【インタビュー】M2Mモジュールが家電市場のパラダイムシフトを加速する……アプリックス | RBB TODAY
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【インタビュー】M2Mモジュールが家電市場のパラダイムシフトを加速する……アプリックス

エンタープライズ 企業
ガイアホールディングス 代表取締役 郡山 龍氏
  • ガイアホールディングス 代表取締役 郡山 龍氏
  • 「JM1」
  • 春の展示会で披露された、JM1とコーヒーメーカの接続デモ
  • 春の展示会では、“何にでもつながる”ことをアピール。CEATECではより具体的に絞り込んで、製品化に近い状態のデモがみられるという
 大手家電メーカーがスマートフォンと家電製品を連動させた商品を発表して話題となった。国内の家電市場にも「スマート家電」の波が押し寄せてきたという見方もあるが、家電製品や業務用機器をスマートフォンと連動させるソリューションや、スマートフォン経由でクラウドサービスと連携させるソリューションは、実は特段新しいものではない。

 アプリックスが販売する「JM1」は、既存の自動販売機、業務用機器、家電製品、ゲーム機などに簡単に組み込めるタイプのM2M通信モジュールだ。JM1を使えば、家電製品とスマートフォンをリンクさせ、スマートフォンやクラウド上のアプリによってモニタリングや制御が可能になる。メーカーが製造段階からJM1を組み込めば、安価にスマート家電を実現できる。

 同社がM2Mモジュールの新しいコンセプトを発表したのはほぼ1年前である。その後2011年の12月にJM1の最初のバージョンが発売され、以降、モジュールの小型化や低価格化が進められている。今年8月に発表されたJM1V4では、単4電池2本分より少し小さいサイズの基板となり、価格も600円を少し越える程度となっている。

 小型で安価なため製品にも組み込みやすく、また入出力チャネルもフレキシブルで、完成品への後付けも難しくないため、JM1の発表後すぐに多くのベンダーが興味を示した。2012年の春ごろには業界媒体などにも取り上げられ、ワイヤレスジャパンやInterop Tokyoなどで、自動販売機の売れ行きのリアルタイムモニタリングやスマートフォン・タブレットをゲーム機のコントローラにしたデモを見た人も多いのではないだろうか。その後、同社のM2Mビジネスはどうなっているのだろうか。大手家電メーカーの参入により「スマート家電」市場が注目される中、アプリックスの親会社であるガイアホールディングス 代表取締役 郡山龍氏にあらためて話を聞くことができた。10月2日からのCEATECにも出展するとのことで、展示の見どころや新しい発表についても取材した。

■スマート家電はネットにつなぐだけにあらず

 まず、現在のM2M市場について同社はどのようにとらえているのだろうか。郡山氏によれば、この半年の間、市場は着実に進歩しており、スマートフォン、タブレット、携帯電話を別の機器や製品の周辺装置としてつなげるということは、もはや当たり前になりつつあるという。しかし、これは単にスマートフォンと機器を技術的につなげることが容易になっただけという側面が強く、現在はつないだ後になにをするのか、どうしたいのか、が問われるようになってきているとのこと。スマートフォンで家電が操作できる、といったことは単なる手段にすぎず、そこにプラスアルファの付加価値をいかに提供できるかが重要になる。

 アプリベンダーは、スマートフォンと家電製品やリアルな機器との接続をどうしたらできるかを考えるわけだが、専用インターフェイスを開発したりするには、よほど条件が揃わないと製品化やサービスインができない。同様に機器ベンダーもスマートフォンブームへの対応は検討しているが、アプリやサービスプラットフォームまで自前で用意するには、予算やビジネスノウハウの部分が障害となっている。

■アプリベンダーと機器ベンダーを融合する新しいエコシステムが生まれる

 JM1は、Bluetoothによって簡単にスマートフォンに接続でき、スマートフォン側からも簡単なアプリでJM1の汎用入出力チャネルを制御できる。つまり、JM1に接続された機器やセンサーを簡単に制御できるので、郡山氏は、「M2Mの市場はまさに次のフェーズに入っています。弊社でも取引先やパートナーである機器ベンダーとアプリベンダーをJM1を介したソリューションを通じて紹介したりマッチングすることで、非常に喜ばれています。」と述べ、新しいM2M市場において、JM1が両者のニーズを橋渡しの役目を果たしていることを強調する。

 同社は、このような取り組みをさらに広げるため、10月2日から開催されるCEATECにブースを出展する。今回のブースは2つのエリアに分割し、ひとつはエンドユーザー向けにスマートフォンと既存の電子・電気機器が接続されると、どのような世界が広がるのか、既存の機器の付加価値がどこまで広がるのかを体験してもらうコーナーに。もうひとつのエリアは、ハードおよびソフトベンダー向けに、デモ展示機器の内部や具体的な接続方法、さらに回路図やアプリのソースコードを公開して、製品やサービス開発に役立ててもらうプロフェッショナル向けのコーナーとする。

 さらに、会場では取材時には未発表の新製品の発表や展示も行われる予定。新製品は、価格やサイズの進化は当然ながら、発売されたばかりのiPhone 5にも応用可能なものだそう。詳細については、展示会場で確かめてほしいとのことだ。

■共通M2Mプラットフォームによって変わる家電市場

 さて、以上のようなスマート家電やM2M市場が広がってくると、われわれの生活やメーカーのビジネスモデルはどのように変わるのだろうか。

 まず、機器ベンダーがスマートフォン連動製品の開発をすることが容易になり、アプリベンダーも端末上のサービスだけでなく、リアルな機器や製品との連携がしやすくなると、家電などのビジネスモデルや開発スタイルが変わってくることが考えられる。例えば炊飯器には、メーカーのノウハウがつまったマイコンが内蔵されており、さまざまなごはんの炊き方が制御できるようになっているが、JM1のようなM2Mプラットフォームがあれば、メーカーは基本的なタイマー、温度センサー、加熱機能さえ備えた製品を発売すれば、細かい炊き方や各種の調理レシピは、スマートフォンのアプリやクラウドで処理することが可能になる。

 ここで考えられるひとつのシナリオは、機器とスマートフォン(もしくは通信モジュール)をつなぐ共通のプラットフォームがあれば、プリミティブな機能だけを持った家電機器メーカーと付加価値機能やサービスを提供するアプリベンダー、それにスマートフォンやタブレットの端末メーカーと通信キャリアをつないだエコシステムが構築できるというものだ。ユーザーからすると、値段やデザインなどさまざまな家電機器の選択肢が生まれ、その機能は利用するアプリによって自分のライフスタイルにあったものを選べるだろう。デザイン家電や量販店ブランドなどへの応用も広がるかもしれない。

■スマート家電市場で生き残るプレーヤーは?

 しかし、このエコシステムでは、既存の大手家電メーカーはどのプレーヤーとなるのだろうか。プリミティブな家電ハードウェアの製造業者だろうか。郡山氏は、そうではないという。このモデルにおいて、既存の家電メーカーの価値は大量生産ラインではなく、開発者の頭脳やノウハウが集約された制御ロジックでありアルゴリズムである。ならば、それをライセンスするなり、アプリベンダーにコアとなるアルゴリズムやサービスを提供する有料APIのプラットフォームプレーヤーとして振舞うべきだという。

 そして、「携帯電話のキャリアも、課金モデルとして成功していたクローズドなサービスプラットフォームから、スマートフォンではオープンなサービスによるARPビジネスに転換しました。同様に、最終的に家電メーカーは、このパラダイムシフトに対応しなければ、スマート家電のプレーヤーとして生き残れないでしょう」と、家電メーカーだけで完結させようとするスマート家電の限界について持論を披露してくれた。同社のM2Mプラットフォームによって、家電市場には間違いなく新しい風が吹く。郡山氏が言うように、近い将来、既存の家電メーカーがその座を奪われてしまう日が訪れるのか、今後の動きから目が離せない。
《中尾真二》
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