【ひとりでいけるもん!Vol.5】ひとりで食べる原宿クレープ | RBB TODAY
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【ひとりでいけるもん!Vol.5】ひとりで食べる原宿クレープ

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歩けないほど込み合う原宿・竹下通り
  • 歩けないほど込み合う原宿・竹下通り
  • アイドルショップは全て女性向け。今の時代にブロマイドがあることにも驚く
  • 目的地のクレープ屋に到着
  • まさに蛇のように蛇行して列をなしていた
  • Evernoteを見つつ「あの案件は」的な表情につとめる
  • 長年憧れていたクレープを購入!
  • 美味しくて思わず笑顔!
  • 我に返り「あの案件は」的な表情で食べた!
 九州出身の私は上京したら、してみたい、行ってみたい、という数多くの憧れを持っていた。渋谷のスクランブル交差点を歩いてみたいというのもそうだし、満員電車に乗ってみたいというのも憧れのひとつだった。そんな憧れの中に「原宿でクレープを食べたい」というものがある。もう上京して10年になるのだけれど、この憧れは未だに叶っていない。

 それは単純に原宿でクレープを食べるのが恥ずかしいからだ。複数人で食べるのならいいのだけれど、誘う相手がいないので、食べるならひとり。それは考えただけで「あ~」となる。そのため今も憧れは憧れのままなのだ。それに原宿はどうしてもオシャレなイメージがあって、田舎者の私には近づきがたい雰囲気がある。

 しかし、今の私にはオシャレへの第一歩であるスマホがある。原宿のオシャレにも負けないと思うのだ。さらに最近、私はオシャレのマストアイテムであるストールを購入した。スマホにストール。十分な戦力だ。ということで、今なら戦えるはず、と自分に言い聞かせ、ひとり原宿へと向かった。

■竹下通りは今日も渋滞

 この日の原宿も多くの人でにぎわっていた。カップルは手をつなぎ、女性グループは盛り上がりを見せ、外国人観光客はそのにぎわいを写真に収める。そんな中を私はひとりクレープ屋に向かって歩いた。憧れを叶えるためだ。今となってはいきさつを思い出せないのだけれど、九州で思い描いた憧れは「原宿でクレープ」だった。渋谷でも新宿でもなく原宿。なぜなのだろう、そんなことを思いながら竹下通りを歩く。

 竹下通りは、男性もいるけれど、それはカップルの彼氏で、圧倒的に女性が多かった。その女性の多くはスカートをはいている。パンツ姿の女性がいないのだ。両サイドにはオシャレな洋服屋や、これまたオシャレな雑貨屋などが並び、私にとっては完全なアウェー。アイドルショップもあるのだけれど、それも女性向けで男性アイドルの写真が並ぶ。中には、サッカー選手や水泳選手のブロマイドもあって、需要が多様化していることがわかる。いろんな趣味の人がいるようだ。

 本日、私が目指すクレープ屋はテイクアウトの専門店で、竹下通りの真ん中辺りに位置する。オシャレが集いし場所を絶対に歩かなければたどり着けないお店だ。でも、この日はオシャレな街で浮かないように、赤いストールを巻いてきた。上京10年で気がついたオシャレの極意。それはストールである。ストールを卷くとオシャレに見えるのだ。ファッション雑誌を見ても、モデルはだいたいストールを卷いている。

 さらにこの日はスマホで「Evernote」を見ている。Evernoteとはアイデアを保存できるアプリである。ストールにEvernote。オシャレの権化だ。絶対にクリエイターに見えていると思う。つまり原宿に馴染んでいるはずなのだ。オシャレがクレープを食べにきたのだ。甘いものは脳の回転をよくすると聞く。アイデア出しの途中という設定だ。

■あの案件は、的な表情で!

 時間はちょうどおやつ時ということもあって、たどり着いたクレープ屋は列をなしていた。並んでいるのはカップルと女性のグループ。男性ひとりは、頑張ったのだけれど、自分以外に見つけることはできなかった。壁には人気ベスト5のメニューが書かれた紙が貼られ、並んでいる人たちはそれを見ながら「なに食べる?」と話し合っている。私はひとりだから話し合わないけれど。

 私はEvernoteを見つつ、チラチラとメニューを見ながら何を食べるか検討を重ねた。上京10年目にして憧れが実現するチャンスだ。上京前に夢見ていたシチュエーションは彼女とだったけれど、それはいないのだから仕方がない。何事においても臨機応変な対応が大切なのだ。今回の臨機応変な対応はひとりでクレープを食べる、である。それでも「原宿でクレープ」という憧れは字面のみを見れば十分に叶っている。

 メニューを決めながらもストールを卷いた私は相変わらず「Evernote」を見て、あの案件は、的な顔をしている。実際はイチゴもいいな~、でもバナナもはずせないな~、とクレープのことだけを考えている。甘いものが好きなので、ニヤけてしまいそうになるが、ここにいることを自然に思わせるためにも真面目な顔をして“あの案件は”、的な顔を保たなければならない。

■憧れていたクレープは美味しい

 10分ほど、女性グループとカップルにまぎれて待っただろうか。やっと順番が回って来たので「いちごチョコ生クリーム」を頼んだ。十分に迷った結果の選択だ。待つのはキツかったけれど、テイクアウト専門のお店なので「何名様ですか?」「おひとりですか?」と言ったやり取りがないのがいい。

 頼むとすぐにクレープはやって来た。クリスマスを意識した赤い紙に包まれたクレープ。原宿でクレープを買ったのだ。早速、道の端っこに立ち止まり食べる。美味しい。私はこれに憧れていたのだ。生クリームはどこまでも甘く、イチゴはどこまでも瑞々しかった。一心不乱に食べた。

 ふと我に返り、顔を上げると、目の前にクレープを食べているカップルがいた。彼氏が無言で自分のクレープを彼女の口元に差し出し、彼女が食べる。「美味しい」と彼女はいい、自分のクレープを今度は彼氏の口元に差し出す。「こっちも」と彼氏は言う。

 冬の冷たい風が私の赤いストールをなびかせた。でも私の長年の夢が叶ったのだ。原宿でクレープ。小学生の頃からやってみたかったことだ。そう思うと、赤いストールがなびいた様はヒーロー映画の一場面のように感じられた。また来よう。だって普通に美味しいんだもん。それに今はスマホというもはや彼女がいるのだから。

ひとり原宿クレープ
オススメ:★★★★
ハードル:★★★
ヒーロー感:★★★★★
《地主恵亮 》
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