乗り換えOKか!? 高速モバイル「WILLCOM CORE XGP」の実力
上り(PC→ISP)と下り(ISP→PC)で時分割して同じ周波数を使う「TDD(時分割複信)方式」という技術を採用し、基地局間の電波干渉を抑制しつつ周波数の利用効率を高める「スマートアンテナ」や、同一セル内で同じ周波数を再利用できる「空間分割多元接続(SDMA)」などの応用技術を利用した、新しいブロードバンド・ワイヤレス・アクセス(BWA)だ。
さらにウィルコムがPHS事業で培ってきた「マイクロセル」ネットワークをベースに、XGP基地局を追加設置することで、“下り”“上り”ともに最大20Mbpsという高速な通信速度を実現したのが他サービスにはない特長となっている。
6月からは第2段階のエリア拡大が行われるとともに、法人向けに端末の貸し出しが行われた。今回ウィルコムから評価用端末を借りることができたので、実際に試用してみた。9月30日までの予定で、東京・山手線内におけるWILLCOM CORE XGPのエリア限定サービスが実施されているので本来ならさまざまな場所を移動して、厳密な計測を行うべきかもしれないが、まだまだエリアも限定されており、充分なデータは取れないと判断した。そこで、あくまで一般ユーザがたまたま手に入れたといったノリで、ざっくりと使ってみた。そして「WILLCOM CORE XGPに乗り換えるかどうか?」という、シンプルなテーマでその感想を述べたいと思う。
ちなみに提供エリアは東京都山手線内の一部地区。第1段階では、千代田区・中央区・新宿区・港区のほか、JR池袋・新宿・渋谷などの山手線各駅近辺が主要提供エリアとなっている。第2段階で、台東区・渋谷区に拡大されるとのことだ。
今回は、第1段階に含まれる秋葉原、第2段階に含まれる上野で利用してみた。
◆端末はNECインフロンティア製とネットインデックス製の2タイプ
現在提供されている端末は、「GX000N」(NECインフロンティア製)と「GX000IN」(ネットインデックス製)の2機種。いずれもPCカードタイプで、見た目や機能性には大きな違いはない。アンテナの形状やロゴでかろうじて見分けがつくぐらいだ。今回は「GX000IN」を使用した。製品そのものはシンプルなので取り扱いに問題はなかった。ただし試用の貸し出し品のためCD-ROMなどは同梱されておらずドライバソフトウェアなどは、ウィルコムサイトからダウンロードし手動で導入する形となっていた。また、TCP/IPの設定値(MTU、RWINなど)、接続先情報などを別途手作業で変更する必要があった。このへんは10月以降の本格サービスで提供される製品では改善されているものと思う。
こうして、端末およびソフトの導入が終われば準備は終了。あとはユーティリティを起動し「接続」ボタンを押すだけだ。しかしここで最初のトラブルが発生。カードがなかなか認識されないのだ。何度か抜き差しを繰り返したり、マシンの再起動を行うがうまくいかない。PC本体は「PC-LJ700EE」(NEC製)で、CPUがPentium M 753 1.2GHz、メモリが512MBと、やや旧スペックのWindowsマシンだ。
その後、「いったんカードを抜き、PCの電源をオフにし、電源を入れて、Windowsが起動してから、カードを差し直す」という手順でカードが認識するようになった。カードを差したままの再起動や、起動後の抜き差しではダメだったわけだが、これが端末の問題なのか、当方のPC環境の問題なのかは判然としなかった。この点について、念のためウィルコムに問い合わせてみた。ただ、このレベルのスペックであれば問題なく使用可能との回答だったため、その他ソフトや周辺機器との相性の問題だった可能性が高い。
一度認識してしまえば、あとは電源投入やカードの抜き差しタイミングには関係なく、特にとまどうこともない。有効になったカードは、モデムとして認識されるPHSと異なり、通常のネットワークとして認識される。
◆秋葉原の3個所は、いずれも快適ネットワーキング
マシンの設定には問題なさそうなので、次は対応エリアに移動して、実際の通信を行うことにした。筆者の自宅は、対応エリア外(山手線の外側)のため、接続しようとしても、すぐに切断されてしまう。ちなみに、本来なら「圏外」と表示されると思ったが、実際には、ただネットワークが切断されるだけ、という状態だった。
秋葉原に移動し、3個所で通信を試みた。「秋葉原UDXビルのフロア」(屋内)、「ヨドバシAkibaの玄関口」(屋外)、「万世橋近辺」(屋外)だ。とくに選択の理由はなく、「遮蔽物が少なく見通しがいいので、通信に不都合がなさそう」といった直感的な理由だ。天候はあいにくの曇天+小雨で、あまりいいとはいえないが、この程度の天候があまり影響するとも思えないので、そのまま使ってみた。時刻は19時前後だ。
まず「秋葉原UDXビル」のフロア。ノートPC+WILLCOM CORE XGPデータカードでの通信、ということで、普通に屋内で利用するような状態を想定して、建物内に持ち込んだ。注目の初計測結果は「下り5.72Mbps/上り3.54Mbps」となった。「最大20Mbps」の本領発揮とはならなかったが、ブラウジングは快適そのもの。外出先でのネットワーク利用だということを考えると、やはり次世代のデータ通信はワンランク上の使い心地だ。
ただ後から出てくる2個所と比較するとこの数値はやや低く、秋葉原ではUDXビル内が一番遅かった。屋内ということが不利だったのか、アンテナの位置関係かはわからないが、数十メートルほどの移動でも通信状態に影響があるわけだ。それでも、建物の中だからといって極端に通信速度が落ちることもなく、使用上の問題はない。体感速度ではほとんど変わりなかったことをつけ加えておこう。
続いて、ヨドバシAkibaの玄関口。ベンチとなっている部分に腰掛けて、モバイルスタイルで計測すると、「下り8.54Mbps/上り4.98Mbps」とかなりの好結果となった。空間の広さもあるが、やはり基地局が充実していそうな場所だったことが幸いしたのかもしれない。
そして、万世橋近辺。アキバ名所「肉の万世」を望みつつ、橋の欄干にPCを載せて通信を開始。ここもなかなかの好結果で「下り7.57Mbps/上り4.75Mbps」となった。
◆上野の2個所は、大きく明暗が分かれる結果に
続いて上野に移動し、ここでもWILLCOM CORE XGPを使ってみた。上野近辺は第2段階のエリア拡大の対象区域だが、駅周辺は第1段階から通信エリアとなっている。そこで、まずは「JR上野駅・広小路口前の高架下」で計測を行った。しかしなぜかここでは、ネットワークに安定して接続できなかった。一度だけ接続に成功しスピード計測のページにまで進んだのだが、ここでタイムアウトしてしまい、以降は何度試してみてもダメだった。高架下という特殊な位置だったせいもあるかもしれない。
そこで、「上野・仲町通り前の交差点」まで移動。ABABなどが立ち並ぶ、やや御徒町よりの場所だが、見晴らしはよい。携帯電話なら問題なく使えそうな空間だ。ここで接続を行うと、今度は問題なくOK。計測結果は「下り7.02Mbps/上り4.15Mbps」となった。
◆さて、WILLCOM CORE XGPに乗り換えるか?
こうしてみると、下り7Mbps/上り5Mbps前後といったところで、「最大20Mbps」というWILLCOM CORE XGPの潜在能力はまだまだ発揮できていなかった。しかし、5〜7Mbpsという通信速度でさえADSLに匹敵する速度であり、実用上はまったく問題がないと言ってよい。実際、筆者はイー・モバイルのHSDPA通信サービスである「EMモバイルブロードバンド」を現在利用しており、特に不満を感じたことはなかったのだが、こうしてWILLCOM CORE XGPの高速通信を目の当たりにしてしまうと、かなり魅力的に見える。ちなみに、同じ場所(秋葉原・万世橋上)でイー・モバイルによる通信速度も測定してみたが、こちらは「下り700kbps/上り122kbps」となり、体感速度以上に実測では大きく引き離されている。
現在はまだエリア限定でのサービスのため、首都圏、それも山手線の内側での利用でなければ、その恩恵は得られない。しかし、現在のPHS並みにエリアが対応してくれたなら、非常に魅力的なサービスとなるだろう。携帯電話がドコモ、KDDI、ソフトバンクの御三家となっているように、次世代通信においてはUQ WiMAX、イー・モバイルHSPA+、そしてWILLCOM CORE XGPが御三家となるのはほぼ間違いない。首都圏ならすべてのサービスが選択肢とはなるが、地方ではエリア展開が普及の鍵となるだろう。
そういうわけで「WILLCOM CORE XGPに乗り換えるかどうか?」の結論だが、やはり今日明日すぐにでも乗り換える、とは断言できなかった。ただ、首都圏在住で提供エリア内でモバイルワークをする可能性が少しでもあるのであれば、費用対効果という点ではまちがいなくオススメできる。ストレスフリーなモバイル環境という魅力を実感できたからだ。というわけで、WILLCOM CORE XGPについては、「この10月以降の本格サービス」に期待したい。
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