― お話を聞いていて、たとえば「百人一首」というのはゲーム性が高く、しかも昔の和歌を覚えて、といったことでこれもシリアスゲームなのかなと感じました。シリアスゲームという言葉が指すのはコンピュータゲームだけなのでしょうか?
今、シリアスゲームのグループで対象としているのは、ビデオゲームが中心です。ただ、ボードゲームやカードゲーム、そういったものも含めてゲームとしてとらえるとご指摘のとおりで、そういったカードゲームを利用した学習というのは長い歴史がありますし、そういったことの研究も長く続いています。
ただ、シリアスゲームはアメリカでもまだ始まったばかりなので、そういう昔の研究成果のフォローは現在行なわれているところです。たとえば、クリス・クロフォード(代表作:バランスオブパワー)というボードゲームの頃からゲームを作っていた有名なゲームデザイナーがいるんですが、彼はシリアスゲームのコミュニティで熱心に議論に参加してくれて、彼の長年の知見を共有してくれています。
― シリアスゲームイニシアティブには年齢が上の方も?
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GDC2004でのシリアスゲームサミット風景
(撮影:小野憲史氏) |
そうですね、大学の教授クラスの方も多く参加していますし、年代層はまちまちです。このあいだGDC2004にいったときも、GDCって年齢層が若いじゃないですか、全体的に。でもシリアスゲームサミットの会場だけやたら平均年齢が高かった(笑)
また、ゲーム会社の社長さんやプロデューサーの方が多いので、やはり年齢層は高くなりますね。若いプログラマーさんも来られてましたが、その時はプログラミングの話とかはほとんどなかったので、ちょっと退屈されているような感じはありましたが。
― ただ、シリアスゲームを開発するにしても、教育の場で使おうとなると3D酔いの影響を抑えるだとか、そういった具体的な話は必要でしょうから、今後はそういうプログラマさん向けのサブカテゴリも必要になるのではないでしょうか?
そうだと思います。今までは、概論や事例の共有をして、どういう成果があったかをみんなで学習するフェイズだったんですが、今後、個別論にだんだん入っていく段階になります。
これらがだんだん理解が深まってきて、次のGDC2005のカンファレンスでは、より開発側にフォーカスを当て、開発者が「シリアスゲームの開発者」としてやっていくのに必要な視点や知識を吸収してもらうようなセッションを組もうという話になっています。開発の段階で、具体的に学習の要素をどう入れるか、という個別論に入っています。
― シリアスゲームの文脈を、プログラミングができる人間に伝えていく、というわけですね
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教育とゲーム、オンラインコミュニティ
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― ゲームを使った学習、ということですが、何にせよ覚えなければならないことは日々増えてますから、分厚いマニュアルを読むよりも、ゲームを30分ぐらいやって身に付くのなら、それは誰にとっても幸せなんでしょうね
昔と違って、最近のゲームはマニュアルがほとんどついてませんよね。マニュアル読まないとできないゲームは放り出されちゃう。操作も、ゲームをやりながら覚えられるようになってる。そこがゲームのいいところで、教育コンテンツにそういうものはありません。まだテキストや音声での「説明」が主になってます。そういう技術一つとってみても、ゲームの技術はポテンシャルが高いと思います。
さらには、最近のマルチプレイヤーオンラインゲームでは、ユーザ同士がお互いにやりとりできるようになったじゃないですか。あれも違いますよね。
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国内最大級のMMORPG「ラグナロクオンライン」
(C)2004 GRAVITY Corp & Lee Myoung-jin(DTDS
studio), All rights Reserved.
(C)2004 GungHo Online Entertainment., Inc
All Rights Reserved.
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― 「これをやるにはどうしたらいいの?」って、マニュアル読まずに人に聞いちゃいますからね
たとえば「敵を倒せないんだけど」なんていうと、レベルの高いキャラクタがパーティを組んで一緒に行ってくれたりするじゃないですか。そういうのが起き始めているというのは面白いですね。
将棋でも何でも、うまい人のを見て学んでいくのですが、これがオンライン上で行われているわけです。この装備のセットでやるといいとか、やりながら相手に聞けるわけで、これはスタンドアロンではできなかったことです。
― ちょうど同じような体験をしました。とあるオンラインゲームで、「これこれの装備で最前線に出ると勝率が低いんだけどどうすればいい?」と聞いた人がいて、あっという間にアドバイスが返ってきていたんですね
2ちゃんねるなんかも同じで、あれも質問を投げたらすぐに返ってきたりするじゃないですか。下手な質問するとまず、怒られますけどね。前スレ嫁[注:以前のスレッドを読め、の意]、とか(笑)
以前なら道場や学校に行ってあくせく学ぶといったのが、違ったスタイルで学んでますよね。体系的に物事を「学ぶ」という中で、ああいう柔軟なコミュニティが機能するというのはどういう場面なのか、というのはひとつ面白いところだと思います。
― ネットコミュニティについては、いくつかの事件の影響もあって、日本の教育界は腰が引けているかもしれませんが・・・
自殺サイトなど、そういう話ばかりですからね。
― 2ちゃんねるも、いい話はけっこうあるんですけどね
「電車男」なんて、いい話じゃないですか。
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| 新潮社から書籍化された「電車男」 |
― あれは「電車男さんが教育を受けていく過程」という見方もできますね
オンラインラーニングコミュニティのいい例だと思います。だって、学習して、行動の変容があったわけですよね。行動の変容を起こすコミュニティというのは、レベルが高いコミュニティなんです。似たような事例はもっとありますよ。
― 行動の変容ですか。そういえば、2ちゃんねるで私の行動を変容させた「部屋が汚い」自慢スレを思い出しました。部屋を片づけられない人が、その様子を語り続ける、というものだったんですが、突き詰めるとどこまでいくか、というのを見せつけられて。読んで笑いながら自分の部屋を見回すと、散らかってるんですよ。行動、変容しましたね
すばらしいですね。そうなんです。
ロジックが全然違いますよね。わざわざ部屋片づけ講座を習った訳じゃない。教育というと、部屋が散らかってるという問題に対して、「片づけ講座が必要ですね」となっちゃう。でも、そうじゃないんですよ。
― それにしても、教育コンテンツから2ちゃんねるに話が行くとは思いませんでした(笑)
そういう世代なんですよね(笑) ゲーム世代とその上って断絶がありますね。2ちゃんねるも、ちょっと上の世代に行くともうネガティブなものなんですよね。あるいはゲームというと、自分でやっていない世代は、どうしても理解しづらい。