東邦大学と日本アイ・ビー・エムは3日、電子カルテシステムのテキスト情報や時系列データを分析するシステムを開発したことを発表した。 電子カルテシステムには、検査や治療などの医療サービスの内容、検査結果、診断名など、患者ごとにさまざまな形態で存在する大量の時系列データがある。さらに、医師が手入力で追加したテキスト情報もある。これらのデータを統合的かつ多角的に分析・可視化することにより、医療の質の向上や安全性の向上に役立つのではないか、という仮説のもと、東邦大学と日本IBMでは、昨年4月~12月の8か月間、共同で研究開発を行った。 東邦大学医療センター大森病院の電子カルテシステムで管理する、5千万件以上のレコードが基礎データとして利用された。最終的に、検査結果や診断名といった定型的な患者情報と、診療記録などのテキスト形式の記述から約94%の精度で抽出された「血圧」や「体重」などの情報を統合した分析システムが完成したという。 さらに分析システムでは、特定の疾病や検査値を有する患者集団の時系列的な変化と診療プロセスから、経過表分析、診療プロセスの俯瞰(パスウェイ俯瞰)、プロセス検索・分析などの多様な可視化・分析手法を行うことによって知見を獲得することができたとしている。この分析システムを活用した呼吸器疾患患者の東日本大震災による影響分析は、学会で発表済み。また、シミュレーションにおいて気管支鏡後の副作用事例や高脂血症後の副作用事例などの分析にも有効であることが確認されており、今後さらに多くの事例に適用する予定としている。