パナソニックは3日、CMOSイメージセンサに関わる3つの新技術を発表した。従来のイメージセンサの受光部に使用されているシリコンフォトダイオードに代わり、有機薄膜やアバランシェフォトダイオード(APD)を使用することで、高感度や広ダイナミックレンジを実現する技術となる。 今回発表されたのは、「有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサ向け高機能グローバルシャッタ技術」、「有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサによる広ダイナミックレンジ化技術」、「0.01ルクスの暗い場所でも鮮明なカラー撮像を実現したAPD-CMOSイメージセンサ」の3つ。 従来の裏面照射型イメージセンサでは、光の電気信号への変換(光電変換)と信号電荷の蓄積は、ともにシリコンフォトダイオードで行っていた。これに対し有機薄膜を用いた有機CMOSイメージセンサでは、光電変換は有機薄膜で、信号電荷の蓄積は下層の回路部でそれぞれ独立して行う。 有機薄膜は富士フィルムが開発したもので、光吸収係数が大きい有機薄膜を使用し、シリコンフォトダイオードの数分の1となる0.5μmまで薄膜化を実現。30~40度に制限されてされていた入射光線範囲を60度に拡大できる。またレンズの設計自由度が増すので、カメラの高性能化や小型化も可能になる。 こうした特徴を生かし、同社は今回発表した技術の1つ目である、「有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサ向け高機能グローバルシャッタ技術」を開発した。従来比約10倍の明るさまで忠実に画像を撮像でき、高速な被写体を正確に捉えるとともに、動き方向の検出(モーションセンシング)も可能だ。 なお、グローバルシャッタとは全画素同時タイミングで行うシャッタ動作のこと。従来のCMOSイメージセンサは1行ごとにシャッター動作を行うローリングシャッター動作となる。 2つ目の「有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサによる広ダイナミックレンジ化技術」では、真夏の炎天下における開放シャッタ時や逆光時などの明暗差の大きいシーンを、従来比100倍のダイナミックレンジ123dBまで時間差なく撮影することが可能だ。 3つ目の「0.01ルクスの暗い場所でも鮮明なカラー撮像を実現したAPD-CMOSイメージセンサ」では、受光部にアバランシェフォトダイオード(APD)を採用。受光部で光電変換された光電子をAPDで増倍することで、星明り(照度0.01ルクス)程度の暗い場所でも鮮明なカラー撮像が可能になる。 同社は今後、これらの新技術を監視・車載用カメラ、業務放送用カメラ、産業検査用カメラ、デジタルカメラなど幅広い用途に提案していくという。