Slash Games編「直撃!ゲーム最前線」
IGDA ジェイソン・デラ・ロッカ氏に聞く、ゲームにおける産学連携と
コミュニティの重要性 ―東京ゲームショウ2004
2004年10月6日
今年の東京ゲームショウにあわせて、IGDA(国際ゲーム開発者協会)からProgram
Directorのジェイソン・デラ・ロッカ氏が来日した。IGDAは、ゲーム開発者のコミュニティを強化することをミッションとした、世界中に80のチャプター、5000人のメンバーをもつ、国際NPOである。
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| IGDA Program Director ジェイソン・デラ・ロッカ(Jason
Della Rocca)氏 |
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産学連携では越えなければならない課題がいくつもある。解決方法は、それらの課題を「理解する」ことだ
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―― IGDA Program Directorとはどういうお仕事ですか?
いろんなことをやっているね。第一に、IGDA全体のコーディネート。チャプターやコミュニティの運営、各種SIG、GAME
DEVELOPERS CHOICE AWARDの運営など。また、海外を含む全体のマネジメントなどもおこなっている。IGDAのBoard
of Directorsが立てたプランやビジョン・戦略を、実際に実現する仕事、といえるだろう。
―― 日本でもゲーム業界と大学による産学連携の話題が増えています。米国ではエレクトロニック・アーツ(EA)がかなり活発に行っていると聞いていますが、海外ではEA以外の事例も多いのでしょうか?
アメリカでも少ないね。状況はいいとは言えない。
多くの小規模・中堅企業は、時間や資金の不足から、すべてを注ぎ込んでゲームを作ることしか考えられない。彼らにとっては、アカデミックなことを考える時間はないのだ。
もちろんEAは世界最大のゲーム企業であり、たくさんのリソースを持っているので、専属の人材を割り当てて長期間の利益を考えることが可能なのだ。
―― 産学連携は、日本ではまだあまり具体的な動きが少ないようです。日本では大学からのアウトプットとして何らかの「パッケージングされたソフトウェア(ツール・ライブラリ)」を求める傾向がある一方、EAはそうではない、といった違いもあるようです。大学とゲーム業界の連携の形として、デラ・ロッカさんはどういう形が望ましいと考えますか?
難しい質問だ。まさにそれがIGDAのやっていることだ。
産学連携を進めるにあたっては、いろいろと越えなければならない課題がある。
ひとつはタイミングだ。ゲーム業界ではクリスマスシーズンにリリースしなければならない、といった具合に時間がタイトなのに対し、アカデミックは2〜3年の長期の研究が普通だ。ゲーム開発と大学の、時間的なシンクロナイズが非常に難しい。
もうひとつは法律関係、特に知的財産に関することだ。大学の研究は論文や研究発表でオープンにされることが一般的なのに対し、ゲーム開発会社は情報を隠して利益を得たいと思う。それに関係するのが資金の問題で、もし僕が開発会社なら、大学にお金を払ったのならそれをすべて自分の物にしたいと思うだろう。しかし、大学の研究はその対極にあるのだ。
別の課題もあって、これは技術的な部分だ。ゲーム会社は、ハードウェアに最適化した物を作ろうとする。速いフレームレート、より多くのポリゴンなどだね。だが、大学の研究だと最適化はあまり考慮されない。
―― それらの課題に産業側はどう対処すればよいのでしょう?
解決方法は、それらの課題を「理解する」ことだ。
ひとつには、大学との共同研究をする際に、現在のプロジェクトに特化するのではなく、二つ目、三つ目のプロジェクトに効果が出てくるよう考えていく方法。
もうひとつは、得られるものを具体的に期待せずに組む方法。EAにしても、アウトプットの内容を具体的に指定してはいないんじゃないかな。ただ彼らは、研究で組んだ相手の中には、何か興味深いものを出してくる人がいることを知っているんだ。
また、たとえばゲームのソースコードを提供することで、学生がゲーム開発についての知識を得て、ゲーム産業に来た時にすばらしい労働者になる、ということも期待できる。
業界は、現実的な期待をもって大学とつき合うべきだろう。
―― 日本で産学連携が広がっていかない背景には、ゲーム開発会社の秘密主義もあるように思います。IGDA日本による開発者同士のコミュニティづくりはボトムアップ的にその状況を打破する方法の一つだと思いますが、開発会社のトップも情報共有にメリットを感じないと有効に機能しないと思われます。開発会社にとって、共有のメリットはいったい何でしょう?
ゲームに関して、アイディアや知識を共有することそのものが、知恵(wizdom)を引き上げていく。一つの企業が問題を抱えたり何らかのチャレンジをしなければならない、とする。別の企業も同じような問題を抱えていることがある。もし問題を共有できなければ、それぞれ解決しなければならないが、共有できれば、たった一つの問題として解決できるだろう。
こうした情報共有を非公式におこなうことに価値があるんだ。
多くのマネージャはビジネスミーティングに出てたり、パーティに参加したりしているだろう? だが、現場の人間は外部の人に会う機会がない。しかしIGDAのチャプターがあれば、人に会っていろいろと話をできるし、一緒にビールを飲んだりする機会もある。コンピュータに張り付いて働いてばかりではなく、時には机を離れて、人と話して友人を作ったりして、個人的なネットワークを構築することが必要だ。
(東京ゲームショウ初日に開かれた)チャプターパーティには、日本や韓国、中国、北米からたくさんの人が集まった。こういう場で、新しい友達、コネクションができる。ソニーとインテルの人が会ったり、マイクロソフトと任天堂の人が会ったり。友達が友達を紹介して、相互効果を生み出していくのだ。こうしたインタラクションを作ることは、個人を助け、すべての人を助けることになる。
これがIGDAの核になるコンセプトなんだ。
―― 開発者にとっては、開発に携わったゲームそのものが「履歴書」になります。CEDECやチャプターの研究会のように開発についてオープンに議論できる場は、開発者が自分の技能を高める場であるとともに、自分の価値を高められる場としても働くと思いますが、この点はいかがでしょう?
IGDAのクレジット委員会についてお話しするのがいいかな。
開発者にとって、「報酬」には2つの形式があって、一つは給与、もう一つは自分の仕事を外部から認知してもらうことだ。
クレジットを認識させること、これが大事なんだ。絵には署名を入れるだろう?ゲームだけでなく、本、映画,詩……すべてのものにクレジットが付くことは重要だ。
なぜほかのアートの形式はクレジットが出るのに、なぜゲームにはないのか。
最大の要因は会社だ。会社はゲームについて、開発者にクレジットを与えることを好まない。会社が認識されることの方が、会社にとってメリットが大きいからだ。
日本でわかりやすい例をあげると、スタジオジブリと宮崎駿だ。すべての人が宮崎駿を知ってるよね。宮崎であれば、たとえ他の会社で働いていても分かるだろう。一般消費者にとっては、宮崎作品を見る、という認識だ。だが、ゲーム産業では、たとえばスクウェア・エニックスであれば、多くのユーザに『スクウェア・エニックスのゲーム』として認識して欲しいと思っている。
もっとも、ゲーム開発者のうち宮本茂さんや小島秀夫さん、鈴木裕さんのように、一部の人についてはクレジットが出ている。これを、すべての開発者がクレジットを得られるようにしたい。
もしすべての開発者がクレジットを得れば、どの会社が、ではなく、誰が作ったかが重要になってくる。だからこそ企業はクレジットをちゃんと出すことを好まないわけだが、作った人がクレジットを得られることが基本的な権利ではないかと考えている。
IGDAでは、すべての開発者が得られるように努力しており、クレジット委員会を開始している。現在は第一段階として、ゲーム内でのクレジットの状況を調べているところで、次の段階でどのようにクレジットすべきかのガイドラインを作っていくことになる。これは簡単な作業ではないだろう。
―― IGDA日本チャプターについてはどう思われますか?
とてもいいね。そして、非常に重要だ。
アメリカやヨーロッパにも多くのチャプターがあり、それぞれ抱えている課題をオープンにして共有している。IGDAチャプターは既存コミュニティを助けるという役割も持っているのだ。日本では、チャプターができるまでコミュニティはなかったと思う。日本チャプターはバリアを破りつつある。本当の意味で、日本チャプターは非常に重要だよ。
―― ありがとうございました
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