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●私はもっと幸せになってやる!
韓国の視聴者は、この頃の不倫ドラマに関して以前とは違う反応を示している。「夫が家庭に戻って来るのがハッピーエンドではない。浮気をした夫を許し家庭に戻らせるというストーリは陳腐すぎる。若くて健康だったときは浮気ばかりして歳をとって病気になったら奥さんに戻ってくるという設定は気にいらない」と。ドラマの内容も「女性」を主人公にしたものが多くなったので、「夫が浮気? あ、そう。それなら私はもっと幸せになってやる!」とばかりに自分の人生をリセットする。
SBS「私の男の女」では、夫を寝取られた不幸なはずの妻も、通帳と家を慰謝料にもらい、すっきりした表情で離婚する。離婚を知らない夫の両親や知人の集まりには妻の顔をして参加し、不倫の末に男を勝ち取ったはずの親友キム・ヒエが腸を煮えくり返らせるようなこともよくする。それに離婚を待ってましたとばかりに長年自分に想いを寄せていたという男性にも出会う。離婚は不幸の始まりではなく、妻にとっても新しい恋愛の始まり、という展開になっているから面白い。「私の人生から夫を退場させ、私を好きと言ってくれる格好よく経済的余裕もある年下彼と子供と一緒に第2の人生を歩む」、これって夫婦喧嘩の後に一度は夢見る主婦のファンタジーではないだろうか。
韓国で不倫ドラマが人気なのは、このように糟糠の妻が負け犬ではなく、離婚を契機に悪戦しながらも新しい人生にチャレンジして生まれ変わるという成功ストーリーになっているからだ。
2000年に大人気だったドラマ「アジュンマ(おばちゃん)」や2004年の「2度目のプロポーズ」はまさにその典型。離婚した専業主婦の妻たちは、子供を養うために手探りでお店や会社を興し、周囲に助けられてとんとん拍子で成功していく。これはまさに現実離れしたファンタジーなのだけど、「私もそうなるかも?」と感情移入してしまうのは仕方ない。
韓国の離婚率は3組に1組というほど高い。筆者の周りも出戻り組、ドルシン(ドラオンシングル、戻ってきたシングル)が増えているし、子連れ再婚カップルも増えている。だがテレビのドキュメンタリー番組などを観ると、離婚して子供を抱え、養育費ももらえず貧困に苦しむ母子家庭は少なくない。韓国では、離婚後養育費を払うよう強制はできない。物価は日本と変わらないのにパートの時給は1時間400円〜700円、失業率の高いこの国で主婦が再就職するのは至難の業だ。なので、やっぱり離婚だけは躊躇する奥さんも多い。
もっと面白いのは、SBS「私の男の女」では、不倫の末に結ばれた男女が日常を一緒に送ることにより、またお互いに飽きてしまうという内容に差し掛かっていること。女は男とままごとのような新婚生活を楽しみたかった、だが男は「蒸したじゃがいもが何でこんなにおいしくないんだ」「掃除はしないのか」と些細なことも元妻と比較し、肉体的関係以外の日常的な生活は噛み合わなくなる。まさに「ざま〜みろ〜」とも言うべきシーンが続く。不倫のその後を描いた物語りについては、あまりドラマの素材になることがなかったせいか、かなり新鮮だ。
●いよいよヨン様の出番となるか!?
韓国のドラマはご存じのとおり、“通事故”“記憶喪失”“異母兄弟の恋”“アメリカ留学”“偶然の再会”という基本的なルールに沿わないと視聴率を取れない。不倫ドラマもこれに負けず「またかよ!!」という場面が多発する。でもストーリは関係ない。セカンドライフじゃないけど第2の自分というか、多くの主婦が自分の喜怒哀楽を投影できるキャラクターがいるドラマはヒットする。ドラマを観ながら、同時に視聴者掲示板に主人公になりきり意見を書き込む廃人の中に主婦が多いのも頷ける。
ヨン様の「太王四神記」が放映延期となり、その埋め合わせとしてMBCで放送されるドラマ「賢母良妻」もタイトルとは裏腹に不倫物だ。主婦向けファンタジーである不倫ドラマを観ながら本物のファンタジー大作ドラマを待つというのも悪くないね。6月こそはヨン様の出番となることを祈りたい。
(趙章恩)
■著者紹介
趙章恩(チョウ・チャンウン):韓日ITジャーナリスト
3歳から高校卒業まで韓日を行き来する生活で、中学生の頃から通訳として活躍。韓国大手商社の日本担当を経て現在ITジャーナリストであると同時に、世界中から殺到するIT視察団を切り盛りするコーディネーターとしても多忙な毎日を送っているが、寝る時間を削っても毎日最低2時間はドラマを見てしまう「ドラマ廃人」。ITよりドラマや芸能界事情のほうが詳しいのではと疑われている。日経新聞「ネット時評」、BCN、夕刊フジなどに連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め!」(アスキー刊)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ!」(ドナン出版)など。
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