサーセッションは大きく3つのパートにわかれる予定です。第1パートが弊社からのプレゼンテーションで、第2パート・第3パートがSCEJスタジオさん、ナムコさんによる、実際の開発例についての講演となります。

 第1パートでは、まずは弊社や弊社の技術についてご紹介する予定です。最近では多くのゲーム開発者がドルビー技術についてご存じだと思うのですが、そのすべてについては知らないかもしれません。ドルビー技術を使ったコンテンツを制作するために、スタジオや機材など、何が必要かも紹介します。5.1chの簡単なミックスティップスも紹介したいですね。他に次世代コンソールに関する情報も紹介する予定です。特にXbox360では、ドルビーデジタルとドルビープロロジックIIの機能をシステム上に実装しており、ライセンシなら誰でも自由にドルビー技術を使用できます。この点は意外と知られていないのではないでしょうか。また会場には5.1chのスピーカシステムも搬入し、実際にデモを行ってステレオ音声との音の違いを体験していただこうと思っています。

ドルビーラボラトリーズインターナショナルサービスインク日本支社のジョン・グリフィン氏

――次世代コンソールについての情報が得られる点は大きいですね。

ジョン:ええ。しかし現時点においてはまだ詳細がわからないところも多いので、できるだけの情報を提供できればと思っています。こうした情報を得て、さらに効果的なサラウンド音響を作るための手法を学ぶためには、その後のSCEJスタジオさんやナムコさんの講演が参考になるでしょう。さらにラウンドテーブルで、より深い情報も収集することができます。

――盛りだくさんの内容ですね。ではSCEJスタジオさんの方から、「GENJI」のサウンド制作についてどのような話が聞けるのか、その概要を教えていただけますか?

大島:まだ詳しい内容については決まっていないのですが、5.1chサラウンドでサウンドを制作した過程や、効果的なサウンド演出を行うために熟慮した点、遭遇したトラブルに対しての解決法などについてお話しできればと思っています。

 もともと「GENJI」ではサラウンド対応が決まったとはいえ、先程山口からもあったようにSCEJスタジオでサラウンド技術の導入が遅れており、個人的にも初めてのサラウンド音響制作だったため、さまざまな苦労がありました。そもそもゲームサウンドというのは、5.1chを使わなくても、ほとんどはステレオで成立してしまうものですよね。ではサラウンドで遊んだ方が楽しく感じてもらえるためにはどうしたらいいか、そんなことを考えながら制作を進めていきました。

――「GENJI」におけるサラウンドならではの魅力には、どういったものがありますか?

大島:たとえば和太鼓の重低音などですね。「GENJI」では日本的な世界観の表現をサウンド面においても重視していて、和楽器による演奏をBGMで多く取り入れています。その中でも和太鼓の重低音は、LFE(Low-frequency Effect:“.1”chのサブウーハーによる重低音の表現)を積極的に活用することで、より迫力のあるサウンドを表現できたと思います。

ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン大島香織氏

――やはりそこは、聞いてみないとわからない部分のようですね。

山口:ええ。少し話はずれますが、ゲーム制作者も5.1chサラウンドの存在は知っていても、具体的な技術と効果まで知っている人は意外と少ないんです。ステレオの時は、制作のプロデューサーやディレクターに対して、サウンドの演出でこういうことを考えているから、こういうことがしたい、と伝えるだけで済んでいました。これがサラウンドになって、サウンドデザイナーの側から、サラウンド化によるメリットやデメリット、予測される障害などを、より積極的に伝える必要が出てきました。「GENJI」でも、こうした提案を大島の方から積極的にしていった、という感じでしょうか。

大島:これは中山さんともよく話をするのですが、映画のサラウンドだと観客をストーリーに集中させるために、なるべく後ろのチャンネル(サラウンドスピーカー)を使わないようにするそうです。しかしゲームはストーリーだけを追いかけるものではなく、自分が主人公となって実際に体験できる、インタラクティブなものなので、後ろのチャンネルも積極的に使った方が、かえって臨場感や爽快感も増すような気がします。ですから、映画に比べると、ムービー部分でもゲーム部分でも、サラウンドチャンネルは演出上必要と感じた部分に関しては誇張して使っています。そういった演出方法を導入することによって、サラウンド感を感じていただけるように考慮しました。

――当然、作業量は増えそうですね。

大島:「GENJI」はムービー部分にドルビーデジタル、ゲーム部分にドルビープロロジックIIを採用しています。このうちゲーム部分についてはプログラムで対応できる部分が多かったので、私自身の作業量はそれほどでもなかったのですが、ムービー部分ではステレオと同じ作業量で見積もってしまい、デッドラインは守れたものの、思っていた以上に時間が掛かってしまいました・・・主にイベントシーンのミックス作業ですね。
ミックス前のプリプロダクションはステレオとさほど変わらないのですが、いざミックス作業を初めてみると、5.1chでは、スピーカー2個のステレオと比べて3倍、6個のスピーカーがあるわけですから、こだわれるところがどんどん増えてしまって・・・。

山口:逆にライブラリの方ではゲーム部分の側で、たいへんな苦労がありました。大島たちが作っているサウンドデータを、ゲームに実装させるためのツールがありまして、これをドルビープロロジックIIに対応させるための機能拡張が、予想していたより大変でした。なにしろステレオ時代のライブラリをそのまま使いつつ、さらにドルビーの技術を使えるようにするために、機能拡張するわけですからね。ドルビープロロジックIIのアナログの挙動を制御し、かつ安定して使えるようにするためのチューニングが大変でした。逆にドルビーデジタルの方が、プログラム面では楽だったんですよ。大島たちは逆に5.1chミックスが大変だったようですね。でも、本当に頑張ってくれました。

大島:実はプログラムパートでももう一つ作業が増える要因がありました。それはサウンドデバッグです。サラウンド対応にしたことで、音の組み合わせも
 「ムービー:ステレオ ゲーム:ステレオ」
 「ムービー:ドルビープロロジックII ゲーム:ドルビープロロジックII」
 「ムービー:ドルビーデジタル5.1ch ゲーム:ドルビープロロジックII」
と3パターンになりました。そのため新しいバージョンのROMが出るたびに、3パターンとも確認するため、3倍のデバッグ時間が必要になったんです。こうした苦労についても、できる範囲でお話しできればいいですね。

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