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養殖モノを海外で売る!キャビアの商機は東南アジアに

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長期熟成したキャビアは、フレンチの一流シェフをもうならせた品質
  • 長期熟成したキャビアは、フレンチの一流シェフをもうならせた品質
  • トレーサビリティに力を入れ、個体差のある卵の全ロット品質管理に取り組んでいる
  • ジャパンキャビアでは生産量拡大に向けて新工場の建設を進めている
【記事のポイント】
▼欧米が主要生産国のキャビアは、東南アジア圏での流通で日本に分がある
▼和食店で使われている食材であることが、販路と認知の拡大に一役を担う


■国産キャビアの輸出という、前例なき挑戦

 原材料となるチョウザメが陸上でも養殖可能なことから、山間部における地方創生の観点からも注目を集める国産キャビア。これが着実に生産量を増やすとともに、認知を広げつつある。ホテルやレストランへの業販も進み、16年5月に開催された伊勢志摩サミットでは、志摩観光ホテルでの食事会に採用された。

 キャビアの養殖は各地で行われているが、その代表的な産地となっているのが宮崎県だ。中心的な役割を果たしてきた宮崎キャビア事業協同組合では、16年5月にジャパンキャビア株式会社を設立。資金を調達するとともに、新工場の建設を進めている。同社で代表取締役社長を務める坂元基雄氏によると、16年度の生産予定量は約300キロ。これを数年後には2~3トンまで増産する計画だ。

 生産規模を拡大するとなると、気になるのが販路だが、坂元氏によると「すでにある程度は見えています」とのこと。その一つとして同氏があげていたのが海外への進出だ。

 これについては、宮崎キャビア事業協同組合の時代による活動が一役を担っている。実は日本ではかつて、キャビアの輸出が禁止されていた。これは、ワシントン条約締約国会議決議によって定められている輸出制度に、日本が対応していなかったことに起因している。しかし、同組合の働きかけがきっかけとなり、水産庁が養殖・加工の施設登録を、経産省が輸出者の承認を行う仕組みを確立。15年9月から輸出が解禁となった。

■出荷日数の有利をいかした商品づくりが最大の武器に

 ジャパンキャビアでは現在キャビアの輸出に向けて、販路開拓などに動いている。17年には香港への出荷が、すでにある程度決まっているとのことだ。

「香港は関税があまりかかりませんし、輸入に対する衛生面などの規制も比較的に緩やかです。スーパーで普通にキャビアが売られているなど、現地でも馴染みのある食材なので、最初の出荷国としては最適だと考えました」

 なお、現時点では香港や日本国内を含めて、世界的にはロシア産やイタリア産のキャビアが広く普及している。では、これらの商品に対して、日本産キャビアにはどのような競争力があるのか? その武器の一つとして坂元氏があげたのが加工処理の違いだ。同氏によると現在流通している多くのキャビアでは、長期保存を行うために高塩分処理が行われるほか、低温殺菌や防腐剤の添加が行なわれているという。これがキャビア本来の旨みを損ねる原因となっていた。

「よくキャビアの味は“塩辛い”と言いますが、これは長期保存のために生まれた二次的なものです。我々は加工時に岩塩のみで、極薄く味付けを行っています。これが、多くの料理人の方に高く評価されているんです」


 香港ではすでに試食会を行っているが、同社のキャビアは現地の高級レストランやホテルでも高い評価を受けたという。香港までは翌日から翌々日での出荷が可能なため、現在日本で流通しているキャビアを、そのままの品質で納品できる。価格は海外勢に比べて、やや高いぐらいの差で勝負できるとのことだ。今後出荷量が増えれば価格もこなれ、ミドルクラスのレストランでも、同社のキャビアが採用されるイメージはあるという。

 また、香港を含むアジア圏では“日本産=高品質”というイメージが定着しており、現地での反応が良い理由の一つになっているという。これについては、海外では“和食=高級レストラン”という位置づけにあることも後押ししているようだ。その中でも、実は和食店では料理にキャビアを使うシーンも多く、主要な取引先の一つとして商談が進んでいるという。

■品質を保てる出荷距離を研究開発で延ばす

 ジャパンキャビアでは今後、香港への出荷を皮切りとして、シンガポールやタイなどの東南アジアにも進出。急速に拡大している富裕層のニーズに応えていくという。その先には世界最大のキャビア消費国であるアメリカを、ある程度意識しているようだ。

 通関などの手続き上の問題もあって、出荷にはタイであれば3日、アメリカで4日ぐらいの日数がかかるという。その中でも高塩分処理などを行わないキャビアを納品できるよう、現在建設が進んでいる新工場では研究を進めていく。また、衛生面などの管理体制も強化しており、詳しい話は聞けなかったがIoTの導入も行っていくようだ。海外での要求が高いトレーサビリティについても、すでにキャビア一瓶から、その親となったチョウザメ一匹までをたどれる仕組みを確立している。

 経済成長が著しい東南アジア圏において、輸送期間やコストについては欧米よりも日本にアドバンテージがある。アジア圏での生産が進んでいないキャビアは、この点で国際競争力を確立しているといえるだろう。高級品であるということも、急速に増える富裕層のニーズにマッチしそうだ。この部分では意外にも和食店で実際にキャビアが使われていた部分も大きい。生産主要国との位置関係を見ながら、和食店で使われている食材をあたっていくと、まだまだ新たな輸出ビジネスのチャンスが隠れていそうだ。

【養殖モノを海外で売る!:2】キャビアの商機は東南アジアに

《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》
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