電子書籍の活性化を見込む──モリサワの戦略
まず、モリサワの森澤彰彦社長による挨拶があり、今回の説明会開催の趣旨が述べられた。
森澤氏によると、「最近、電子書籍をとりまく環境が活性化してきており、電子書籍ソリューションをJAGATで紹介したところ、予想以上に多くの反響を頂いたので、今回補足説明会を開催した」とのこと。海外ではKindleなどの電子書籍ソリューションも盛況だが、日本では、携帯、スマートフォンの市場も見込めるので期待しているというメッセージがあった。
続いて、開発部の小野氏より概要説明があった。電子書籍デバイスの紹介と市場説明として、アマゾンのKindleは伸びてきており、また、日本勢も復活の兆しが見られるとした。そして、携帯電話、特にスマートフォンは増えてくる傾向にあると分析しており、iPhoneの伸びが著しいことに着目。iPhoneは全世界で3000万台以上、国内でも200万台以上と推察されており、iPod touchを含めると全世界で5,000万台以上の端末が販売されていることは、電子書籍の端末としても魅力的な市場であると認識していると話した。(会場の参加者にiPhone/iPod touchの所有率をヒアリング、1/3ほどの参加者が挙手した。)
なお、iTunes StoreにはiPhone用アプリを販売するApp Storeがあり、カテゴリーには「電子書籍」ジャンルも既にある。印刷業界に関するものでは、コミック、写真集、雑誌関連、新聞関連、辞書関連などがあるが、小説はまだ登場していない。雑誌も新聞も「画像」での閲覧でしかない。辞書関連では大辞林が一番売れていると思われるが、単価2,500円(書籍は8,190円)と安価。アプリとしては高価だが、よく売れているらしい。
iPhoneアプリでビジネスするには、iPhone Developer Programの加入が必要だ。売り上げの手数料は、アプリの売価の30%がアップル分で、残り70%がサプライヤーに支払われる。販売は全世界が対象で、販売者が利用できる国を設定できる。
電子書籍市場の市場は右肩上がりで、2008年度売り上げは464億円前年度比31%増。内訳はコミック70%、写真集18%なので、“文字物”はまだ可能性はあるという。文字ベースのものは、コミックや写真集のように販売数が読めない、電子出版の作業工数大なので採算が合わない場合が多い。それを解決するのがモリサワのソリューションだ。InDesignやMC-B2のデータをオーサリングツールによってiPhoneアプリへ変換する事が可能で、主なコンテンツは小説を想定している。将来的にAndroid向けに出す可能性もある。
コンセプトは「簡単」。オーサリングツールにて簡単に変換が可能で、見やすさにこだわったという。文字を画像ではなく文字として表現する、組版エンジンを搭載。フォントの変更可能、文字サイズの変更可能、ルビのON/OFF、横組も可能だ。文字の検索、不明語句の検索、調査も可能。ビジネスモデルはまだ社内で調整中だが、安価または無料で制作会社へ提供したいという。iPhoneアプリの売り上げのうちの数%をツール利用料として徴収するようなモデルを想定している。
●実機デモ
小井戸氏によるWindows版のオーサリングツールに関する実機デモが行われた。
まず、プロジェクトを作成、これがiPhoneアプリの単位となる。InDesign(CS2以降)のデータをインポート、文字のデータと画像やキャプションが含まれる。インポートはドラッグ&ドロップで可能。取り込まれたテキストは、タグ付きのテキストで取り込まれる。取り込まれたデータは「iPhoneビュー」でプレビュー表示できる。ツールで組みやフォントを設定できる。異体字変換は色付きで表示。文字校正のために印刷も可能。通常、iPhoneアプリは、ヒラギノ角ゴしか使えないが、モリサワのオーサリングツールは、モリサワフォントを選んでインストールして使用できる。データが整ったらエクスポート。これをMacに移してiPhoneアプリに変換する。現時点でオーサリングツールはWin版のみ。
続いて、iPhoneアプリ変換Mac版の解説とデモが久保氏に交代して行われた。
オーサリングツールから出力されたデータをiPhoneアプリへ変換する。現時点では「SDK補助ツール」という名称になっている。これでアプリ化に必要な設定を行う。書き出されたデータをMacへコピーする。対象ファイルを指定し、iPhoneアプリの名称とアイコンになる画像を指定し、「実行」ボタンを押すと変換が始まる。
実際のアプリ化には Xcodeが必要。変換したデータをXcodeでコンパイルするとiPhoneシミュレータで表示可能。文字を選択してそれをGoogleで検索するなども可能。ソリューションの効果としては、DTPデータの二次利用、書籍と電子の同時出版、採算性の読めない書籍、自費出版、郷土史などへ応用が可能と見込まれる。
iPhoneシミュレータ上では実際の操作ができる。設定によっては、フォントを変更したり、レイアウトを縦組から横組に変更する事も可能。体験コーナーにある、iPhone/iPod touchの実機にて見る事ができた。
質問として、小説以外は?iPhone以外は?アプリ内コンテンツ課金は?今後の予定は?などいろいろ挙がったが、それらに関しては、「今後の開発に盛り込んでいきたい。今後の予定としてはフィールドテストに入っているので、来年の春ころまでにはリリースしたい。使用できるフォントに関しては、フォントの種類(搭載数)は、社内で調整中。アプリに埋め込むフォントは、数多くの書体を搭載してもユーザが混乱するし、容量の問題もあるので、1アプリにつき2書体くらいでいいのでは」としている。
最後に、東京営業部の日野氏より来場の御礼と今後の取り組みとして、「電子書籍分野に参入するのはモリサワとして初めてなので、期待、不安をもっているし、感じられているのではないかと思っているが、どうすればお役に立てるかということをぜひお伺いしたい」という挨拶があった。(iPod Style 戸津)
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