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拡張現実(AR)が形成する未来のコミュニケーションとは

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拡張現実(AR)が形成する未来のコミュニケーションとは
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  • マーク・アインシュタイン (C) フロスト&サリバン
 拡張現実(AR:Augmented Reality)は豊富かつインタラクティブなユーザー体験を提供する機能によって、次世代の情報伝達手段として台頭していくだろう。現在注目を集める新興技術の中でも、ARはあらゆる種類のコミュニケーションやコンピューティングを根底から変革し、2020年に向けて様々な産業のビジネスや情報伝達手段を大きく変化するテクノロジーとして挙げられる。

◆2020年までに大きな成長が見込まれるAR市場

 そもそもARとは、現実世界の物事にコンピュータによる情報を重ね合わせ、現実世界を拡張する技術である。VR(バーチャルリアリティ:Virtual Reality)が現実に存在しないものをそこにあるかのように知覚させる技術であるのに対して、ARは実在するものに対してコンピュータが情報を加え、さらに深い知覚を可能にするものである。

 ARのビジネスでの活用や消費者間での利用は現在まだ初期段階にあるものの、将来AR市場は大きく成長し、教育、製造業、ヘルスケア、不動産といったセクターを中心に幅広い活用が見込まれている。世界各国での「ポケモンGO」の爆発的な人気は、位置情報型ARの幅広い浸透を実証すると同時に、ARの普及が将来的に拡大する可能性も示した。フロスト&サリバンの分析では、ARの世界市場規模は2020年までに1,200億米ドル近くに成長する予測であり、VRと比較しても大きな成長を遂げる見通しとなっている。

 AR市場の成長の背景には、消費者市場を含む多様なセクター向けの幅広いARアプリの誕生や、ARに向けた投資拡大や関心の高まりが挙げられる。ARのスタートアップに向けた投資額は2015年に世界全体で10億米ドルを超えているほか、米フェイスブックや米マイクロソフトなどの主要な企業もAR技術に対して多額の投資を行っている。

◆ARの種類と幅広い活用用途:「モバイルAR」、「空間型AR」、「ウェアラブルARデバイス」

 ARは既に様々な分野で導入されている。スマートフォンなどのモバイル端末を利用する「モバイルAR」は現在最も一般的なものとなり、多くの場合GPSシステムやRFIDタグと一緒に用いられ、教育や医療、製造業、小売やゲームなどの分野で導入されている。例えば、医療の分野では、皮膚がんの兆候をチェックするモバイルARアプリは、ほくろが悪性か良性かを判断するツールとして利用されている。製造業では、複合現実感システム(Mixed Reality System)を用いて実在する製品の3Dイメージを映し出すことで、技術者が製品のデザインや製造工程の確認を行う上でのサポートを提供している。

 ユーザーの背景にリアルタイムでイメージを映し出す「空間型AR」の例では、ユニクロの一部の店舗で導入されているAR技術を用いた「バーチャル試着システム」がある。このシステムでは、1つの商品を着て鏡の前に立ち、鏡の横にあるタブレット端末で別のカラーを選択すると、鏡の中の商品の色が変化するという、全く新しいショッピング体験を提供している。

 また、グーグルグラスなどに代表される「ウェアラブルARデバイス」は、より高度な機能を備えたARデバイスである。航空機の米ボーイングはワイヤーハーネス施設においてグーグルグラスを利用しており、商用機のワイヤーハーネスの組み立て手順をAR搭載のメガネに映し出すことで、紙ベースのマニュアル削減などの作業効率化を試みている。

◆より充実した学習体験をARで提供

 ARの様々な活用用途の中でも、教育やチュートリアル目的での活用は、新たなビジネス機会を生み出す分野として注目される。フロスト&サリバンの分析では、2018年~2020年頃までに教育現場でのARの活用が拡大し、ARは教育産業に新たなビジネス機会をもたらす主要なテクノロジーの1つに含まれている。

 教育現場でのARの活用例では、英エクスター大学はARブラウザの「Layer」を通じて、新入生に向けてキャンパス内の主要スポットについての情報提供を行っている。また、ARを用いた3Dイメージを利用することで、科学や数学の概念についてより分かりやすく説明することが出来る。

 AR技術が生み出す視覚化されたイメージは、特定の手順や技術の習得が必要な仕事において、より充実したトレーニングを提供できる。例えば、医療の分野では、医師や看護師に向けて実施する研修において、ARを用いて人体構造を視覚化したイメージを映し出すことで、人体の構造に関するより深い理解を得ることが出来る。また、航空・防衛産業においても、パイロットが航空機の操縦方法や複雑な任務を習得するためのトレーニングを、より安全な環境で実施できる。

 さらに、一般消費者向けの製品に関する手引きにおいても、ARを活用することでより高度で分かりやすいガイダンスを提供することが出来る。組み立てブロックのレゴの店舗では、製品のパッケージを店内の画面にかざすと、パッケージ上に完成品の映像が現れるようになっている。自分で組み立てが必要な家具を購入した場合にも、組み立て方法のチュートリアルをスマートフォン上で視覚化された状態で見ることが将来できるようになるかもしれない。

◆ARが生み出す新たな市場競争とは?

 現時点では、ARの利用はB2Bが主流となっているが、将来消費者市場でのAR利用が拡大した場合、新たな市場競争が生み出されることになるだろう。例えば、テレビを購入するために家電量販店を訪れた際に、店頭のテレビの写真をAR搭載のスマホアプリで撮影し、画像認識技術を通じて、アマゾンで購入した場合の価格をその場で知ることが出来るようになるだろう。結果として、家電量販店は店舗内で顧客を失う事態も起こり得る。別の例を挙げると、ウェアラブルARデバイスを用いた画像認識技術によって、観光地を訪れている旅行者に対して、音声で特定の場所や歴史などの情報を提供することができ、バーチャルのツアーガイドが可能となる。その結果、将来もしかしたらツアーガイドは必要なくなる時代が訪れるかもしれない。この様な消費者向けARの普及が拡大すれば、ARはオンラインとオフラインの両方でより激しい市場競争を生み出すことになるだろう。

◆ARが拓く未来のコミュニケーション

 ARの普及拡大には、未だに多くの課題が存在する。ARを用いたビジネスモデルはまだ不透明であり、ARを使用した製品の数が限られていることや、ARの導入にあたる多額のコストといった課題が存在する。さらに、個人情報に関するプライバシー保護の問題も、大きな課題である。

 しかし、この様な課題を踏まえても、ARはあらゆる分野における情報伝達を大きく変える技術となる。さらに、視覚以外の聴覚や嗅覚、触覚、味覚のあらゆる五感に対してARは情報伝達を行うことができ、より多くの分野での活用が進むだろう。ポケモンGOの大ヒットによって、多くの企業がARを利用した製品の開発を行い、来年以降により多くのARを搭載した製品やサービスの誕生が期待されている。AR技術の進化は今後さらに数年かかる見込みであるが、スマートフォンベンダーからの高い関心は期待をもてるものであり、次世代のデバイスはARが持つマーケットポテンシャルを最大限に発揮できるだろう。

●プロフィール●
マーク・アインシュタイン
フロスト&サリバン ジャパンICTリサーチ部門ディレクター
通信・デジタルメディア業界において10年以上の経験を有し、マーケットや経営コンサルティング、経営分析における専門知識を持つ。主な専門領域は、スマートフォンおよびタブレット端末の市場動向、モバイルコンテンツ分析などが含まれる。
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