【富士通フォーラム(Vol.23)】ブレードサーバの仮想統合でエンタープライズクラウドに備えよ——武居正善氏
◆クラウドの今と展望
現在、新しいビジネスの潮流を創成するキーワードとして、クラウドコンピューティングが叫ばれ、業界を問わず製造、流通、金融、医療、行政にまで広がりを見せている。その理由として、これまでは、IT化にコンピュータやアプリケーションの導入が不可欠であったのに対し、クラウド時代ならこれらのITインフラを所有する必要がなくなることによるメリットがある。ハードウェアやソフトウェアの導入コスト、運用管理コストが不要になるという考えだ。また、オンデマンドで必要なときにリソースの増強や削減が可能なため、ピーク時にあわせた無駄な設備投資、管理も省けると、武居氏は説明する。
世界不況も追い風となり現在のクラウドブームになっているという。しかし、現在普及しているクラウドサービスは、アマゾン、グーグルといった企業が展開しているものがメジャーであり、どちらかというとエンドユーザー向けのものだ。このようなだれでも使えるクラウドを「パブリッククラウド」とよんでいる。大企業でもgmailやGoogle Appsを採用する事例が増えているが、基幹業務を含めたすべてを(パブリック)クラウド化するには至っていない。
これは、セキュリティやガバナンスなどの理由で敬遠されることが多いが、富士通としては、ビジネスの流れはクラウドに向かうことは間違いないとみている。金融機関や自動車部品メーカなど数十社による顧客動向の分析から、企業は確実にクラウドのメリット(余分なものは持たずに済ませたい)に興味をもち期待しているとの判断によるものだ。
リソースの流動性を高め、投資効率やROIを高める。ソリューションとしてクラウドは有効であるが、企業という性格を考えたとき、このクラウドはパブリックでなくてもよいはずだ。これが富士通のいう「プライベートクラウド」あるいは「エンタープライズクラウド」だ。武居氏は、使えるところはパブリッククラウドで済ませても、業務や規模によっては企業内レベルでクラウドを構築する、いわば混在スタイルが一般化するだろうという。
混在環境のエンタープライズクラウドでは、「完全にアウトソースする」「世界中のコンピュータとつながる」といったメリットはなくなるが、コストダウン、管理の自動化、動的な運用といったメリットは享受できる。そのために重要なのがSLAの視点で、業務内容や目的によってクラウドのレベルを使い分けることだという。
上記の顧客調査では、クラウドに対する期待は感じるものの、売上が1兆円を超えるような企業でも業務システムは分散していたり、業務ごとに独立していてシステムごとの連携が低かったりと手探り状態だという。クラウドのゴールに到達するためには、まずサーバなどリソースを可視化し集約することがポイントだ。リソースの状態を把握しなければ集約ができない。リソースを可視化すればそれが容易になり、さらに仮想化統合を実行する。各企業は現在この段階にあるという。
◆事例にみる仮想化統合成功のポイント
製造業で500台以上のサーバを削減するという事例では、仮想化統合により、実際に295台を20台までに減らすことができたという。これによって3年間で30%のTOC削減に成功した。ここで得た教訓は、サーバ統合には、仮想化技術を含めた集約度をいかに高めるか、ということだそうだ。これが1つめのポイントだ。
同じく製造業で、セキュリティレベルを上げたいという理由からサーバ集約を希望する企業では、SLAレベルによって4段階のモデル構成を作り、拠点に分散したサーバを可能なかぎり集約させた。セキュリティが集中管理できるようになったと同時に、管理コストも削減できたという。2つめのポイントは、仮想化統合による操作性、運用性の向上が図られないと、余分なコストなどによって失敗事例とされてしまうということだ。
3つめは、海外データセンターの仮想化統合によるCO2削減事例で、サーバを650台から40台に削減し、120万Kwの電力が削減できたことから、今後はグリーン化も効率的な運用という面で避けられない要素だという。これは海外の事例であるが、120万Kwを東京の電気料金に換算すると2〜3,000万円程の規模となる。これは無視できない金額だ。
◆大規模ブレードサーバPRIMERGY BX900
このような企業動向や導入事例から、冒頭のようなエンタープライズクラウドの戦略が導き出されたわけだが、これが富士通の新しいブレードサーバ製品にどのように生かされているのだろうか。武居氏によれば、仮想化統合のフェーズを経てエンタープライズクラウドの時代までまだ数年かかることを見据え、この市場に投入する製品のスペックはサーバ本体の性能に加え、ブレードのシャーシ内のミッドプレーンのスループット、高速スイッチ類など、PRIMERGY BX900は余裕をもったスペックになっているとのことだ。
10Uサイズに18スロットを実装できるシャーシ、サーバのプロセッサーはインテル Xeon 5500番台を採用し、メモリは最大72GB、LANポートも12ポート実装している。ミッドプレーンのスループットは最大で6.4Tbpsと業界最速クラスだ。10Gbpsのスイッチ群は、10ギガ伝送が今後2〜3年でさらに普及することを考えられている。InfiniBand対応は40Gbps伝送の実用化を先取りする形で導入される。
これらの性能を換算するとBX900のシャーシ1台にブレードサーバを18台フル搭載し、仮想化ソフトウェアVMwareを使用したときのパフォーマンスは、2004年モデルのPRIMERGY RX200のCPU性能の、230台分になるという。BX900なら、中期的なクラウド戦略に耐えうる性能とサーバの集約性能をもっているということだ。
成功要件の運用性については、ServerView Resource Coordinator VEが鍵となる。この運用支援ミドルウェアは、ブレードを含むサーバシステム全体の可視化、運用を統合的に行ってくれる。このバージョンのResource Coordinatorは、社内外のデータセンター運用者の声を反映し、さまざまな機能改善や追加が行われているそうだ。
統合管理というのは、物理サーバだけではなくネットワークの状態も含めて可視化してくれる。サーバの接続状況を視覚化してくれる「ネットワークマップ」機能では、外部スイッチ、シャーシ内スイッチ、VM内の仮想スイッチまでを階層的に接続状況を表示してくれるもので、これは現場では非常に有効な機能ではないかとのべた。
リソースの状況が細かく可視化できるということは、そのレベルで監視、管理、自動化ができるということにつながる。Resource Coordinatorは2つ目のポイントである運用性の向上に貢献するだろうとのことだ。なお、運用性やメンテナンス性について、物理レベルでは、ユニバーサルデザインのコンセプトのもとBX900以外のラック型サーバやストレージなども統一された外観、操作性をもってデザインされている。
グリーン化については興味深い見解が示された。サーバ本体の省電力化は当然として、富士通ではシミュレーションや調査の結果、データセンターの電力のうちおよそ40%を空調が消費しているという。そのためサーバの電力を削減するだけでは不十分という考え方だ。これまで、空調の効率をよくするためにデータセンターの通路を工夫したり高圧の風量を確保するというアプローチは存在していたが、実は単位時間あたりの風量が増えると空調の負担が大きくなるという。このため、BX900のラック、サーバのフロントパネル、電源、ファンなどはこのコンセプトで、開口部をなるべく広くとり低速のエアフローで冷やすようになっている。
また、Resource Coordinatorの可視化により、電源管理も細かく制御できるようになっている。ファンごとに回転数や動作を制御し、無駄な電力を消費しない。電源ファンだけでなく、サーバのスロットごとに電力や温度、CPU負荷をモニタリングし、稼働率の少ない仮想サーバを別の物理サーバに集約し、余ったサーバの電源を落とすといった「片寄せ」運転も自動化されている。
最後に武居氏は、富士通では、パブリッククラウドと混在するエンタープライズクラウドの時代を見据えた製品とサービスを、今後も展開していくとのべて講演を終えた。
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