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 「スポーツ=身体競技」は、近代に作られた思想
 

 それでも、やはりスポーツという言葉は身体運動を示す意味が強い。これはヨーロッパでキリスト教思想が広まったときに、身体が精神より低い存在という認識が広まったことに原因がある。最近話題になった映画『ダ・ヴィンチ・コード』でも説明されていたが、世の中のいくつかの“常識”が、時の施政者の都合で書き換えられてしまった。スポーツもその1つなのだ。

 身体は精神の下。という考え方は、確かに無用な争いを防ぐ効果があった。しかし、身体への抑圧は大きな反動を生んだ。反動のきっかけは哲学者ニーチェの「肉体は1つの大きな理性である」という「身体論」である。強い肉体に強い精神が宿る。この思想もまた、産業革命以降の政治に利用されていく。資本家と労働者という近代社会関係のストレスを発散させるために、「スポーツ=身体競技」にすり替えられ、政治に利用された。近代スポーツの多くはこの時期に完成された。

 日本ではこの経緯がより強調された。日本ではスポーツを楽しむという文化的な側面が受け入れられなかった。いや、採用されなかったといってもいい。明治時代、日本に近代スポーツが紹介されると、政府は強い兵士を作るための手段としてスポーツを広めた。富国強兵の時代である。スポーツは政府によって“体育”として利用されてしまったというわけだ。この体育が学校に持ち込まれ、スポーツは身体を鍛える手段として市民に刷り込まれた。

 この時点で、日本のスポーツの定義が外国とは異なっていることに気付くべきである。本来のスポーツの意味は「余技」であり、それ自身を楽しむものであった。これに対し、日本のスポーツは他の目的、“戦争や教育のために身体を鍛えるもの”という意味になった。日本が軍国主義でなくなった現在、戦争のために身体を鍛えるという目的はなくなっている。しかし、生徒のストレスを発散させて反抗させないため、という目的では、現在も積極的に利用されているようである。

 日曜日の朝、公園をジョギングしている人がいる。世界の認識では「ジョギングが楽しい」から走っている。しかし日本人のジョギングは違う。楽しいからではなく、「身体を鍛えたい」「ダイエットしたい」「健康を維持したい」などの目的を持って走っている。だから「苦しくてもがんばる」という奇妙なスポーツライフが根付いている。本来、楽しい、という意味のスポーツが、苦しくてもやる、という意味にすり替わった。プロスポーツもしかり。プレイして楽しむ、観戦して楽しむ。それだけでよいはずなのに、スポンサーの宣伝のため勝つことが目的となり、そのためには人気がある選手も引退させられてしまう。ファンにとっては楽しくない状況がまかり通る。

 脱線してしまったが、要するにスポーツを「身体を動かすことに限定する」という考え方は間違っている。スポーツは余技であり、それ自体が楽しいものである。だからコンピュータゲームはスポーツなのだ。

 日本に住む多くの人にとって、コンピュータゲームとは娯楽であり、ゲーム機器は玩具の延長にあった。コンピュータゲームで遊ぶことは勉強の妨げで、得体のしれない少年犯罪が起こればゲームのせいにされた。勤勉が善、遊びを悪だと考える勤勉な日本人にとって、コンピュータゲームは教育と対極にある。そしてスポーツは体育そのものだ。だからコンピュータゲーム=スポーツという概念は理解しにくい。これは仕方のないことかもしれない。

 悲しいことに、コンピュータゲームを作る人、コンピュータゲームで遊ぶ人、コンピュータゲームを語る人もそう思っている。コンピュータゲームは日本を代表する産業になり、世界に誇れるゲームソフトやゲーム機がいくつもある。しかし日本の社会はコンピュータゲームを悪者にする風潮があり、コンピュータゲーム関係者がそれに正面から反論せず、むしろ迎合して自分のポジションを守ろうとする。その結果、自分たちが作り出したゲームや文化を堂々と誇れない。こんな馬鹿な話があるだろうか。

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