プリンスホテルから学ぶインバウンド向けリノベーション | RBB TODAY
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プリンスホテルから学ぶインバウンド向けリノベーション

ビジネス 経営
新宿プリンスホテルのフロントカウンター
  • 新宿プリンスホテルのフロントカウンター
  • 新宿プリンスホテルのゲストラウンジ
  • サンシャインシティプリンスホテルの「早朝到着・深夜出発便待合室」
  • サンシャインシティプリンスホテルの「ムスリム祈祷室」
【記事のポイント】
▼混雑解消と待ち時間短縮はマスト
▼会話のきっかけをつくる。日本各地の季節感あふれる風景を高品質4K映像で演出
▼他言語対応で安心感を
▼祈祷室を設け、イスラム教徒に対応
▼リラックス&和の趣を両立


■利便性、快適性、日本らしさを追求

 増加する訪日外国人旅行者に向けて、ホステルの開業やリノベーションが相次いでいる。中には、インバウンドに特化した内装やサービスに力を入れているところもあるが、現場では一体どのような演出が、外国人旅行者に求められているのか? そのヒントの一つとして知っておきたいのが、ホテルにおけるインバウンド対策だ。今春に改装を終えた帝国ホテルをはじめ、日本各地でインバウンド需要を見込んだホテルの新改築が行われている。

 国内に41の宿泊施設を展開する「プリンスホテル」も、訪日外国人旅行者の受け入れ体制を進めているホテルの1つ。中でも立地とアクセスの良さで外国人の利用が多いことから、その対応強化を推進しているのが新宿プリンスホテルだ。

 同ホテルの宿泊者に占める訪日外国人客の割合は、延べ人数ベースで13年度が63.2%、14年度が70.5%、15年度が74.7%と拡大している。こうした背景から施設の一部を改修し、2016年2月1日にリニューアルオープンを果たした。

 リニューアルでまずポイントとなったのは利便性の向上。インバウンドを含む客数増を見込み、フロントカウンターを約3メートル拡張し、一度に対応できる組数を増やした。宿泊者の荷物預かりや配送、周辺の観光案内などを行うベルデスクのカウンターも拡張し、混雑解消と待ち時間短縮を図っている。

 次のポイントはおもてなしの空間づくり。地下1階フロントカウンター背面に55インチで8面分、幅約5メートル、高さ約1.4メートルのパノラママルチモニターを設置。日本各地の季節感あふれる風景を、高品質4K映像で楽しめるようにした。

 そのほかにも、地下1階にはレイアウトやゾーニングを変更して、約90平方メートルのゲストラウンジを新設。ロビーフロア、ゲストラウンジの内装は木目調にし、ゆったりとした落ち着きのあるフロアに変更した。この効果はさっそく表れたようで、同ホテルで事業戦略を担当する宮田裕志氏は次のように語る。

「パノラママルチモニターに映る日本の風景を見て興味を持たれたお客様から、どこの風景かといったご質問をいただき、会話のきっかけとなっております」


 多言語対応にも取り組み、中国語・韓国語・タイ語が話せるスタッフを採用。外国語が話せるスタッフはそれが利用客にわかるようにバッジを着用するほか、その時点で何語が話せるスタッフがいるか一目でわかるよう、館内に設置したディスプレイで表示。安心感を持って滞在できる空間づくりを意識した。

 また、日本ならではのおもてなしにより、訪日外国人旅行者の満足度を高めるべく、リニューアルオープンから旧正月期間までの数日間は、外国人スタッフを含むフロント、ベルデスクスタッフ数名が着物姿でお出迎え。日本の伝統楽器である琴をロビーフロアで生演奏するなど、日本の文化“和”を利用客に喜んでもらえる取り組みも行った。

 観光、レジャー目的の訪日外国人旅行者の増加に合わせ、宿泊定員を増やすためにシングルルームを削減。代わりに個人でホテルを予約するカップル、ファミリーの利用を想定し、セミダブルタイプの客室を増やしたという。

■和の雰囲気と、自国にいるようなリラックス空間を両立

 新宿プリンスホテルと同様に、インバウンド対策に取り組むサンシャインシティプリンスホテル(東京都豊島区)も、施設の一部の改装工事を進めている。今年3月に完了した第1期改装では、最上部の5フロア(33階~37階)に位置する180客室を「パノラマフロア」として全面改装。高層階からの眺望を楽しめるように客室のソファやデスクの配置を変更し、専用チェックインカウンターや専用エレベーターを設置。国内外からのワンランク上の個人旅行者をターゲットとした快適性を重視し、3月19日にリニューアルオープンした。

 今年5月~18年3月の約2年間で実施する第2期改装は、6~24階の18フロア659室を「シティフロア」として改装。連泊や長期滞在型の宿泊客の利用にも対応するよう、一部客室ではハンガーやテレビを壁掛けタイプに変更。ベッドも下に荷物が収納できるタイプを採用するなど、居住空間を広げる工夫を図っている。ほかにも、一部琉球畳を取り入れた和室と和洋室を全10室用意し、客室やフロアの絨毯に花火や飛び石をイメージした柄を取り入れるなど、和の雰囲気を演出する。

 また、利便性の向上を図るべく、「早朝到着・深夜出発便待合室」を新設する予定。LCCの参入や各国時差の関係などで、早朝到着や深夜出発が多いと思われることから、到着後、出発前までの空き時間を有効活用してもらうための空間がホテル内にあることは、利便性に繋がると考えた。

 例えば、チェックインまでの空き時間やチェックアウト後、リムジンバス出発までの空き時間など、利用客が日本滞在中の空き時間をうまく活用してもらえるための空間として用意している。


 さらに、「ムスリム祈祷室」を用意することで、イスラム圏の宿泊者の利用にも配慮。今後、2020年に向けて、イスラム圏からの利用も増加する思われるため、その際の受入体制を強化するべく、実際、他国に行った時に何があれば助かるか、ストレスフリーで過ごしてもらえるかを検討した。

 その結果、より自国での生活習慣に近い空間を提供することは、ストレスフリーな旅行ができる大きな要素と考え、その実現化に向け、施設を整備し受入体制を整えることで、利用客の満足度やホテルの知名度が向上し、新たな顧客層に繋がると考えている。

 同ホテルで事業戦略を担当する浜田真輔氏は次のように語る。

「年間通して、ほぼ毎日のように10本前後の訪日外国人団体客のご予約があり、訪日外国人旅行者の利用は全体の約6割を占めています。20年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、今後さらに利用増加が見込まれることを見越し、施設の改装を決断しました。日本らしさをイメージしてもらえるように、客室内の装飾に和モダンを意識した絵柄を取り入れる一方で、自国で生活しているかのようなリラックスできる空気感を提供するこが大事だと感じています」

■新宿、池袋の両プリンスホテルから学ぶインバウンド向けリノベーション

 身体的な特徴や意識、習慣などから日本人はコンパクトサイズにそれほど抵抗を感じない。一方、外国人は日本人と比べてゆとりのある大きなサイズを好む傾向にある。そこで両ホテルともベッドや客室をはじめ、ラウンジなどのサイズを大きく変更したのがインバウンド対策のポイントとなっている。

 また、多言語対応はもちろん、「ムスリム祈祷室」の新設によって異なる宗教・習慣・文化に対応するなど、外国人が異国の地にいながら不自由することがないような配慮も見逃せない。そんな中で日本らしさの演出を随所に見せることで、訪日の満足度を高めようというわけだ。

 施設の改装・改修やサービスの改善にはそれなりの資金が必要となるため、これらを容易に真似することは難しい。しかし、訪日外国人旅行者にどのようなニーズがあり、どのように対策をとれば良いか、宿泊施設のインバウンドのためのリノベーションに役立てたい。

~インバウンド向けホステル浸透中!:4~プリンスホテルのおもてなしは、どこが違う?

《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》
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