【テクニカルレポート】デジタル放送標準化と実用化動向(前編)……パナソニック技報 | RBB TODAY
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【テクニカルレポート】デジタル放送標準化と実用化動向(前編)……パナソニック技報

ブロードバンド 回線・サービス
第1表:米・欧・日における地上波放送方式
  • 第1表:米・欧・日における地上波放送方式
  • 第1図:デジタル放送のプロトコルスタック
要旨
 放送のデジタル化は、米・欧・日のグローバル標準規格を基本としつつも、実際の運用は各国向けにローカライズされて実施されている。さらにIP(Internet Protocol)網を利用した配信サービスや移動体向けサービス、3DTVなど新しい技術を導入したサービスが始まりつつある。このような世界各国の放送標準化、実運用化の動向を把握し、受信機の商品化につなげる取り組みが重要である。

1. デジタル放送の標準化状況

 1994年の米国DirecTVを最初に、世界各地で始まったデジタル放送は、ここ10年間で急速に普及・多様化が進んでいる。現在のデジタル放送の方式は主に下記の3つに分類される。

1)欧州DVB(Digital Video Broadcasting)方式
2)米国ATSC(Advanced Television Systems Committee)方式
3)日本ISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)方式

 最初に規格化を進めたのは米国ATSCで、1995年に地上デジタル放送が規格化された。

 ほぼ同時期に欧州でも欧州デジタル放送規格化を担う標準化団体DVBが、衛星デジタル放送方式(DVB-S)、地上デジタル放送方式(DVB-T)の仕様を策定し、このDVB方式が欧州各国の放送方式の基本となったほか、オーストラリア、インド、ASEAN(Association of South East Asian Nations)の一部などで使用されている。

 日本では、通信衛星(CS: Communication Satellite)を使ったデジタル放送サービスとして、パーフェクTV !(1996年)、ディレクTV(1997年)がサービスを開始した。2000年以降に実用化されたBSデジタル放送や地上デジタル放送のベースとなるISDB方式は、総務省(旧郵政省)の省令や電気通信技術審議会の答申に基づき、社団法人電波産業会(ARIB: Association of Radio Industries and Businesses)にて整備された。

1.1. 各地域の放送方式概要

 第1表は、米・欧・日における地上波放送方式を比較したものである。

 映像・音声・データを多重化する方式は同じMPEG-2(Moving Picture Experts Group phase 2)が用いられている。代表的な映像符号化については、運用する映像の解像度の種類は異なるが同じMPEG-2 Videoをベースとしている。一方、伝送方式・変調方式はそれぞれで異なる技術が採用され、それぞれの放送方式の特徴となっている。米国では、シングルキャリア方式である8-VSB(8-level Vestigial Side Band)を採用している。それに対して、8-VSBは移動体受信が難しいなどの理由により、欧州や日本では、マルチパス耐性やSFN(Single Frequency Network) に有利なOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が採用された。

1.2. 日本の地上デジタル放送方式

 本節では、日本の地上デジタル放送方式の特徴的なものとして、伝送方式、SI(Service Information)、データ放送方式について説明する。第1図は、デジタル放送方式の基本プロトコルスタックである。

(1)伝送方式

 ISDB-T方式は、1放送事業者が使用する周波数帯域を13個のセグメント構造に分け、セグメント単位に変調方式が変更可能なことを特徴とする。実際の放送運用では、12個のセグメントを高画質映像の固定受信向けに(64QAM: Quadrature Amplitude Modulation 変調)割り当て、 残り1個のセグメントを移動受信向け(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying変調)に割り当て、「ワンセグ」サービスを実現している。

(2)番組情報(SI: Service Information)

 電子番組表(EPG: Electronic Program Guide)を構成するSI情報は、DVBで規定されている方式(DVB-SI)を基本として、独自の情報を加えている。

(3)データ放送

 データ放送方式BML(Broadcast Markup Language)はインターネットのホームページの記述言語であるHTML(HyperText Markup Language)をベースにしつつ、「映像とフレーム単位で同期してデータの表示内容を変える」「リモコンボタンを押すと番組予約をする」など放送ならではのサービスを実現するための機能を拡張したものである。


■執筆者(敬省略)

・下地達也
・青木貴
・川端洋平

※同記事はパナソニック株式会社の発行する「パナソニック技報」の転載記事である。
《RBB TODAY》
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