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“作る楽しみ”はプログラミングだけではない
では、PCゲームはもう終焉に向かうのだろうか?
いや、けしてそんなことはない。なぜなら、PCというプラットフォームは家庭用ゲーム機にはない、決定的な機能を持っているからだ。それは“作る”という機能である。スクリプトを書ける、画像データを編集できる、音声やビデオ映像を入力できる。このようなクリエイティビティは家庭用ゲームにはない。「ツクール」シリーズなどの例もあり、クリエイティブツールがまったくなかったわけではないけれど、家庭用ゲーム機では作る機能は広まらなかった。しかしPCゲームには“作る”という楽しみが残っている。
「そんなの当然だ。現に家庭用ゲームだって、PCやワークステーションで作っているではないか」という声が聞こえそうだ。もちろん、ゲームクリエイターはPCやワークステーションを駆使してゲームを作る。確かに創作性のある仕事は楽しい。しかしそれは一般的な“遊び”ではない。ところが、PCゲームでは、もっとカジュアルに“作る遊び”を楽しめる。プログラミングの知識は要らない。もっとも簡単なところでは、画像データの編集、音声ファイルの差し替え、テキストファイルの変更などからスタートできる。つまり、「ゲームの改造」である。
ゲームに限らず、プログラムやソフトウェアの改造については後ろ暗いイメージを持たれることも多い。ゲームのセーブデータを改変するツールや機器は、電気街の裏通りで売られていたし、摘発を受けたこともある。プログラムは著作物であり、著作権が発生する。プログラムやセーブデータを改造し頒布する行為は、著作権のうち「複製権」や「同一性保持権」を侵害するし、それを助長する製品の販売などは著作権違反をほう助した罪に問われる。
実際に、ゲームの改造データの流通を差し止める訴訟があった。記憶に新しいところでは、ある恋愛ゲームのストーリーを改変するメモリーカードを販売した業者や、格闘ゲームに登場する女性キャラクターの姿を変更するためのツールを販売した業者が告発され、裁判で敗訴している。このような判例が、ゲームの改造=悪いこと、というイメージを世間に浸透させたと言えるだろう。
しかし、「ゲームの改造=100パーセント悪」なのかと言えば、実はそうでもない。むしろ、ゲームの改造がPCゲームの遊びを広げ、ゲームの魅力の1つとして新しいユーザを獲得し、改造の元になったゲームの売り上げを助長した例もある。もっとも多く紹介される事例が『ハーフライフ:カウンターストライク』だ。何度も説明されすぎた感もあるが、簡単に説明すると、もともと『ハーフライフ』はモンスター退治ゲームだったのだけれど、そのマルチプレイ機能をユーザが改造して、テロリスト対特務部隊の戦いをテーマとし、チーム対戦のルールに改造した。これがユーザに好評で、インターネットを通じて愛好者が増えた。その結果、メーカーがその改造データをハンドルして発売した。続いて改造データだけで動作するバージョンを発売した。「カウンターストライク」はユーザが作った改造プログラムでありながら、ハーフライフの売り上げにもっとも貢献したといえる。
アメリカには元々PCゲームの改造を楽しむ文化があり、改造されたファイルを「MOD」と呼び、それらのファイルや作り手、愛好者たちは総じて「MODカルチャー」と呼ばれている。MODとは「Modification」の略で、日本語で言うとズバリ「改造」となる。当初はMODのクリエイターにもプレイヤーにも後ろ暗い部分があっただろうけれど、カウンターストライクの成功がMODカルチャーを社会に認知させた。現在もMODは作られ続けており、そこには純粋にゲームを楽しませてくれる良質なものもあれば、チートと呼ばれる“ズルイ技”を実装させるもの、キャラクターの著作権に触れそうな悪質なものなどがあり、玉石混淆である。それらを含めてMODカルチャーは活況を呈している。この盛り上がりは家庭用ゲームにはなく、PCゲームならではのものだ。
もしかしたら、いま、PCゲームの活力の源はMODの存在ではなかろうか。
MODについて正しく理解し、MODの楽しみを広げていくことが、PCゲーム市場をもっと大きくしていくきっかけの一助になるような気がする。
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