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【テクニカルレポート】集合知を活用するソーシャルメディア基盤……NRI ITソリューションフロンティア

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図1 多様化するWebサイト導線
  • 図1 多様化するWebサイト導線
  • 図2 トリプルメディアにまたがるシェアードメディア
  • 図3 NRIの企業向けソーシャルメディア基盤
 企業は今、ソーシャルメディアの普及によって複雑化したWebサイト導線に対応する必要に迫られている。すなわち、企業はソーシャルメディアに流れる顧客の声を分析し、顧客とともに価値を生み出すことが求められている。本稿では、顧客主導のソーシャルメディア運営を支える技術と、野村総合研究所(以下、NRI)のソリューションを紹介する。

 Facebook(インターネット交流サイト)やTwitter(短文投稿サイト)などのソーシャルメディアが普及するにつれて、検索サイトGoogleの役割が薄れつつある。Googleが実現したのは、広大なWeb空間におけるリンクを分析し、ユーザーが求めるコンテンツをランキング表示することであった。これによってWebサイトの導線が多様化し、企業はGoogleから自社Webサイトへの経路を最適化したり、Google上に検索連動型広告を出したりすることで対応してきた。このWebサイトの導線がソーシャルメディアによって大きく変化し、企業もその対応に迫られるようになった(図1参照)。

 Twitterに関して「1,000人をフォローすると違った世界が見えてくる」という言葉がある。現実には1,000人の投稿をすべて見ることは難しいが、思いがけずに自分にとって価値のある情報を見つけ、ひらめきや気付きを得られた経験を持つ人は少なくないだろう。人は偶然に発見される価値を期待してソーシャルメディアに群がるようになり、そこに新たなWebサイト導線が出来上がることになった。


■消費者主導で形成される集合知

 ひらめきや気付きを期待するユーザーは、Web上で流通するコンテンツをも変化させている。1980年代以降に生まれた10代、20代のデジタルネイティブと呼ばれる世代は、マスメディアによって流される情報に満足せず、自らツールを活用してWebなどからアクティブに情報を得ることを好む。ソーシャルメディア上では投稿された画像、コメント、評価などがコンテンツとして流通する。時には企業の商品、サービスや企業ブランドに対して言及する情報が拡散することによって、マーケットのトレンドが作られることもある。

 そこで、商品やサービスに対する消費者の声を積極的に利用してトレンドを作り出す新たなメディア戦略を取る企業が現れてきた。

 米国Coca-Cola社はマーケティング戦略として“Liquid & Linked”というスローガンを掲げている。“Liquid”(流動的)は、メディアを流れる情報の流動性が高く企業によるコントロールが難しいこと、“Linked”(つながっている)は一貫性のあるメッセージを各媒体を連携させて伝える必要があることを示唆している。同社はこの戦略を推進するために、ソーシャルメディアを流れる消費者の声を分析してトレンドの形成を促す技術、形成されたトレンドを各媒体を通じて統一したメッセージとして配信するための技術を導入した。


■シェアードメディアへの対応が重要に

 ソーシャルメディア運営のポイントは、シェアード(Shared)メディアへの対応である。シェアードメディアは、ペイド(Paid)、オウンド(Owned)、アーンド(Earned)という“トリプルメディア”にまたがって、企業と消費者がともに情報を流通させるための仕組みである(図2参照)。

 ペイドメディアは、新聞・テレビ・Webサイトの広告など企業が広告費を支払って情報を掲載してもらうメディアである。オウンドメディアは、自社が所有するWebサイトや販売チャネルなどのメディアである。この2つのメディアでは流通するメッセージを企業がコントロールできる。アーンドメディアは、FacebookやTwitterなどユーザーが自発的に情報を発信するメディアである。アーンドメディアではユーザーが自ら発信する情報の方が企業の情報より重要視される。

 シェアードメディア運営において企業が取り組むべきことは、単に自社が流したメッセージに対する消費者の反応を見るのではなく、消費者がどのコンテンツに対してどれだけの時間、どのようなアクションを起こしたかを分析し、消費者に活発な活動を促すことである。これを実現するためには、トリプルメディアで流通するコンテンツを一元管理し、各メディアでの消費者の行動を追跡するITの仕組みが必要となってくる。


■ソーシャルメディア運営のソリューション

 NRIは、シェアードメディアへの対応に必要な機能を組み込んだソリューション「NRIソーシャルメディア基盤」を提供している(図3参照)。このソリューションは主に以下の4つの機能を提供する。

(1)マルチメディア&シングルコンテンツ
 企業は今、Facebook上に自社の商品・サービスのファンページを設けたり、会員サービス(自社商品に対する消費者の思いを語る文章を掲載するWebサイトなど)を立ち上げたりするなど、さまざまなソーシャルメディア運営に取り組んでいる。しかし、各種のオウンドメディアやアーンドメディアはそれぞれ異なる基盤を使用しているため、各メディアに合わせたコンテンツを別々に用意しなければならず、メンテナンス性が低くメディア全体で統一感を出すことが難しい。

 このような個別最適の状態を改善するために、各メディア上で同一のコンテンツを動作させるための仕組みが「マルチメディア&シングルコンテンツ」である。具体的にCMS(コンテンツマネジメントシステム)でコンテンツを一元管理し、Facebookファンページや自社サイトに合わせたレイアウトでコンテンツを配信する。ユーザーは企業のWebサイトでもFacebookやYouTube(動画投稿サイト)でも、どのメディアでも同じ動画やコメントを閲覧・書き込みができ、気に入ったものが見つかれば「いいね!」ボタンや「シェア」ボタンで友達に紹介できる。

 キャンペーン時の特定のコンテンツの差し替えや、季節に合わせたWebサイト全体の色味の調整なども簡単である。今後はモバイル端末を利用したコミュニケーションが拡大することが考えられ、モバイル端末の種類に応じたコンテンツ管理も重要性を増していく。

(2)ID連携API
 ユーザーがどのメディアを通じても自分の投稿などを閲覧できるようにするためには、異なるメディア間でユーザーIDを連携させる仕組みが必要である。これを実現するのが
「ID連携API」である。

 例えば、ユーザーがFacebookのIDを使って他のWebサイトにログインし、コメントを投稿すると、そのコメントはFacebookのNews Feed(友達の行動を表示する場所)やTicker(友達の更新情報をリアルタイムに告知する場所)上にリンクURLとともに表示され仲間と共有されるようになる。

 「ID連携API」はログインやコメント、シェア機能に加えてライブチャット、ユーザーのランク表示、ゲームなどのソーシャルアプリ、決済などの機能も提供する。そのすべてがユーザーIDと連携されており、各メディア上でのユーザーの行動履歴がビッグデータとして取得・管理される。そのため企業はユーザーごとの行動や好みの分析、それに基づいたユーザー別のプロモーションなどを実施できる。

(3)メディア運営サービス
 ソーシャルメディア運営は前述のとおり、消費者にいかに主体的にコミュニティーに参加してもらうよう仕向けるかが重要なポイントである。これを実現するための補完機能が「メディア運営サービス」である。

 各コンテンツに対するユーザーの反応がどうだったかをモニタリングできるので、そのデータに基づいて人気のあるコンテンツを優先表示することなどが可能になる。また、どのユーザーが情報の拡散に最も寄与しているかを分析することもできるため、ユーザーのランキング表示をしたり、影響力の大きいユーザーだけに個別のキャンペーンを実施したりすることもできるようになる。「メディア運営サービス」中の「ゲームメカニズム」は、ユーザーのメディア内での行動履歴に基づいてポイントやクーポンなどのイ
ンセンティブを与える機能である。ユーザーに次のインセンティブ取得に必要なアクショ
ン数を提示することで、ユーザーにコミュニティー内での行動を促すことも期待できる。

(4)ビッグデータ分析
 「メディア運営サービス」を通じて得られるユーザーの行動履歴は、ユーザーの趣味や好み、商品・サービスに対する評価を反映したものである。これらをユーザーの具体的な行動につなげるための分析基盤が「ビッグデータ分析」である。ビッグデータ分析の結果は、自社のEC(電子商取引)サイトなどの販売チャネル上でユーザーにレコメンド(推薦)する商品の決定、次世代商品のターゲットの決定、競合商品との差別化戦略などに活用することができる。


■顧客主導のソーシャルメディア運営のために

 ここまで述べてきたように、ソーシャルメディアでは、分散するさまざまなメディア上でいかに統一されたメッセージを発信するかが重要である。「NRIソーシャルメディア基盤」は、各メディアへの迅速かつ柔軟な対応を可能にし、企業が本来取り組むべき顧客主導のソーシャルメディア運営を実現することに貢献できるものと考えている。


●執筆者紹介
柴谷雅美(しばたにまさみ)
野村総合研究所 基盤サービス事業本部 システム基盤統括部 主任テクニカルエンジニア
専門はオペレーションズリサーチ、機械学習を使ったウェブの集合知活用

※本記事は株式会社野村総合研究所より許可を得て、同社の発行する「ITソリューションフロンティア」(2012年4月号 Vol.29 No.4)収録の掲題論文を転載したものである。
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