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■ モチーフは60年代のレトロフィーチャーにして『カウンターストライク』等と差別化

  『TF2』は、ロビン・ウォーカー氏がオーストラリア在住時、アマチュアモッダーとして開発した『Team Fortress』(以下、TF)の最新版である。もともとは、Quakeエンジン用に開発された後『Team Fortress Classic』(以下、Classic)としてハーフライフエンジン向けに再開発された。現在もSteamでダウンロードが可能となっている。同作品の特徴は、クラス分けがされていることだ。それぞれの役割が決まっているためその特徴を生かし、あるものは要塞(Fortress)を守り、あるものは積極的に攻めるということができる。それぞれが自然にチームとして連携し、敵チームを倒すことが『TF』シリーズの醍醐味の1つだ。

 『TF2』でも前作を踏襲し、Heavy、Spy、Scout、Demolitions、Engineer、Medic、Sniper、Soldier 、そしてPyroと9つのクラスが存在し、それぞれ所持可能な武器や能力が完全に分かれている。『TF2』開発において、技術の基盤は、当たり前だがSourceエンジンだ。だが、『TF2』は美術的側面において前作の『Classic』や他のオンライン対戦FPSである『カウンターストライク:ソース』や『デイズ・オブ・デフィート:ソース』とは一線を画している。リアル路線から離れ、より美術にこだわりを持って開発を進められているのだ。

Team Fortress2の説明をしてくれたロビン・ウォーカー氏
(C)2006 Valve Corporation. All rights reserved.
※クリックで拡大画面を表示
 
 まずは、全体的なモチーフだが、60年代のレトロフィーチャーを狙っている。これは以前、『No One Lives Forever』といった作品でも使われたモチーフだが、『TF2』においては、それが単に世界観だけに生かされるのではなくアートにも生かされている。

 「この60年代的雰囲気を出すにはどうしたらいいか、いろいろ試しました」とはロビン氏。「日本でもよく使われるトゥーン・シェーディングなども試したのですが、それだと『TF2』をプレイする上で、非常に大切なディテールが失われてしまうのです。ディテールを失わないまま、各キャラクターの色彩を誇張できる方法はないのか、と考えて、採用を決めたのがフォンシェーディング(Phong Shading)です」とのこと。

 フォンシェーディングは、反射光が強調されるシェーダーだ。これにより敵、または味方が遠方にいたとしてもそれが誰なのか非常にわかりやすくなる。プレゼンでは、フォンシェーディングを導入した場合とそうでない場合の比較を画面上で示していたがその効果の違いは明らかだった。光源が人物に当てられた際、フォンシェーディングだと他のキャラクターとの違いがくっきりと浮かびあがってくるのだ。またリムライティングエフェクトなども活用している。これらもやはりキャラが遠方からでも一目でわかるようにするための工夫だ。

  同じようにこだわったのは各キャラクターのデザイン。1つ1つのクラスごとに同じポリゴンモデルを使用するのではなく、まったく違ったポリゴンキャラクターをゼロから作り上げることができるのが、MODではなく1つの作品として『TF2』を開発していることの強みだろう。重火器を頻繁に活用するパイロ(Pyro)のようなキャラクターは容姿も大きくマッチョに、スパイ(Spy)の場合は体形も細くという形で、それぞれの役割に応じ、各キャラクターがその役割を反映したデザインとなっている。一見、日本では考えつかないようなキャラクター作りがされているが、キャラクター作りへのこだわりは意外にも日本でのそれに近い。

 「私たちがここで一番こだわったのがシルエットなんです。こちらを見てください」とロビン氏が見せたのは『TF2』で登場する全キャラクタークラスが並んでいるスクリーンショット。ただしすべてがシルエットになっている。「ここで見てもわかるように、シルエットになった状態でも誰が何のクラスなのか、一目でわかるようにデザインされているのです」とのこと。つまり、一発でキャラを覚えられるように、黒塗りの状態でもそれが誰かわかるようなデザイン的工夫がされているのだ。これは日本におけるキャラクター開発にもつながる考え方といえよう。『TF2』においては、ゲームプレイ上の便宜を考えられたデザイン手法ではあるが、日本でもよく採用されるキャラクター作りの原則が、まったく違う環境において自然と意識されはじめているという傾向は興味深い。

 そもそも、橋をはさんだ2つの要塞が敵対し、にらみ合っているというのは非現実的だが、これはあくまでもゲームプレイをより楽しませるための演出だ。レベルデザインでのこだわりは、やはり60年代のスパイ映画でよく見られるような“秘密要塞”的モチーフを本格的に取り入れている点だ。外観はあくまでも、廃屋や古ぼけた農家の納屋、といった形態をしているが、地下に入ると内部には様々なガジェットが設置してあり、最下層は、アジトとして「洗練された」最新設備(あくまでもレトロフィーチャーとしてのだが)が揃った拠点となっている。開発チームが作り込んだアリーナは3つの階層に分かれている。完全にニュートラルな要塞の外と鉄橋、秘密基地という真の姿を隠蔽しつつ敵と味方が入り乱れる要塞の上層、そして敵味方が明確に別れて戦闘し、そこでの戦果が勝負を左右する要塞最下層だ。

 以上『TF2』は、ソースエンジンという多くのユーザにとって非常になじみ深い技術を使いながらも、キャラクターデザインやレベルデザイン等、すべてにおいて斬新なコンセプトを本格的に導入した作品だ。シルエットでキャラクターが明確に認識できたり、各階層においてチームがいかにふるまうべきかをゲームデザインのしくみとして明快にしていたり…。このような開発者側の試みが、『Classic』のファンのみならず新規ユーザを開拓できるか注目される。

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