越境ECから訪日客まで、中国人向けSNS戦略の落とし穴 | RBB TODAY
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越境ECから訪日客まで、中国人向けSNS戦略の落とし穴

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CM-RC.com 中国市場戦略研究所では2016年の夏に、中国・上海で中国人パワーブロガーを集め、日本のスキンケア商品をネット中継しながら情報拡散した
  • CM-RC.com 中国市場戦略研究所では2016年の夏に、中国・上海で中国人パワーブロガーを集め、日本のスキンケア商品をネット中継しながら情報拡散した
  • 中国人向けでは同じランドセルでも、カラーバリエーションの用意で売り上げが全く変わることがある
  • 2016年の夏に東京・新宿のドラッグストアで撮影された、中国人の爆買いの姿
  • CM-RC.com 中国市場戦略研究所代表の徐向東氏
【記事のポイント】
▼中国のSNSにアカウントを作って情報発信しても意味はない
▼マーケティング失敗の要因の一つは、国内外でのターゲットの見誤り
▼ソーシャルバイヤーなどのインフルエンサーを活用する


■中国向けSNSマーケティングでは情報発信する人が重要

 中国人の消費行動に大きな影響を与えるのは、テレビや新聞、雑誌の広告ではなく、SNSによる口コミだと言われている。実際にWeibo(ウェイボー)やWeChat(ウィーチャット)といった、中国のSNSで公式アカウントを取得し、情報発信に力を入れる日本企業も多い。しかし残念ながら、その多くが成功したとは言えないようだ。

 では、なぜ失敗してしまうのか? 中国人向けマーケティングに詳しい「CM-RC.com 中国市場戦略研究所」の代表、徐向東(じょ・こうとう)氏は次のように指摘する。

「日本企業の情報発信の仕方はとても丁寧で、わかりやすく、商品を魅力的に見せています。それでも失敗してしまうケースが多いのは、中国人はSNSで企業のアカウントではなく、一般ユーザーの口コミに注目しているからです。それを理解していない日本の企業は多いと感じています」

 徐氏によると中国人には横並びの意識があり、知人が持っている物を自分も欲しくなる一方、自分が愛用している物を他人に勧めたくなる傾向が強いという。つまり“口コミ”が先にありきで、その情報共有がSNSというツールで活発化しているのが現状といえるだろう。SNS上で多くの人とつながりを持つ、いわゆるインフルエンサーに商品を取り上げてもらえれば、集客につながるような情報の拡散が期待できる。

 また、口コミを発信した“人”を重視するため、同じ商品であれば店ではなく“その人から購入すること”にも抵抗がない。SNSなどを活用した個人取引のC2Cが盛んで、これをビジネスにする“ソーシャルバイヤー”が存在するのも中国ならではと言える。

 最近では、現地のソーシャルバイヤーやインフルエンサー、著名なブロガーを日本企業の販促向けに紹介するサービスが登場している。しかし、これを安易に利用することに、徐氏は警鐘を鳴らす。

「どんなに有名で、拡散力がある人でも、その人と商品のターゲットにミスマッチがあれば効果は期待できません。例えば、日本の若者向けに売れた商品があったとして、そのPRを若者のソーシャルバイヤーやインフルエンサーに依頼しても、その商品が中国人の若者にウケるとは限りません。まずは、売り込みたい商品を中国人の手に取ってもらい、使ってもらい、顧客ターゲットを見極めることが大切です」



■中国人への売り方は中国人がよく知っている

 商品を中国人の手に取ってもらい、使ってもらう機会を設けることは、中小企業にはなかなか難しいように感じられる。そこで、徐氏が提案するのが、訪日中の留学生や旅行客への声掛けだ。

「私はこれまで、多くの日本企業の中国向けマーケティングのお手伝いをしてきました。そこで感じるのは、日本の企業の方々はどうしても机上の空論と言いますか、会議室で物事を決めていこうとする傾向があることです。まずは顧客ターゲットである中国人と接して、その現場を見て欲しいですね。中国人が日本製品を買っている場に行って、なぜ今その製品を買ったのかを中国人に尋ねれば、やるべきことがわかってくるはずです」

 ある免税店でランドセルを店頭に置いてもなかなか売れない一方、あるスーツケース店では中国人が次々とランドセルを“爆買い”していった例があると徐氏は明かす。両店の違いは、扱っていたランドセルの色だ。

「免税店では日本でもお馴染みの黒や茶色が売られていましたが、スーツケース店ではピンクを扱っていました。中国人は派手な色が好きですし、大気汚染で煙る街中ではピンクが目立つので中国人に好まれたのです。こういうことは中国人に教えてもらわなければ、日本人にはわかりませんよね」

 先に触れたとおり、C2Cが盛んに行われている中国では、SNSでの横のつながりが強くて広い。どの中国人でも何人かのソーシャルバイヤーやインフルエンサーとつながっている。つまり、その商品の販促に適したソーシャルバイヤーやインフルエンサーを紹介してもらうことも可能だと、徐氏はアドバイスする。

 メイド・イン・ジャパンは確かに中国人からの人気が高い。しかし、日本で売れる商品が、そのまま中国人にも売れるとは限らない。重要なのは中国人に対するモニタリング。街角で声をかけるだけなら、予算のない中小企業でも十分に実現できるだろう。その後にSNSを使い、顧客ターゲットにリーチできる中国人のソーシャルバイヤーやインフルエンサーから情報発信することで、初めて販促効果が期待できるようになるわけだ。
《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》
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